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WATCHER山 ~憎みきれないろくでなし編~
夕日がすりガラスの窓を赤く染める頃
シマ子さんは今住んでいる施設から
ウォッチャー山のもとへ
リハビリを受けにやってくる
彼女の体型に合わせた車いすはとても小さく
男性の介護士が彼女の車いすを押すと
その小ささに、深くお辞儀をしているようだった
鹿山シマ子さんです
よろしくお願いします
エプロンをした大柄の若い男性が
背中を丸くしながら
車いすを押してリハビリ室に入ってくる
その車いすにちょ
ビニール袋の千羽三角折り
※この話は、フィクションです
昼飯時、休憩室のテーブルについて
この世で1番どうでもいいことを話しながら
弁当をつつくのが、同僚たちだ
お前の子どもの水泳の順位など
僕の鼻くそよりも価値がない
お前の嫁のカレーライスが
ひとつのルーしか使わないから
恐ろしくマズい、というなら
お前が作ればいいだけの話だ
などなど
本当にどうでもいい話題で
口から米つぶを吐き出して笑っている
なんて汚ら
夫の口ぐせ、できますよ
今日も、ブリだかカンパチだか知らないが
水色のボタニカル柄の皿に
スーパーで買った刺身の大パックを
盛る、盛る、盛る
記念日でもないが
今日は旦那や子どもの為に
夕飯を作る精神状態ではない
周期的にやってくる行き場のない苛立ちの日は
手巻き寿司か鍋と決まっている
調理と片付けの手間が少なく
子どもが大喜びだからだ
だから今日も
ブリだかカンパチだかハマチだか知らないが
とにかく皿に、盛る、