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ビスケット缶にしまうもの

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忘れたくないnoteを大好きな缶に。
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2023年10月の記事一覧

食器棚の妖精  (#シロクマ文芸部)

食器棚の妖精 (#シロクマ文芸部)

珈琲とコーヒーの印象の違いについて考えながら、何気なく食器棚の扉を開けた。
すると、珈琲カップとコーヒーカップの間に寝そべっている、手のひらに乗るくらい小さいおじさんと目が合った。

「いつからそこにいるの」
「さぁねぇ」
「どうしてそんなにやる気無さそうなの」

おじさんは起き上がった。そして僕に言った。
「お前もどうせ、珈琲なんざ飲まんのだろ」おじさんは冷たい目をしていた。

「飲むよ。スチャ

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羽。赤。タイ。  (日記)

羽。赤。タイ。 (日記)

タイ料理♪ タイ料理♪

会うときは、なぜかタイ料理を食べに行くという間柄の友人がいる。

友「明日どこにする?赤羽か池袋とか?」
私「じゃ、赤羽で」

赤羽にタイ料理屋があるかどうかは知らなかったけれど、赤羽にした。
ちゃんとあった。

この友人と最後に会ったのは2年前。

会うとすぐに2年前の会話の続きが始まった。

友「あれ、なんだかんだ悩んでて、まだ買ってないわ」

私「それよりさぁ」

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いつか生で見たい

鎌倉の夜光虫(2017年5月5日)

告白ロボ  (短編小説)

告白ロボ (短編小説)

「最近はいつもこの時間だね」
僕がよく行くレストランで働く馴染みの配膳ロボットは言った。
「バイトを変えたからね。だけど、この時間の方がこの店は落ち着いているからいいね」
22時を過ぎた平日のレストランでフロアを動き回るのは、二台の配膳ロボットだけだった。キッチンにこもってお喋りに夢中のアルバイトたちは、レジの近くに人が寄った時にしか姿を見せない。
数ヶ月前から顔見知りになったこの配膳ロボットと僕

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糠に埋めてみた (日記)

糠に埋めてみた (日記)

糠床が減ってきたので、補充をする。
使い勝手の良い無印良品の『発酵ぬかどこ』に落ち着いて2年経った。

冷蔵庫で保存出来る。
毎日混ぜなくてもいい。
スプーンを使うから手が臭くなることもない。
楽~~

ただ、糠床の機嫌を損ねた時にはそれなりの対処が必要。
対処方法のようなものは過去に小説に書いた。
(記念すべき毎週ショートショートnote初参加作品。リンクの貼り方もわかっていないかった頃)

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そうか、いいんだ。

そうか、いいんだ。

 走らないわけにはいきません。熱が出て、耳鳴りがしても、徹夜明けの彼女は渋谷駅構内を駆けます。走らなくていいと小学校の恩師に廊下で優しく諭された日が走馬灯のように頭を過ぎっても、彼女は止まりません。今日が仕事の納期でした。

 通路の端に見慣れないエレベーターを見つけます。改札行きなら早道だと彼女はボタンを連打しました。扉が閉まるとほとんど床が回っている気がします。扉が開き、彼女はまた駆け出しまし

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