井登友一(YuichiInobori)
記事一覧
「デザイン思考」って、何のことを言うてはりますのん?
この記事、すごく良記事だと思いました。皮肉です。 https://www.technologyreview.com/2023/02/09/1067821/design-thinking-retrospective-what-went-wrong/ なぜかとい…
[UX小話]サイゼリヤの新オーダーシステムの話
あたしは自他ともに認めるサイゼリヤエンスージアストなんですが、昨夕、出先でWiFiが使いたくなって近くにあったサイゼリヤに立ち寄った際、なんとオーダーシステムが顧客自身のスマホを使ったセルフオーダーシステムに変わっていました。
(店員さんにお聞きしたところ、現時点では全国で数店舗だけの試験導入段階とのこと)
あたしが体験したオーダー手順は以下のとおりです。
1.席に設置してある電子棚札(※)に
創造性は組織の至る所に存在する
ドイツの社会学者であり文化理論家のAndreas Reckwitzというひとは、著書 ”The Invention of Creativity”で
だと言っています。
ここで言うエステティクスとは感性や感覚のことを指していて、必ずしも表面的・視覚的な美しさを意味しません。エステティクス概念の源流にはカントなどの西洋哲学があるのですが、かなりざっくり説明すると、既存の合理性や意味体制を疑って一旦
「デザインにおける倫理」について考える
いわゆる「デザインの倫理」についてのトンキンワイズ先生の論考というかエッセイ。
デザインの倫理ついては以前から行動経済学的なものを悪用?したUXデザインのダークパターンに関する議論などが盛り上がりを見せているけれども、このエッセイはさらに数歩踏み込んでいて、とても興味深いです。
UXデザインのダークパターンについては、デザインを悪用してユーザーや関与者に不利益を与えることだけでなく、不利益を与
DtRとRtDの差異私感
DtR(Design thorough Research)と、RtD(Research through Design)は混同されがちだけど、
前者は
リサーチ活動によって「何がどうあるべきか」という実践目的そのものを見出すこと。
後者は
人工物との相互行為を通して疑問を生成し、実践に先立ち「なにを知るべきか」を見出すこと。
つまり、前者と後者はともに実践を重要視していつつも、起点とする実
闘争としての多様性 (Diversity as Struggle)
自身も時折愛用しているスープストックトーキョーを取り巻く一連の炎上騒動について、同社が騒動から少し時間を置いて表明した下記の声明がニュースメディアやSNSを中心に大変ポジティブな反響を得ています。
あたしも世間の評価に異論はないし、このよう経営姿勢は大好きです。
他方で、この企業の本声明の本意は、自分たちの顧客としてふさわしい人たちは、どのようなエステティクス(美学=感性論)をもったひとだ、とい
「N=1発想」について考える
先日、敬愛する木村石鹸工業株式会社の木村さんのツイートに(勝手に)とても共感というか、インスパイアされた点を感じたので脊髄反射的に反応して、考えが未だまとまらないうちに下記のようなツイートをしてしまいました。
木村さんのツイートは、作家の高橋源一郎さんが『さようなら、ギャングたち』という作品を書かれた際に、同じく作家の吉本隆明さんたったひとりに向けて書いたというもので、そのことにシビレたわけなん
「デザイン思考」って、何のことを言うてはりますのん?
この記事、すごく良記事だと思いました。皮肉です。
https://www.technologyreview.com/2023/02/09/1067821/design-thinking-retrospective-what-went-wrong/
なぜかというと、「デザイン思考(design thinking)」が、いかにIDEOとd.schoolが色々な事情を加味して手法論化した「創造的問題
デザイン思考再考−「共感」から「コミットメント」へ−
連休の間、時間ができたばかりに普段は考えないような余計なことばかり考えてしまいます。
個人的なこだわりではありますが、デザイン思考(この論考では限定的にIDEO−d.school的なデザイン思考を指します)のプロセスの始まりにある「共感(Empathize)」というステップに(文字通り)共感はしつつも、どこかでずっと違和感を感じていました。
デザイン思考の根底にある概念が「人間中心デザイン(H
バルミューダのスマートフォンについて思うこと
話題になっているバルミューダ社製スマートフォンについて、あくまで個人的な意見として書きます。サービスデザインの観点から考察すると既存のスマートフォン市場において売れる=幅広く顧客に受容されていく、ことは容易ではないと思います。(無理だ、とは言っていません)
これまでバルミューダ社が市場において好評を博したトースターや電子レンジのような製品群と、今回のスマートフォンの違いをすごく極端にいうと、(あ
イノベーションにおける正当性のデザインと、サービスデザインにおけるアダプション・デザイン
また勝手なことを書きます。
ぼくたちのデザインチーム「INFOBAHN DESIGN LAB.(IDL)」では、日頃いろいろな企業・機関からご依頼を頂いて製品やサービス、そして事業そのもののデザインを支援することを生業にしています。
特にここ5年ほどは貴重なご縁に恵まれ、企業内において新規事業をつくり出す取り組み(いわゆる「企業内企業家育成プログラム」や「コーポレート・アクセラレーション・プロ
人間中心の意味を見つめ直した一年あまり
※本文章は、2021年10月末日にHCD-Net会員向けニュースレターに寄稿したHCDコラムの転載です。
前回、コラム執筆の機会をいただいてからあっという間に1年あまりが経っていました。その間、海外のデザインカンファレンスやコミュニティイベントにいくつか参加した中で感じたことは、以前にも増して「人間性への回帰」や「従前の価値観からの転換」、そして「多様な文化理解と倫理観」といったテーマが色濃く扱
ペルソナを「意味のイノベーション」の主人公だと考えるという話
デザイン実務家としてペルソナに関わって早や20年あまりが経ちますが、いまやデザインに限らず、製品開発やマーケティング企画などの際にペルソナを活用することは特別なことではなく、デザインの専門領域のみならずビジネス全般でふつうのことになりました。
そのくらいペルソナというツールでありコンセプトは浸透したので、以前のようにペルソナだけを採り上げて教育をしたり、有用性をことさら提言するなんて機会もめっきり
「人間中心」が示す意味を問い直す
※本文章は、2020年6月末日にHCD-Net会員向けニュースレターに寄稿したHCDコラムの転載です。
前回コラム寄稿の機会を頂いてから約1年ぶりの理事コラムへの寄稿となります。1年前には何を書いたんだろう、と見返してみると「HCDの”H”は、今後『人間性(Humanity)』がどうあるべきかを見つめるべきではないか」というような実にまとまらないことをポエムのように書き散らかしていて、我ながら恥