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KILLING ME SOFTLY【小説】34_「私たちはよく似てる」

そのような夏輝とは異なり、童話の主人公またはドールと見紛うファッションで元来コミュニケーション能力が乏しい私は当然ながら人気はおろか需要もなく仲間にさえ入れずストリートスナップの常連というだけ、まともな撮影などには声を掛けられない危機的状況。


当時、大手匿名掲示板には私達が載っていた雑誌のスレッドが存在しており、容姿批判と中傷に混じっていつぞやの〈深澤莉里〉を知る者にLilyは嘘吐きで有名、商売女の娘、父親いないんじゃね?と幾度も執念深く書き込まれた。


言われっぱなしの悔しさから涙を流す私に、1つ年上で信者が多ければアンチも大勢な夏輝がそっと手を差し伸べて
「こんなんで傷付くとかバッカみたい。もうチェックすんの止めな、コイツら見返そ?」
と所属事務所に引き入れたことにより救われる。彼女に新たな〈凛々香〉との芸名を与えられ、正反対の絶妙なコンビが誕生した。


夏輝が王子ならば私は姫、つまり乙女心を擽るような組み合わせに誰もが熱狂し、誌面にて大々的に取り上げられ、やがて読者モデルにも拘らず表紙を飾り、ファッション関係のみか、あらゆるイベントに引っ張りだこ、カレンダーが次々と仕事の予定で埋まる。


今や都内に複数の店舗を構えるアパレルブランドのプロデューサー兼モデルな夏輝に比べ、インフルエンサーとはいえ、しがないフリーターの私……雲泥の差がありつつも彼女は相変わらず親友として私を選んだ。


考えてみれば夏輝は仲間や関係者から蛇蝎の如く嫌われていて私が唯一の話し相手だった訳だが。さておき雑誌が廃刊した後も顔を合わせ、ツーショットを投稿すると互いのファンが喜ぶ。



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