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ぼくゼロ監督と母の往復書簡

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『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 〜空と木の実の9年間〜』監督の常井美幸です。これから、主人公のお母様の小林美由起さんと、9年間のできごとを振り返っていくエッセーを始めます。同じで…
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あなたは本当に変わらなくちゃダメなの?

あなたは本当に変わらなくちゃダメなの?

監督「とこちょ。」と主人公の母「くみちょ。」が9年間の撮影を振り返って、お互いの視点から当時のことを語る監督と母の往復書簡。
とこちょ。が、現在、ご多忙中なので、3週続けてくみちょ。が担当します。
脱線した内容が続きますが、お付き合いくださいませ。

映画制作からはちょっと外れますが・・・
私、「常々思っているんですが・・・・・・」
(このセリフ知ってる?あの微妙な終わり方!)

常々、思っている

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ぼくゼロの母は活動家じゃないんですよ

ぼくゼロの母は活動家じゃないんですよ

監督と母の往復書簡。
ぼくゼロの監督「とこちょ。」と主人公の母「くみちょ。」が9年間の撮影を振り返って、お互いの視点から当時のことを語ります。

先週に引き続き、今回もくみちょ。回でお届けします。
ちなみに「くみちょ。」の「。」はゼロです(笑)

誤解されている人も多いので、今日は活動家ではありませんよのお話し。
空雅が顔出し、名前出しで取材に応じ、テレビ、雑誌、新聞に取り上げられる時、母として私

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往復書簡)監督から母へ聞いてみたいこと

これまで6回にわたって、ぼくゼロ母「くみちょ。」の生い立ちについて書いていただきました。私(監督、とこちょ。)は、一気に読めなくて、ときどき深呼吸しながら文字を追いました。あまりに私の生きてきた道と異なるので、想像力や理解の範疇を超えているところもたくさんありました。
そこで今回は趣向を変えて、私からいくつかくみちょ。に質問をしたいと思います。きっとみなさまにとっても、くみちょ。の生き様と、それが

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監督から母へ。美由起と美由紀とみゆきと美幸その2

映画「ぼくゼロ」を観てくださった方からよく、「一番大変だったことは何ですか?」という質問をいただきます。その答えには4人のミユキが大きく関わっています。

2012年、小林空雅さんとその母、美由起さんを撮影中に、ふと芽生えた映画化への夢。でもそれは「自分の無能さとの対峙」の始まりでもありました。ひとりじゃ何もできないと思っていました。私には映画を監督するだけの能力があるとは全く思えなかったからです

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監督から母へ。美由起と美由紀とみゆきと美幸。

前回、くみちょ。が、「生きてきた道のりが私の世界とは全く異なることを知った」と書いてくれましたが、こんなに異なる生い立ちをもつ2人の「ミユキ」が出会って、いまは同じ目的のもとに共に向かっていること、本当に不思議です。

美由起と美由紀とみゆきと美幸。『ぼくゼロ』はここから始まりました。今日は「ミユキ」のお話をさせてください。

美幸こと私が性別のことに疑問をもったのが2010年。当時、性別に違和感

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イギリスに導かれた人生 My Dear UK

イギリスに導かれた人生 My Dear UK

前回、辛かった中学校時代を支えてくれたのは、イギリスの音楽だったことを書きました。私が高校に入った80年代初頭のミュージックシーンは「第2次ブリティッシュ・インベイジョン」と呼ばれていて、イギリス勢がアメリカのヒットチャートの上位を独占していた時代。私はイギリスのビジュアル系ポップバンドの音楽を夢中で聴きまくっていました。特にミュージックビデオが大好きで、深夜に放送されていた洋楽ヒットチャートの番

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監督から母へ その9 「自分をマイノリティと思って生きること」

前回と前々回、くみちょ。がご自身の「生い立ち」について書いてくださいました。数奇とも壮絶とも表現できるかもしれないその生き様を、私は一気に読むことができなくて、ときどき文章から目を離して、自分の感情をリセットしながら読み進めました。

