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ヴィザ・センターで聞いたブレグジットに対する意外な反応の話

昨日はフランスのヴィザを取るため、ヴィザ・センターへ。ちょっとわからないことがあって、前にならんでいたひとに話しかけたら、彼女は日本人であった。ご主人がアメリカの銀行に勤めていて、ブレグジットで本部がパリに移るので、自分もフランスのヴィザを申請しなければいけない、という。今後の状況が不透明なので、とりあえずロンドン勤務人員の半分ほどが、パリに移転するそうだ。

彼女もご主人も、ブレグジットには、大迷惑しているらしい。ご主人はフランス人なのだが、ロンドンの方が人もていねいで環境も近代的できれいなので、移りたくない。彼女はフランス語も、まったく話せない。

かれらはブレグジットに反対である。しかし彼女が、意外とまわりの人々では、賛成している人も多いんですよ、というので、びっくりした。今までロンドンで、イギリス人、ヨーロッパ人、日本人、アジア人、いろいろな人と話して、ブレグジット賛成というのは、ほぼ聞いたことがない。

誰に聞いてもみんな反対って言いますよね、という話ばかりだった。それで、ここはロンドンだからね、反対意見は北部とか、都市部から離れたところに行かないと聞かないでしょう、という話に落ちるのである。

ところが、彼女がいうそのまわりの人々というのは、ロンドンのイギリス人である。銀行に勤めていても、自分たちは運よくロンドンに残ることができていて、イギリスはイギリスでやっていくからいいんだ、という考えらしい。

銀行の本社などがぞくぞくヨーロッパへ移転したら、金融の大中心都市であるロンドンはどうなってしまうのか、と外国人のわたしが心配しているのに、かれらはまあなんとかなるでしょ、と思っているという。それより、イギリスのイギリスらしさを尊重したい、という心情が、つよいらしい。会社も人もぞろぞろ出て行くというのに、大丈夫なのだろうか。

イギリスはヨーロッパからかなりの食料を輸入しているので、食料が足りなくなる、ないし関税がかかって高くなる、と心配している主婦もいる。

3月末に予定されていたブレグジットは、イギリス議会の決議では、6月末に延期になった。しかし今後どうなるのかはまだ、EUからの返答待ちで、はっきりしない。

そうやってイギリスから出る人が増えて混乱している時期に、わたしもフランスのアーカイブでリサーチをするため、ヴィザが認可されしだい、フランスに移動することになる。今日はその準備を少しすすめるため、不動産屋に連絡を取ったりして、いろいろと心がゆれた。不動産屋も、いまはイギリスから出る人ばかりで、大変なときなのに。

自分のやりたいことをやろうとするためには、いろいろ犠牲をはらったり、決断をくだしていかなければならない。離脱派のイギリス人も、ヨーロッパ連合にふりまわされるより、縮小してもイギリスはイギリスらしくいきたい、という考えらしい。

ロンドンの金融界にすら、そういう考えを持つ人が、じつは少なくないとは。わたしはヨーロッパの一員であるイギリスという考えの方に賛成だが、イギリスの国民性としては、そういうこともあるのか、と驚きつつも納得した。

#ブレグジット #Brexit #EU #田中ちはる

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