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オンラインでは「叱れない」

「お前!しっかりせいや!あと1ヵ月だろ!死ぬ気でやれ!」

今年の2月、僕の勤めている塾で、塾長の激がとんだ。入試1ヵ月前にして、本気で勉強できない、ある生徒に対してだ。僕の塾にとってはいつものことだった。


初めて、今勤めている塾に出勤した時、塾長は「怖い先生」に見えた。それは間違いではなく、ことあるごとに生徒に怒号が浴びせられた。他の先生は皆、穏やかな先生方だった。新人の僕にも丁寧に仕事を教えてくださり、もちろん授業も抜群に上手かった。そんな中、僕は塾長一人に怖い先生とレッテルを張ってしまった。


今思うと、なんと愚かなことだっただろうか。まだまだ僕がお子ちゃまだった。

四月に講師としてその塾に入り、夏休み頃がっただろうか。特にきっかけはなかったが、僕の塾長に対する見方が180度変わっていった。毎日、毎日暑い中、外にでて生徒を出迎える。どんなに疲れていても手を抜かない全力授業。生徒からも「あの先生の授業はおもしろくて分かりやすい」という声がいくつも聞こえる。そして、保護者からの信頼も厚い。毎日、何件もの悩みの電話や、来校されての相談に耳を傾ける。


そして何よりあの怒鳴り声。僕も教える立場になって初めて気づかされた。生徒に対して120%本気でないとあそこまで真剣に叱れはしない。もちろん、指導の仕方は人それぞれ。それでも、生徒のことをまさに我が子のように思い、向き合わない限り、わざわざ声を上げて怒るようなことは出来ないだろう。


きっと、いや間違いなく生徒もそれに気づいている。塾で一番怖い先生は塾で一番人気の先生だ。生徒たちも、塾長が本気ということに心の底で気づいているのだ。そしてそれは、保護者にももちろん伝わり、長い間の塾としての信頼につながっている。


しかし、ここにきて大きな問題が生じている。そう新型コロナウイルスだ。この影響で、教育業界の多くは映像授業への切り替えを余儀なくされている。もちろん僕の塾も例外ではない。前々から映像授業を一部取り入れていたとはいえ、急ピッチでの準備が行われた。


映像授業の良いところの一つとして、日本全国どこにいても、TOPクラスの先生の授業が見られるということだ。普段なら、東京の一流講師の授業は東京の人しか見ることができないが、オンラインならば北海道から沖縄まで全ての生徒が、東京の一流講師の授業を受けることができる。(もちろん例え話。東京=一流講師なんて思っていません(笑))だから、授業の分かりやすさや、おもしろさについては、対面で行う授業に限りなく近い、またはそれを超える質を提供できるかもしれない。


だがしかし、実際に生徒を前にして、真剣に向き合って「こら!」と叫ぶ、あの一場面はオンラインでは見られない。やはり、画面越しと目の前にいるのでは、気持ちの入り方に、どうしてもさが出てくる。


今、時代はオンライン。スタディサプリの関先生や、タダヨビ(YouTube)の森田先生を始めとして、日本の本当の超一流の先生の授業がスマホ一つで見れる。これは素晴らしいことだ。


我々、講師は、生徒と真剣に向き合い、心の底から指導するということを忘れてはいけない。授業の質の向上を通して、講師が人として成長し、自らの行動で態度で、生徒に伝えられることを大事にしたい。


塾長の愛の溢れる怒鳴り声が、教室中に響き渡る日がはやく戻ってくることを願うばかりである。






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