くみちょ。がなぜ性別違和や発達障害のあるお子さんを、すんなりと受け入れ、葛藤なく笑って生きてこれたのか、その秘訣が少しずつ明らかになってきたように思います。そしてこ

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母から監督へ その8「くみちょ。の生い立ち」

くみちょ。(ぼくゼロ主人公の母)は、なぜ子供のカミングアウトを受け入れられたのか?
くみちょ。は複雑な環境で育ったことを、前回お話ししました。
具体的な生い立ちを少しずつ、お話しいたします。

笑っていたかと思うと、突然、鬼瓦みたいに険しい顔つきになり怒鳴りつける父。
私はいつも、父の顔色を見ていました。

空腹で泣いている私を放置していたネグレクトの実母。
やたら厳しく当たる2番目の継母。
オー

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母から監督へ その8「くみちょ。って何者?」

前回のとこちょ。(監督)の記事の中に、『初対面の時から「このお母さん只者ではないな」と思っていました』という文章がありましたが、確かに少し変かも。

「カミングアウトしてきた子供をどのように受け入れてきたのですか?」という質問を多くいただきます。カミングアウトしてきたからとかそういう事ではなく、いつも同じ姿勢で子供と向き合ってきました。それは、もう真正面から、真剣に、ただ自分の思いのままに・・・

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母から監督へ。 その6(後編)

母から監督へ。 その6(後編)

禁断の自宅ロケの続きです・・・
当時のブログと記憶を頼りに綴ります。

自宅ロケ、それは、それは、掃除が大変でした。
普段、お客様が来ない我が家は散らかってる。
来客がある時、学校の家庭訪問の時だけ片付く。
これって家庭の事情「あるある」だと思うよw
知り合いが来るための掃除とは違い、
全国放送されるということで、かなり念入りに、
お掃除をしました。(見栄っ張り・・カッコつけ)

実は、すごい昔の

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監督から母へその6

「禁断の自宅ロケ」

2010年のこと。「性別に違和を覚える子供たちが、小中学校で辛い思いをしている」その現状と課題を伝えるニュースリポートを作りたいと、NHKワールドに提案をしたとき、耳を傾けてくれるプロデューサーは少なく、とても苦労しました。

それから2年後の提案は、打って変わってとんとん拍子に進みました。2012年9月、まずNHKワールドにて、ニュースリポートを放送することができました。さ

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母から監督へ。その5

リレーエッセイ10回目

前回、監督が最後に書いていたこと。

『映画を見てくださった方から、よくこういう感想をいただきます「空雅さんは良い高校に行ったんですね。良い友人に恵まれたんですね」

私からみるとそうではありません。自分をまっすぐに生きる姿勢や、自分のことをオープンにする直向きさが、学校やお友達を変えていったように思います。』

このように書いてくださっていました。今回は、空雅が自分をオ

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監督から母へ。その5

前回は、高校時代の空雅さんの変化する様子をくみちょ。が語ってくれました。「入学後すぐにカミングアウトして、友達もできアルバイトをする中でずいぶん明るくなりました。」とあります。

映画の中で一番好きなシーンはなんですか?と聞かれることがあります。私は「高校のお友達とのシーンです」と答えます。

「男とか女性じゃなくて、空雅は空雅だから」

「性別は空雅でいいんじゃないですか?」

お友達は、空雅さ

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母から監督へ。その4

リレーエッセイ くみちょ。より

前回のリレーエッセイで、監督(とこちょ。)が、空雅を描く映画に撮りたい!と思ったきっかけを語ってくれました。

当時、とこちょ。は、いつか自分がプロデューサーになって空雅の映画を撮りたい、映画を作りたいと語ってくれました。
どのような形になるのか、内容になるのか?全く見えていない状態でしたが、とこちょ。の夢として私たち親子に、語ってくれました。
その夢を応援したい

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