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おじさんマガジン

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長年の文通相手である「おじさん」に関する記事を纏めます。
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#エッセイ

ここにある すべて。

ここにある すべて。

午後八時半。チャイムが鳴った。
誰か訪ねてくる予定はない。なにかネット注文していただろうかと考えたが思いつくものはなく、インターホン越しに要件を聞いた。

相手は聞き覚えのある声で「郵便局です」と言った。

こんな時間に郵便物が届くのは珍しい。だけど、これが朝の八時ごろであれば、送り主にだいたい察しがつく。

おじさんだ。

おじさんというのは私の長年の文通相手のことで、御年80歳。私が幼い頃住ん

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日記 | 好き勝手やる。お互いに。

日記 | 好き勝手やる。お互いに。

おじさんから何やらダンボールで届いた。

おじさんは先月誕生日を迎えて、80歳になった。
前年、おじさんの誕生日を数日すぎてから祝辞を述べたら拗ねられたので、今回は年末に一ヶ月早くビール券を送っておいた。
お歳暮ではなく、誕生日プレゼントだと念押して。

そうして一月の末にようやく、わたしから年始の挨拶とおじさんへのバースデーメッセージを送った。実は今回も手元に残しておいたビール券を三枚だけポチ袋

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日本人は失恋しているらしい。 (日記)

日本人は失恋しているらしい。 (日記)

今朝、家を出る間際の忙しい時間にチャイムがなった。
朝は大体、化粧をしながらnoteを読んでいたりするのでついついのんびりしてしまう。

インターホンからは「郵便局です」の声。急いで前髪につけていたピンをはずす。姿見の前に2秒だけ立つ。その2秒で靴下の中に部屋着のズボンの裾を入れていたことを思い出し、慌てて直す。そしてフローリングを滑るようにして玄関へ走った。

郵便局の方は大体いつも急いでいる。

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床までの心理的な距離だったりする。 (ゆるエッセイ)

床までの心理的な距離だったりする。 (ゆるエッセイ)

先日、夏に使ってそのままにしていたサーキュレーター2台をようやくしまうことができた。
サーキュレーターに睨まれながら過ごす日々にも慣れてしまっていたが、何せ空気が乾燥してきたので、加湿器を出したかった。それにはサーキュレーターをしまうしかないという“置き場所”問題が発生したことにより、ようやく問題解決に至った。
問題、というか悩み事。
サーキュレーターを出しっぱなしにしていることは、私の中の小さな

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94円でクイズに答える。 (エッセイ)

94円でクイズに答える。 (エッセイ)

昨日、家のポストを開けるとおじさんから手紙が届いていた。
文通相手のおじさんは、その時々で様々な厚さの手紙を送ってくれる。今回は薄い。
直ぐに読みたい気もしたけれど、午後は用事が詰まっていたので、落ち着いたらゆっくり読もうと一旦放置。noteで記事を読むのと違って、手紙は移動の合間にちょこっと読むとか、そういう慌ただしい読み方をしたくない。
そんなことを思っていたらすっかり忘れて、夜になってしまっ

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おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

土曜の朝。郵便配達のお兄さんは、怪しい衣装ケースを運んできてくれた。
透明な80サイズくらいの使い込まれた衣装ケース。持ち手の部分や全体に、青い養生テープを巻き付けてある。この斬新な梱包を施した主は、やはり文通相手のおじさんだった。

中身は透けて見えているが、どう見ても冬物のジャケットだった。それが2枚、ぎゅうぎゅうに詰められている。

見た感じ、手紙らしきものは入っていないようなので、ひとまず

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うれぴー。

うれぴー。

はじめに。

「うれぴー」は死語でしょうか。
【死語辞典】なるものに載っていたので、使う人は少なくなっているのでしょう。
それでも私は、の〇ピーさんが人類の記憶の中に存在し続ける間は使っていても良いと思っています。

*****

今日は年に一度の検診があって(私ではありませんが)大きな病院へ行きました。

広々とした院内。
座り心地の良いソファーがたくさんあって、Wi-Fiもあって、予約なので待

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ルリ色の田沢湖のような男前〔エッセイ〕

ルリ色の田沢湖のような男前〔エッセイ〕

昨日、文通相手のおじさん(80歳)から、同時に2通の手紙が届いた。
誰でも開けられる古いタイプの我が家のポストから、バサッと落ちかけた2通の手紙と、数枚のチラシ。

字を見ればどちらもおじさんからだとわかる。
一通は、最近おじさんがよく使用しているブルーの封筒。
おじさんは封をした後、ポストに行くまでの間にも、私に伝えるべきことが浮かんでしまうようで、封筒の裏や、表の宛名書きの下にもびっしり文字が

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