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イギリス映画とカルチャー

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記事一覧

ボンド・ストリートのナンパ系化粧品詐欺のお話

ボンド・ストリートのナンパ系化粧品詐欺のお話

ボンド・ストリートというのは、日本でいえば銀座の中央通りみたいなところ。ロンドンのもっともハイソなエリアのひとつの一角にあるサザビーズのギャラリーで、売りモノの名画を見すぎたわたしは、頭がほわーっとしていた。

ふわふわ歩いていると、イケメンの、イタリア&モロッコ系ユダヤ人(イスラエル人)に、呼びとめられた。断っておくが、わたしの趣味ではまったくない。

今考えれば、無視して通りすぎるべきだったの

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サザビーズ(Sotherby's):どこの美術館でも見れない名画を、タダで見る方法

サザビーズ(Sotherby's):どこの美術館でも見れない名画を、タダで見る方法

むかし、イギリスに六年半住んでいたのだが、その間に、じっさいに人生が変わるような経験をした、とおもう。そのすくなくともひとつは、芸術一般に対する経験値と感性が、ぐぐっと上がったことだった。

なにしろイギリスからヨーロッパ諸国へは、日本でいえば国内旅行の感覚でいける。ロンドンからパリへ行くのにかかる時間は、東京から新大阪まで行くのにかかる時間と、まったく同じである。

だからパリへは、しょっちゅう

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英国王のスピーチ:男の相棒映画(Buddy Movie)と、ステキな奥さんの存在について

英国王のスピーチ:男の相棒映画(Buddy Movie)と、ステキな奥さんの存在について

『グリーンブック』は、黒人と白人のバディ・ムーヴィーである。バディbuddyというのは、相棒ということ。男女のカップルの恋愛を描くかわりに、男同士の、恋愛のように濃い友情と、相棒的関係を描く映画のことである。

バディ・ムーヴィーはひとつのジャンルといってもいいくらい、いろいろある。日本的にいうと、漫才コンビは凹凸の相棒で構成されている方が成功することが多く、かれらが映画のキャラになったと思っても

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キューブリック展@デザイン・ミュージアム 詳細レポその2

キューブリック展@デザイン・ミュージアム 詳細レポその2

キューブリックは、映画のためのストーリーをどこで見つけてくるのか?と聞かれて、「たいていの話を見つけるようにさ」と答えている。それはどういうことかとさらに聞かれると、「単なる運だよ(Sheer chance.)」。創造の友はセレンディピティというわけ。

たとえば『時計じかけのオレンジ』は、ジョン・バージェスの小説が原作だが、これはキューブリックの奥さんがバージェスファンだったので、いやいや読まさ

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キューブリック展@デザイン・ミュージアム 詳細レポその1

キューブリック展@デザイン・ミュージアム 詳細レポその1

スタンリー・キューブリックが映画を作る際に使ったノートや、衣装や、カチンコや、大道具などが、ついにロンドンにやってきた。

キューブリックはニューヨーク生まれだが、ロンドン北部の郊外のセント・アルバンスSt. Albansという所に居をかまえており、撮影はロンドンの街中や、ロンドンのパインウッド・スタジオPinewood Studioで行なっていた。なので本国凱旋、という所である。

ミュージアム

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「お休み3週間おねがいしまーす」「OK!」

「お休み3週間おねがいしまーす」「OK!」

パリでのびきった髪をととのえるため、ロンドンのコヴェントガーデンにある美容院へ。日本人の美容師さんとお喋りをしまくりで、3時間があっという間にすぎる。

予約は5時から。わたしの施術中、スタッフさんがどんどん帰って行く。

美容師さんに、「お掃除とかないんですか?」と聞いたら、なんと各自掃除担当場所が決まっているという。

自分のお客さんが終わって、担当箇所を掃除したら、どんどん帰っていい。合わせ

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Irene's Ghost:三歳のときいなくなった、謎の母親をさがす旅

Irene's Ghost:三歳のときいなくなった、謎の母親をさがす旅

愛する妻と、かわいい娘とともに、しあわせな家庭生活を送っていた、イエイン。今や自分が親となったイエインは、娘の成長を観察しながら、自分の子供時代のことを思い出していた。

イエインの母親であるアイリーンは、かれが三歳のときに亡くなった。父親は、アイリーンがどういうひとだったのか、ほとんどまったく教えてくれなかった。どうやって死んだのかも、よくわからなかった。

三歳の子供は、親に対する大きな愛情を

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A Northern Soul: どん底の子どもたちを、アートとカルチャーが救う

