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#吐露

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君と僕のイノセンス
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White Un Birthday

White Un Birthday

綺麗な水から生まれた君の
かくれんぼに付き合って
遊んでいたら 春 夕暮れ

陽に透けた嘘も
伸びた影に隠れた本音も
また明日 手の鳴る方で 会えるかな

不確かだから 触れて欲しかった
君の体温で 僕の言葉は色が変わるの

何もかもを飲み込む優しさで
埋もれた世界に生まれ落ちた君は
産声を持っていない

閉じ込めてしまう
冬の香りと白く

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ピオニーとマーメイド

ピオニーとマーメイド

花束を買って歩く道すがら 
恋人の裏切りに出会うような日 
ミュージックビデオを馬鹿にした季節は 
ありふれたフィクションへ 落下してゆく 

汚れた鏡に 自惚れた自我が歪んだ 
何度目かの感傷は 
モノクロノイズに蹴散らされる 
暗闇は泡 行方知らずは言葉 
君は 僕に 必要な 傷跡 

いつかの涙で この花を飾ろう 
きっと 時間に染まってゆくだけ 
朽ちてゆくまで 見届けたなら 
きっと 虚

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間違い探しの恋人

間違い探しの恋人

ぼんやり光る 部屋の壁
続けて報せるならば 眠りにつけるでしょう
明日 目覚めたら 分かること
やっぱり 君だったねって 答え合わせしたい

会えない春は 積み重なって
会えそうな夏は 零れ落ちて
会ってみたい秋は 叶わなくて
冬の星座だけが 美しいまま 廻る

今宵も月が 一夜分 隠れてしまうように
少しずつ 心の余白に 風が入り込んで
君は 私の知らない人になる

滲んだ空の隙間に
忘れていた

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嘘吹く金糸雀

嘘吹く金糸雀

琥珀で死んだ蝶に 触れたかった
扉に手をかけて 動けないねもう
時間は 冷たい床に吸い込まれて
反響する 偽物の一歩を踏み出した音

沈黙が伝える 溢れない言葉 止まらない思考
影はあまりにも 無愛想で気怠げだった
君の価値観で 僕が否定されてゆく
ほら 苛立って 昔話を始めるのさ

読み違えたカレンダーに
未来を語りかけて 笑い者
皆 一人で 幸せになっていった
ねえ 君の理想の幸せの中に
僕が

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麝香猫と排水口

麝香猫と排水口

階下 見下ろして流れた涙
強がりが剥がれ落ちて 大怪我をした
回らない観覧車は 夜の時計台
電飾と歓声が消えた夕景

補正できない 視界は雲隠れ
シャッターを切るたびに 君は赤い瞳
熱風に吹き飛ぶ カリカチュアは
忘れられた怒りの風刺か

過労のキリギリスが 自販前でバーンアウト
エメラルドの蜂鳥は 水煙管に集う
地下への入り口は すっかり閉じてしまって
君も僕も 細く長く 生きるだけ

ぬるい炭

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ロスト・メモライズ

ロスト・メモライズ

残り時間を 持て余した夜には
水溶液に 月の雫を一掬い
暗転した部屋に 波紋 広がって
冷たさに 孤独と揺れる

鏡の中 ベルーガと対話
水泡で紡ぐ 『さ び し い』
信じないよ だから裏切らないで
触れ合わないまま 交わす体温

縛り付ける 引力と傷跡
ここから先は 遊泳禁止の記憶
気まぐれに 足を踏み入れたなら
埋め立てられた群青に 気づいてしまう

はらはらと 星の砂
集まれば こんな

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萩に猪

萩に猪

見透かしたような猫の目線を
ビニール傘で隠した
早足 乾いた喜怒哀楽に寄り添うは
生ぬるい風のひと吹き

右足 灰色の過去に捕われて
風景 滲んだら 負けよ
感傷 喉に詰まらせて
上手に泣けやしないのに

ダウナーとハイが隣り合わせな
この季節の仕組みは 躁と鬱
シューゲイザーで 霞ませてゆく心象
