マガジンのカバー画像

暮らし

29
日々の生活こそが人生
運営しているクリエイター

#エディンバラ

サステナビリティ考|ずっと続いてほしいものにエールを

サステナビリティ考|ずっと続いてほしいものにエールを

イッタラの花瓶を友達の結婚祝いに贈ることにした。表参道を歩いているときにたまたま見つけて、「これしかない」と思った。

一点一点手作りで、厚み、重さ、気泡の入り方、全部違うらしい。リサイクルガラスだからこその絶妙なグレーの色合いと、縁が描く不均一なカーブが、遊び心とかっこよさを併せ持った友達のイメージとぴったりだった。

***

心惹かれるものにお金を払いたいと思う。
例えば、職人やアーティスト

もっとみる
絵日記|雨の日の結婚式、エディンバラ市役所にて。

絵日記|雨の日の結婚式、エディンバラ市役所にて。

エディンバラのMorningsideで、なんとかという教会が毎週木曜日に開く無料の英会話教室に少しのあいだ通っていた。
そこで出会った女の子と仲良くなり、彼女のパートナーや友人も交えて、ケイリー(スコットランドのダンス)や8月のフリンジフェスティバルに何度か一緒に出かけた。たまに遊ぶ程度だったけど、それでもその子が中国に一時帰国したとき、急に寂しい気持ちになったのを思い出す。

そんな彼女がイギリ

もっとみる
エディンバラ暮らし|犬にやさしい社会

エディンバラ暮らし|犬にやさしい社会

ある日、ザ・メドーという、その名の通り芝生が広がる大きな公園のそばのカフェで、紅茶とスコーンのクリームティーを決め込んでいたときのこと。隣の席に老紳士と耳の垂れたおしゃれな犬がやってきた。

どう見ても介助犬ではないし、ここはドッグカフェというわけでもない。

静かにびっくり仰天していると、ひとりと一匹はあまりにも慣れた感じで、片方は新聞を広げ、片方はテーブルの下に身を伏せた。老紳士は私と同じセッ

もっとみる
エディンバラ暮らし|チャリティショップのある街

エディンバラ暮らし|チャリティショップのある街

ある日、チャリティショップに救われる

夏の終わり、日本への帰国を控え、私は困っていた。持ち帰る予定の荷物がスーツケースに入りきらない。冬までの滞在予定を大幅に短縮したというのに、たった数ヶ月でいつの間に物が増えたのか?
(いやあなた、そりゃそうでしょうよ。という記事はこちら)

元々、帰国するときには処分する予定で持ってきた服や生活用品がある。別送品として日本に送るにも、手間とコストの割に合わな

もっとみる
エディンバラ暮らし|物欲は希望だ

エディンバラ暮らし|物欲は希望だ

来た時はミニマルだったのに、数ヶ月の滞在で宝物が増えた話。

英国初日:リュックサックとスーツケースと私

今年の5月、冬が来るまでは英国で過ごそうと、リュックサックと大小のスーツケース2つを持って私はヒースロー空港に降り立った。

リュックサックにはPCやビザの書類、カメラ、イヤホン、Kindle、サングラスやアクセサリー類、もらったプレゼントなど失くしたくないものを。大きなスーツケースにはこの

もっとみる
エディンバラ暮らし|家とお金と、あるイギリス人の庭

エディンバラ暮らし|家とお金と、あるイギリス人の庭

20代のフラットメイトや60代の夫婦と一緒に過ごして考えた豊かさの話。

フラットを追い出される

「この家、8月末に退去しなきゃいけなくなった」
7月のある日、イギリス人のフラットメイトが慌てていた。

「え?なんで?」

「元々3人で借りてたんだけど、オーナーとメインで契約を結んでた子がロンドンの家族と暮らすということで、出ていくことになったのね。そしたら残りの私たちも出ていきなさいって」