A Northern Soul: どん底の子どもたちを、アートとカルチャーが救う

ブレグジット(Brexit)は、なぜ可決されたのか。映画的文脈でとても単純にいうと、それは八方塞がりの生活を強いられている労働者階級の人びとの、革命をもとめる声の集結である。

自分たちの苦しい生活をなんとかしてくれ。古き良きイギリスを取り戻してくれ。ヨーロッパ連合に多大な金を払っているだって?冗談じゃない!そんな金があるのなら、俺たちに使ってくれ。

ケン・ローチ監督の『わたし、ダニエル・ブレイ

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しつこい湿疹を治す方法と、ロンドン医療センターの坂田先生の話 その1

しつこい湿疹を治す方法と、ロンドン医療センターの坂田先生の話 その1

わたしは敏感肌で、湿疹が出やすい。母親も妹もそうで、実家にもつねに皮膚科の処方薬(ステロイド)が置いてある。なので遺伝的なものらしい。

東京の実家の母親のかかりつけの皮膚科の先生は、シャンプーや石けんを、すべて変えさせる。化粧品類にも、かなりうるさい。つまり外的刺激を、徹底的に排除しようとするのだ。最後にぽろっと、「湿疹は、心の涙ともいうのよ」、とも言っていたが。

きちんと対応を考えてくれるよ

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ブレグジット抗議でユーロスターが大混乱:実録!

ブレグジット抗議でユーロスターが大混乱:実録!

夜8時半のユーロスターで、パリからロンドンに戻る予定にしていた。フォンダシオン・ルイヴィトンでコートールド展を見たあと、7時くらいに、北駅に着いた。

パスポートチェック、荷物チェックがあるため、30分から45分くらい前に来い、とチケットには書いてある。わたしははやめにチェックインして、中で1時間くらい、メールを書いたり何かするのが、いつものことだった。

今日もはやく入って、中で今日買ったコート

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ヴィザ・センターで聞いたブレグジットに対する意外な反応の話

ヴィザ・センターで聞いたブレグジットに対する意外な反応の話

昨日はフランスのヴィザを取るため、ヴィザ・センターへ。ちょっとわからないことがあって、前にならんでいたひとに話しかけたら、彼女は日本人であった。ご主人がアメリカの銀行に勤めていて、ブレグジットで本部がパリに移るので、自分もフランスのヴィザを申請しなければいけない、という。今後の状況が不透明なので、とりあえずロンドン勤務人員の半分ほどが、パリに移転するそうだ。

彼女もご主人も、ブレグジットには、大

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ハウスパーティーと、ネットで脳が退化することについて

ハウスパーティーと、ネットで脳が退化することについて

わたしが今住んでいる家は、converted flatという。もともとは一家庭が住んでいた家を、フラット(アパート)に改造したもの。下の友人夫妻はもう25年ほどここに住んでいて、年に1度か2度家の住人たち(全員ではないが)を集めて、ディナーパーティーをする。

リーナのラム・ミートボール。リーナはユダヤ系ロシア人で、料理は東欧とアジアの中間的なのが好きらしい。彼女はほかにも、チキンのオーブン焼きと

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ロンドン交響楽団のHalf Six Fixと、ショスタコヴィッチの交響曲1番@バービカン・センター

ロンドン交響楽団のHalf Six Fixと、ショスタコヴィッチの交響曲1番@バービカン・センター

チケットがあまっているので行きませんか、というお誘いをいただき、バービカン・センターへ。Half Six Fixという、ロンドン交響楽団のイベントである。

ハーフシックスは、6時半。仕事の帰りに気軽に寄って、1時間ロンドン響の演奏を楽しみ、終わったら7時半なので、それからごはんも食べられる、というわけ。ホール内に飲み物も持ちこんでいい。不動産屋に、5時のアパートの内覧のあとではおそすぎるから、手

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滞納家賃が魔法のように消えてなくなった話

滞納家賃が魔法のように消えてなくなった話

ロンドンから電車で2時間くらいのところにある、ノーリッジというところに住んでいたときのお話。地元のイギリス人のかれは、長年大きな庭つきの、3LDKの広い家に住んでいた。リビングは20畳くらいあったのではないかと思う。しかし、20年前の話だし、ノーリッジだし、市の中心からはすこし離れていたので、そんなに高い家賃ではなかったはずだ。かれはそこを、友人とシェアしていた。

貧乏な学生のかれは、それでも家

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