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ダンスに関するエッセイ

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ダンス公演、パフォーマンス、イベント、ダンスクラスをより良くするための考察をまとめたものです。
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ソロのダンス公演はどうあるべきなのか。Pietragalla solo « La femme qui danse » を観て

ソロのダンス公演はどうあるべきなのか。Pietragalla solo « La femme qui danse » を観て

昨夜(2021年11月26日)パリ8区のマドレーヌ劇場にてMarie-Claude Pietragallaの« La femme qui danse » を観て来ました。そこで思ったこと感じたことをつらつらと残したいと思います。

まず58歳の女性がたった独りで一時間以上の舞台を、毎日踊り続ける体力に感服する。そしてマドレーヌ劇場(709席)を連日埋めている。昨日は全席6割ほどの入りでしたが、それ

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作り手の視線は一致させよう(ライオンの眼差し)

作り手の視線は一致させよう(ライオンの眼差し)

2020年にコロナ禍でフランスがロックダウンされてから私はYouTubeチャンネルの制作をかなり本腰入れて行っています。ここでは自分が制作する際、他の人の動画を見るときの気付いたことを共有していきます。

今日の気付きは「野生の獣が美しいのはメタ分析をしないから」

一般のYouTuberさんたちの動画は次のような工程で作られている。

1)アイデアをまとめる、調査、草稿
2)撮影
3)編集、サム

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公演準備:忘備リストチェックの重要性を再認識した話。

公演準備:忘備リストチェックの重要性を再認識した話。

リストを見ながら行ういつもの公演荷造りチェック。会場に向かう時、最後まで忘れていた裁縫道具。「今回は要らないかも」と思いつつスーツケースのポケットに入れた小さな袋には衣装と同じ色の糸と針、針通し、鋏。

これ、忘れると大変なことになっていた。想像するだに恐ろしい。

公演の二日目、ズボンを履こうとすると、破れ目に足を突っ込んでしまった。ああっ、股が裂けている!

このズボンはヴェトナムで作ってもら

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カーテンコールは浪漫で溢れている。

カーテンコールは浪漫で溢れている。

「カーテンコールはやらない」と主張する演出家がいる。寺山修司は『人力飛行機ソロモン』あたりを上演していたとき、インタビューで「カーテンコールはやらない。今まで演技していた役者が急に素に戻って出てくるのに違和感がある」と言っていた。(他の作品で彼がカーテンコールをやっていたかは不明)それは、数十年前だったから斬新だったのだ。現在でも「カーテンコールはやらない」演出は時々見かける。

  しかし挨拶を

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「公演行けないけど、あとでビデオ見せてね!」と言ってはいけない理由

「公演行けないけど、あとでビデオ見せてね!」と言ってはいけない理由

 友達に公演に誘われたが都合が悪くて行けない時「行けないけど、あとでビデオ見せてね!」と、つい言ってしまう。たぶん私も言ったことがあると思う。応援してるから頑張ってね!という意味だから悪気はないのだ。しかしこれほど嫌な言葉はない。(地理的に遠すぎる人の場合は別)

 そもそも何故その友達があなたを誘うのかと言うと、
1)チケットを買ってほしい
2)観客席を埋めてほしい
3)会場をポジティブな氣で

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「JOKER」は舞踏する。

「JOKER」は舞踏する。

封切りされて以来、話題が沸騰しているトッド・フィリップス監督の映画『ジョーカー』をようやく観に行った。この映画では、主人公のアーサー・フレック(ジョーカー)が踊る。何度も踊る。 そのジョーカーの踊りは「舞踏」を感じさせた。

この映画はダンスをメインテーマとする作品ではない。実際、映画に出てくるダンスの多くが脚本の段階では計画されていなかったとフィリップス監督は語る。ダンスはアーサー・フレック役の

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舞踏が登場する小説、映画

舞踏が登場する小説、映画

舞踏が登場する小説(あるいは漫画、映画など)をご存知の方は、教えてください。

読んでみたい。観てみたい。

私が知る限りではこれらである。

1)村松友視『海猫屋の客』   第一刷発刊1986年 数十年前に読んだので結構うろ覚えですが、キク(架空の人物。モデルは誰だろう?小樽の話なので北方舞踏派の誰かだと思う)という舞踏家が登場する。山海塾の墜落事件についても書かれている。

2)立松和平『蜜月

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舞台のハシゴを可能にするシステム

舞台のハシゴを可能にするシステム

 パリ2区にジャズクラブが連なった細い通りがある。そこには何軒かのライブを割引きでハシゴできるシステムがあった。素晴らしいアイデアではないか。普通ならお客を取り合い、争い、憎しみ合いそうなものなのに、お互いに協力して双方の店を盛り上げようとしている。

 パリの9月、10月は催しが多く、開催日が重なることが多い。時間帯もほぼ同じだからどれかに行けばどれかに行けない。そういう時、どうして時間帯をずら

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なぜダンスの公演には前座システムがないのか?

なぜダンスの公演には前座システムがないのか?

 音楽のコンサートには前座システムというものがある。チケットを買ってコンサート会場に行くと、見知らぬ演奏家たちがわらわらと出てきて見知らぬ音楽を奏でる。そして場が熱し、聴衆/観客にも十分に心の準備が出来、期待が高まった頃に目当てのグループが登場する。聴衆は一粒で二度美味しい宵を過ごし満足しながら帰途につく。(前座を置かないコンサートも存在する)

 ところで、ダンスの公演では何故、音楽のコンサート

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舞踏は「純文学」である。

舞踏は「純文学」である。

 舞踏とは何だろうか? その歴史、発生時の社会的背景、外観的特徴など様々な面から語られる。私が舞踏を生業にしてきた四十年近くの間「舞踏とは何か」という議論はすでにあちこちでなされたものだ。舞踏の中にはいろいろあるので、ここで「自分の理想とする舞踏とは何か」について考えたい。

 自分にとっての舞踏は「純文学」なのである。

「純文学」とは何か?

「純喫茶とは何か」はわかりやすいが、「純愛とは何か

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プロの仕事を奪うボランティアの問題

プロの仕事を奪うボランティアの問題

 数日前、日仏間の大規模なイベントが開催され、そこでのパフォーマンスを提案された。いつものように見積もりや資料を送ると、「無料でやってくれる団体が見つかったからプロは必要なくなった」と言われ、この話はなくなった。そこまではよくあることなのだが、そのボランティアとは私の生徒の入っているサークルであったことが当日判明したのだ。「良い機会を得られた」と嬉々として話す彼女は、自分が先生の仕事を奪ったことを

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パフォーマンスを見やすくする方法

パフォーマンスを見やすくする方法

舞台設定の改善
 上演内容の改良は即座には出来ない。しかし、舞台設定の改善は次の日にでも出来る。数分で出来る。気がつきさえすればいい。改良しないのは、気がついていないからである。

  舞台の良し悪しは様々な因子が組み合わさって生じる。出演者は往々にして舞台上のことしか考えられないが、上演内容以外の要因(宣伝方法、チケット販売方法、会場へのアクセス、会場設置、物販、観客の休憩時間、上演前後の過ごし

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