水深60mのソプラノ

エンゼルフィッシュの背びれで 深紅の切り傷
二人 ターコイズ色の海の中 遊泳する脚本
君の唇が動いて 言葉が泡になって バブルリング
喜び 悲しみ どんな声色も 透明に弾けて消えた

パレットを洗っても 忘れられなかった混合色が
水道管 流れて 巡り逢う 深い岩礁 海洋の果て
14のあの子が 隠れて買ったカラコンが
虚空 見つめる 深海魚の瞳に宿って 涙を忘れた

眠れる 月のライオン 花魁の虚栄と諦めが
水底で咲き誇って 美しい毒を広げていた
唇に人差し指を押し当てて 君は戯けてみせる
かの有名な トゥーランドットのアリア
蓄音機が無情にも今 針を落とす

ねぇ 君の歌声が響くのを 待ちわびて
青白い肌が 海月のように 溶け出してしまいそう
ふわり 広がった黒髪が 休符一つ 遅れて踊る
コーラルピンクの歌劇場で 動脈血 奪われていく

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