もっとみる
エディンバラ暮らし|版画の先生/戴冠式小話

エディンバラ暮らし|版画の先生/戴冠式小話

生活するように仕事をする人、自分の小さなビジネスを持っている人、自分の仕事を「見て!」と楽しそうに話す人。こんな人に私もなりたい。

もう2ヶ月も前のこと。ニュータウンにあるEdinburgh Drawing Schoolで版画の夏期講習に参加した。

英国にいるうちになにかしらのアートレッスンを受けたいと思っていて、直近で申し込めるものを探している中で見つけたものだった。版画なんて小学校の図工の

もっとみる
エディンバラ暮らし|作ること食べること

エディンバラ暮らし|作ること食べること

王立植物園で野菜を育てている話を以前書いたけど、ある日の回がとんでもなく豊作だった。

10:00 雑草の手入れから始まる

朝から植物園へ向かう。前回種を植えてもう空き地がないので、この日は種蒔きはせずに雑草の処理だけ。

雑草はまとめてコンポストにする。
ミミズや虫や微生物の力を借り、6ヶ月かけて土に戻していく。分解を促進する薬剤は入れず、生き物たちのなすがままに任せる。分解中の雑草はわずかに

もっとみる
エディンバラ暮らし|王立植物園で野菜を育てている

エディンバラ暮らし|王立植物園で野菜を育てている

ガーデニング大国イギリス。植物園といえばロンドンのあるキューガーデンが有名だけど、エディンバラにも素敵な植物園がある。

中心駅からバスで10分ほど北上したところにある、エディンバラ王立植物園だ。世界中の多種多様な植物が一堂に会す。

丁寧に、でも野生味を損なわないように手入れされた植物もそうだけど、それに引き寄せられたハチや鳥たちもどこか人間慣れしていて、森で出会うよりも距離が近くて楽しい。

もっとみる
エディンバラ暮らし|アートの街で生活してみて

エディンバラ暮らし|アートの街で生活してみて

イギリスは国民への福祉政策のひとつとして美術館を無料で開放している。エディンバラでも有難いことにそうなのだけど、心から嬉しいポイントは他にもある。

ひとつは、わざわざ美術館まで足を運ばなくても街中のそこかしこにギャラリーや額装屋、ポストカードショップ、画材屋さんの数々があること。もうひとつは建築や生活デザインそのものがアートになっていることだ。

アート産業の活気

アート産業の存在は散歩してい

もっとみる
エディンバラ暮らし|モーニングサイド街歩き

エディンバラ暮らし|モーニングサイド街歩き

エディンバラのMorningsideは初めて見たときから「ここで暮らしたい」と思うような場所だった。

中心駅から南にバスで20分、徒歩で40分。
オールドタウンの喧騒を抜け、背の高い家々から成るMarchmontを超えた先にある優しいベージュ色の街。

いくつかのスーパーとたくさんのカフェ、ギャラリー、パブ、雑貨屋が軒を連ねる向こうにはふかふかした山脈。

住宅街に入るととんがり屋根と六角形の角

もっとみる
エディンバラ暮らし|社会に緩く包摂される

エディンバラ暮らし|社会に緩く包摂される

ロンドンとエディンバラでの優しいできごと、
そこから考える幸せのヒントについて。

「それあげるよ」といただいた桃

5月某日、ロンドンにて。Hammersmith辺りの通りはたくさんの露店で賑わっていた。

「あ、フラットピーチがある」

美味しいと噂のこの果物を一つだけレジに持っていくと、店員さんが半笑いで
「それ、まとめ売りのやつなんよ…まあいいや、もっていきなはれ」

「え、ごめんなさい!

もっとみる
エディンバラ暮らし|自分のための料理

エディンバラ暮らし|自分のための料理

日々において料理は癒しだという話。

その土地の食材をその土地の味付けで料理して食べるということが楽しい。

家から歩いていけるスーパーで安くて新鮮な食材を買う。日本で味噌や醤油やみりんで煮たり焼いたりするように、ここイギリスではオーブンに放り込んで出来上がったものにソースをかけて食べたい。

料理はあんまり得意じゃないし、せっかく作って「ふーん」と思うこともままあるんだけどそれでもいい。なぜなら

もっとみる
エディンバラ暮らし|篭れる家があること

エディンバラ暮らし|篭れる家があること

1週間前まで住所のない異邦人だったことで、家があることの大きな安心感を知った。

わずか1週間のホテル暮らし、生活者としては至極不便だった。郵便物は受け取れず(受け取れる宿もあるけど私の宿はそうではなかった)、料理を作れず、洗濯ができず、簡易宿泊施設なので日中は外に出ざるを得ない。
おまけに家が決まらないのでこの生活がいつまで続くかわからない。

さまざまな不便が移民という立場と重なって心細さを感

もっとみる