降りしきるのは ただ 焦燥の雨

首を切られた紫陽花が 朽ちる頃に
青い空と 狂騒を思い出す
疑心

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蝉時雨、耳鳴り

蝉時雨、耳鳴り

太陽を隠した雲の縁が
銀色に透けてグリッター
あの夏が来たと勘違いして
黒い駅のホームに鳩が堕ちる

慰めは高い塔 青い光の点滅に
フラワーダストの瞬きを重ねた
低く低く飛行機は翔けて
手を振る人は5秒間の物語になる

放射 火花 咲いて 静寂
次の灯火は誰の残像?
網膜は正常で 偶像を殺めたのは僕の脳
結べない 無数の残響

僕の目の中で 君は死ぬのさ
絶えず屈折する希望
涙から掬い上げた金魚

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スカーレット・シーガル

流れ星が欠航して
僕だけの悲しみが不時着する夜
泣き出したら ほら 息が乱れて
甘い傷の疼きに 意識奪われてゆくから

白昼 消し忘れた月を見た
今こんなにも あの光が恋しいのに
ビルの影 四角いパレットには
物足りない彩度が宿る

虹鉄の橋 潮風が怠惰な昼下がり
寂しい場所ねと 嘘をついて
サンデーピープルを嘲笑った
一人で切り取った風景は 退屈だから
ありきたりなコラージュに焼き捨てて

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放課後から砂場まで

スターチスの紫が錆びて
幼いウサギの瞳の色に 変わりゆく
チャイムで守られた箱庭に
片足だけ靴を落として 君は卒業した

初めて見たクラスメイトは 春の雨の日
右の頬を濡らして 笑っていた
2人に1人が 黄色い傘を開かない 通学路
空いた片手は アドレセンスの無防備さで

赤信号が膨張して 進めない夕暮れ
あどけなさで 足踏みする ステップに
うつむく君は バランスを崩した
不意に目に入ったの

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独白、蒼い手を引いて

時計の音は大きく 乾いた時を刻み
壁は白く垂れ込めて 腫れぼったく見えた
もう一人の僕が僕を見て 君も一人だねと笑って
更けゆく 今夜の呼吸は 凪ぐでしょうか

僕を今日まで生かしてきた思い出が
君を巻き込んで フラッシュバックする
図書室の夢は 光の筋に舞うダストとアンニュイ
梟の瞳で本を読む 星の欠片をガラス瓶に詰めた

記憶の中の待ち人 誰よりも知っていた
本当に 捨てられないものは

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イースターの招待状

両眼が空っぽな雌の兎 歪なグレーの眼窩
誰かが落としたオペラグラスを 嵌め込んだら
狂ったように跳ね返って 彼女が動き出した
それって つまり 僕の過ちは 消えたってこと

綺麗な景色が見えるかな また遠くに行けるかな
ううん 罪悪感から解放された
それが嬉しかった
僕は彼女を愛してはいなかったけれど
失くなったら困るんだ 僕の手が汚れるから

何度も君の頭を撫でた 薄い右掌
従順で口

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コズミック・フライト

観覧車が止まった 暗い暗い春の夜
電波望遠鏡に届いたエレクトリックウェーブ
海の上 急ぐように 流れる雲の 上の上の上
何も知らない 機械仕掛けの銀河は 回って回って

瞳を閉じて 1500光年先の星雲まで 飛んでいく
遠くに行きたくても行けない日々を 通り越して
不透明な街で 君と僕は幾つもの哀しみを紡いだ
目の前が 足元が 痛々しく 裂けてゆく

天の川にカササギが 橋を架けられますよ

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水深60mのソプラノ

エンゼルフィッシュの背びれで 深紅の切り傷
二人 ターコイズ色の海の中 遊泳する脚本
君の唇が動いて 言葉が泡になって バブルリング
喜び 悲しみ どんな声色も 透明に弾けて消えた

パレットを洗っても 忘れられなかった混合色が
水道管 流れて 巡り逢う 深い岩礁 海洋の果て
14のあの子が 隠れて買ったカラコンが
虚空 見つめる 深海魚の瞳に宿って 涙を忘れた

眠れる 月のライオン 花

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