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エディンバラ暮らし|社会に緩く包摂される


ロンドンとエディンバラでの優しいできごと、
そこから考える幸せのヒントについて。


「それあげるよ」といただいた桃

5月某日、ロンドンにて。Hammersmith辺りの通りはたくさんの露店で賑わっていた。

「あ、フラットピーチがある」

美味しいと噂のこの果物を一つだけレジに持っていくと、店員さんが半笑いで
「それ、まとめ売りのやつなんよ…まあいいや、もっていきなはれ」

「え、ごめんなさい!」
まとめて買えたら良かったがホテル暮らしなので。慌てて棚に戻そうとするも、

「いいからいいから、持っていきな!」
ただでいただいてしまった。

少しシワシワになった桃、甘くて美味しかった。


疲れた日に沁みる"Have a nice day"

やること全てが裏目に出る日だった。

1つ、2つくらい上手くいかなくても「こういうものだ」と思えるけど、3つを超えてくると流石に堪える。夜ご飯の時間だけど、せっかく異国に来たのだから美味しいものを食べに行こう!なんて気持ちに全然なれない。

ホテル近くのお店で水・ポテチ・バナナ・チョコレートを買い込む。

「疲れているみたいだね」とレジの店員さん。
「まあ、少し・・・ハハ」
「仕事おわり?」
「いま仕事してなくて」
「そうかそうか。良い日をね」

Have a nice day、常套句だとしてもこの日聞いた一番優しい言葉だ。


"Robin, a tame bird"

ロンドンど真ん中のピカデリーサーカスから北へ少しいくとRegents Parkという美しい公園がある。

5月の肌寒さを感じながらベンチに座っていると、オレンジ色の胸元とクリッとした目が印象的な小鳥が近くにやってきた。ヨーロッパコマドリ(Robin)だ。
国鳥にもなっているほどイギリスでは身近な鳥らしい。私のことなど気にも留めずベンチの周りをうろうろしている。

`Robin. Tame`
通りかかりのキリッとした初老の男性が言う。

「テイムってなんですか?」
「Tame… 人間を恐れずによく近づいてきてくれるということだよ」

tameな鳥


「私の従業員割引使っていいよ」

エディンバラの気候は九州生まれの私からすると結構冷えるのだけど、路面の服屋さんはハイテンションで水着やサマードレスばかり並べるものだから適切な服が手に入らない。

せめてあたたかいナイトガウンが欲しいんだけどなあ、と一緒に暮らしているフラットメイトに相談すると、
「私が働いているお店にあるけど、気に入るのある?従業員割引を使って買っていいよ。一緒に住んでる人までなら使えるんだ」と。

おかげで夜があたたかい。




旧札交換と郵便局の人との会話

以前の旅行で使ったポンド旧札を新札に変えてもらうためにエディンバラの中央駅にある郵便局にやってきた。

旧札交換はイングランド銀行でしか受け付けていないとどこかで読んだのでスコットランドでは無理かと思ったが、一部の郵便局でも対応してくれるらしく、エディンバラではそれが唯一、中央駅の支局だった。

受付の女性にold note(旧札)を交換したいですと申し出ると、IDと住所の提示を求められた。
住所を見るなり「Morningside!いい場所よね、私前にそこの支局で働いてたんだ」と話に花が咲く。

住んでる場所を「良いところ」と言われふわっとした気分になる。

エディンバラで交換したので、イングランド銀行発行の旧札がスコットランド銀行発行の紙幣になって返ってきた。動物が描かれているのが自然豊かなスコットランドっぽい


「クッキー食べる?」

フラットメイトがSainsburys(スーパー)のクッキーが美味しいというので、お店まで同行した。

以前日本から持ってきたカントリーマアムをあげたら「美味しいけど何でこんなに小さいん?」と言われたことを思い出す。

そりゃそうよなあ、と納得する大きさ。

満月を携えてる気分





日々生まれる気楽な会話や緩やかな繋がりのおかげで、異国の地でも案外くつろいでいられる。

緩やかな繋がりが生まれるのは世界各国から人が集まるこの国の文化ゆえかもしれない。あるいは私自身から「なんでも学びます」「オープンマインドです」という姿勢が滲み出ているからかもしれない。


地域の人々と直接の関わりを持つことはコミュニティへの包摂の第一歩だと思う。そしてコミュニティへの包摂こそが幸せの切り札の一つなのでは、というのは最近考えていることだ。

包摂/inclusion
安心してくつろぎ、それぞれが個性を発揮できるような居場所を与えられること

個人の考え



いずれは日本に帰る。これまでは仕事がフルリモートだったのを言い訳にあまり住んでる街と接点を持てていなかったけど、これからはもっと関わっていけたらと思う。

実際にそれができるかどうかは地域の性質次第な部分もある。またドライすぎても味気ないがウェットすぎても息苦しいみたいな、調整が難しいところもある。

でも、耳を傾け目を開いてオープンな姿勢をなるべく示していくみたいに、自助努力の範囲で生きやすい環境を作っていけたら素晴らしい。

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