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エディンバラ暮らし|篭れる家があること



1週間前まで住所のない異邦人だったことで、家があることの大きな安心感を知った。


わずか1週間のホテル暮らし、生活者としては至極不便だった。郵便物は受け取れず(受け取れる宿もあるけど私の宿はそうではなかった)、料理を作れず、洗濯ができず、簡易宿泊施設なので日中は外に出ざるを得ない。
おまけに家が決まらないのでこの生活がいつまで続くかわからない。


さまざまな不便が移民という立場と重なって心細さを感じた。

ホテル暮らし中の食事



なんでもいいから早く住む場所を。渡英前は勇敢にもそう考えていたけど、じゃあそんなに簡単なのかというとそうでもない。物件を見ていく中で、謙虚に身を潜めていた我儘が急にその存在を主張し始めたのだ。

「日当たりが悪い」「きれいすぎる」「大家と性格が合わなそう」「丁度いいスーパーがない」

加えてシェアフラットなので女性限定がいいとか、平日の日中問わず好きな時に家で過ごせる(リモートワーク可か否かで判別)などの条件を加えたのでそりゃ難航したわけだ。

自分はこだわりの少ない人間だと思っていた。確かにこういったこと、以前は気にせずやり過ごせていたと思う。だけど今はこんなことでもストレスに感じるらしい。

数年前まではたしかになんだってよかったのだ。だけど頑張って生きてるうちに、自分なりの快適な生活様式(こだわり)がいつのまにか出来上がってしまったんだろう。

年を重ねて得たこだわりは柔軟性を失わせる一方で、その人なりの魅力的な個性にもなりうる。長生きおばあちゃんのお家が唯一無二の空間であるように。ストレスの源泉となりうるこだわりは、裏を返せばこれまで生きてきたことの証でもある。

囚われすぎず、手放しすぎず、上手に折り合いをつけていきたい。

いまの食事



ところで住所があるのは本当にありがたい。

これでやっとビザを受け取れるし、銀行口座も作りやすくなる。外務省への届出や国民保険番号の申請といった様々な手続きも住所があることが前提になる。

料理も作れるし洗濯もできる。あの試したかった野菜を試せる。物価の高い英国でもスーパーの野菜は日本より安かったりするのだ。

なにより、人目を気にせずいくらでも篭れる。自分にとってはこれが大事なので、家の空間をこれからも大事にしようと思った。

空気のような存在(今回の場合、家)の有り難みに気づけるのは良い経験かもしれない。

関係ないけど、近所で紫の花が溢れていてきれいでした

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