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2023年6月の記事一覧

強さは

強くありたいと
願うわたしは
決して強くはなかった
いつも暗闇に
感じていたひかり
それは
弱さの中にあった
わたしの中にあったひかりは
願う強さとは違った
言葉にはできないような
強くも弱くもないそれが
強くも弱くもあるそれが
今、なつかしい
わたしはひとりで
つねに何かに焦がれ
つねに何かに怯え
つねに揺れ動くなかで
つねに同じひかりを感じていた
わたしが望むわたしに
なろうとした
けれどなれ

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音楽

音楽は耳で聴くのではない
自分の心で聴くのだ

音楽は奏でられるものではない
自分の心が奏でるのだ

うつくしい音楽とは
聴く人の心のうつくしさを
引き出す手伝いをするだけ

たったひとつの音楽に
聴く人ひとりひとり
幾千、幾万の旋律があり
ハーモニーがあり
響きがある

心が乾いていたら
音楽は届かない
ただ空気の振動があるだけ

世界を愛する術を知ったとき
音楽が生まれる

世界を愛する術を忘

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死は

あなたの死を
恐れている
死はつらいもの
苦しいもの
寂しいものだと

けれどふと
あのひとの死を
思い返して
優しかった
静かな深い雨のような
悲しみだったと

神さまの元へ
あの日旅立った
あのひとのように
わたしもあなたも
逝けるなら

死は
神聖なものだった
誰にでも訪れる
優しく悲しい
最後の儀式だった
あの夕日が沈むように
そしてまた朝がやってくるように

あなたが先立つなら
わたしは

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あなたとわたしの未来など
きっともうないんだと
ひそかにふるえていた

わたしはあなたのすべてを
知ってしまったんだと
そう予感していた

けれどきっとまだある
生まれつづける
たくさんの〈時〉が
わたしとあなたには
残されている

未来なんかじゃない
時間で計れっこない
生まれつづけるなにか

とつぜんそんな気がした
これからわたしは
わたしのまだ知らないあなたを
数えきれないほど
たくさんたく

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あのひとは

あのひとのいたみよりも
なんて声をかけたらいいかと
考えてしまう
声をかけたらかけたで
ちがっていたかもしれないと
気にしてしまう
自分の弱さ
ああ
わたしは
寝ても覚めても
自分のことばかり
それでもあのひとは
笑っている
いたみをひとりでかかえ
誰に腹を立てるでもなく
誰に愚痴を言うでもなく
ああ
あのひとは
寝ても覚めても
誰かのことばかり
それでもあのひとは
笑っている
ごめんなさいは

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こども

せかいじゅうのひとたちが
こどものままで
としをとったらいいのになぁ
そしたら
せかいは
きらきらひかって
うれしいところ
やさしいひかりがさすところ
うちゅうのなかで
ちきゅうのかがやきが
いっそう

かなしいところに
さびしいところに
あたたかさがいきわたって
しあわせがみちあふれるところ

どうしておとなになるの
どうして
どうして

2023.06.14

よるは

よるがふくらんできた
やさしさがふくらんできた
ああそうか
ひるがひるでなくなって
しごとがきゅうきゅうに
しきつめられて
おしだされた
わたしを
よるは
まっている
おかえりって
ああそうだ

よるはやさしかった
いつからかこわがってしまった
あさおきるために
ひるねむらないために
あさおきられなくて
ひるにねてもよかったあのとき
よるは
よるは
やさしかった

2023.06.14

いのちとたましい

わたしは
ここにいるのだった
わたしの明と暗
陰と陽
まわる
めぐる
明は他人に分け与え
暗は自分であつかうもの
こことはどこか
わたしのそとをめぐるわたしと
わたしのなかをめぐるわたし
両方あって
わたしという
不思議ないきもの

みんな
そこにいるのだった
それぞれの明と暗
陰と陽
みんなに同じようにあるのに
みんなそれぞれに違う
個々に意思を持ち
個々にめぐる
いのちというもの

ひとりでい

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めざめ

これははじまり
終わらない夢の
わたしはわたしで
それさえままならない
そんな暮らしはいやだから
わたしがわたしでいることが
あなたをわたしの世界に
見つけることだから
あなたを見つけることが
わたしが生きるすべてだから
あなたの光を
もう、見失わない
美しい世界のままで
まだ、わたしは生きる
わたしのままで
生きる強さを
あなたははじめから
教えてくれていた
わたしはわたしを
殺そうとしたけれど

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花言葉

あなたしか
しらない
わたしのままで
あなたが
教えてくれる
世界のままで
生きていたかった
わたしが見つけて
わたしがすすむ
この道は
すこし
雨に濡れたように
寒い

人の
本当の姿を
見た
と思った
あなたが見せてくれた世界が
あまりに美しくて
幻だと
思った

わたしはひとりで
生きていく
そう決めたとき
ひとりではなかった
ひとりという
幻を見ただけだった

ほんとうに哀しいのは
忘れて

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無題2

ひまわりが
太陽に向かって咲くように
愛情に開くこころ
忘れたくなかったのは
失いたくなかったのは
大人になりたくなかったのは
あなたと永遠に生きたいからだった
けれど忘れてしまった
失ってしまった
大人になってしまった
いつか死ぬということを
許してしまった
目の前にいるのにあなたを
ときどき思い出す
あなたが変わったんじゃない
わたしが歳をとったの
あなたをいつでも思うこと
それはわたしを忘れ

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自覚

反抗心は煌めく
猜疑心は傷つく
愚直な夢は
大衆的な嘘に騙されはしない
政治的な嘘に惑わされもしない
頷いたらそれまで
つまらない世界に従属しない
自分を見失わない
そう誓ったはず
愚かでいることを
諦めていないか
書くとは
つかめないものを
つかもうとすること
とどまらないものを
とどめようとすること
雨を
日差しを
音を
せかいを
わたしを
決して
つかまえることではない
とどめることではない

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幸せは

幸せは小さい
自分の心で
見つけた幸せだから
幸せすぎると
何が幸せか
わかりにくくなるから
哀しみは少しあるほうがいい
哀しみに寄り添って
なぐさめながら
一歩ずつ歩くこと
それが生きる力になるから
哀しみから生まれるなにかが
わたしにとっての
土の感触
光の揺らぎ。
哀しみは
あなたとつながっている
雲の変化
水の音色。
哀しみは
記憶とつながっている
木々の青
星の静寂。
哀しみは
明日とつ

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話せない

いつまで経っても
わたしは
哀しいまま
優しい人たちのおかげで
明るくなって
おしゃべりになっても
我慢する
口にしない
そんなことは
当たり前で
話したいとも思わない
自分が
誤解されていることに
気づいていても
吐き出さない
気持ちや
小さな
我慢にすら
気づかないで
少しずつ
少しずつ
せかいから
遠ざかる
わたしの
小さなせかいは
みんなの
せかいから
離れ
流れて
あの人の
せかいにも

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