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#毎日note
愛した人 (短編小説 1 )
#オールカテゴリ部門
その家の門の前に立つと、妙な違和感があった。
空き家にしては、そう古びた雰囲気がしない。
よく見ると、出窓にかかるレースのカーテンは真新しい白さだ。僅かに開いた窓から吹き込む風を受けて、軽やかに揺れている。
(新しい住人が住んでるのだろうか?)
その家は平屋建てで、玄関は引き戸だ。
グレーの壁は、さほど色褪せてはいない。
ふと、家屋に隣接するガレージに目を向ける。
シャ
この世の果て(短編小説 1)
決行の時がやってきた。
真希は思いきり息を吸う。そして、ゆっくりと吐き出す。
深呼吸しても興奮は冷めない。
が、そそくさとベッドに入った。
スマホを手に取り、例の動画を表示する。
幽体離脱を誘導する音楽が、約8時間流れるのだ。
SNSのフォロワーさんが、幽体離脱できるという音楽を聴いてみたが、離脱はできなかったと呟いていたのを見て、興味を持ったのだ。
どんな動画なのか尋ねたら、この動画だよと教え
この世の果て(短編小説 8)
《《 今までのあらすじ →3回目の幽体離脱をした真希は、海岸にひっそりと設置されていた電話ボックスで鳴り響く電話のベルに引き寄せられる。試しに電話に出てみると、津波に流され行方不明になった恋人、裕二の声が聞こえた…… 》》
《 最終回 》
あの世とこの世の狭間。
それは、水平線の彼方にある。
以前、何かの本で読んだ記憶がある。
神秘的な作り話ね、と思ったが、あながち嘘ではないかも
この世の果て(短編小説 7)
《《 今までのあらすじ →幽体離脱をした真希は、観光船の沈没事故で亡くなった女性の亡霊と知り合い、一時の友情を育んだ。その後、亡き両親や愛犬と、束の間の再会を果たした。そして、これで最後にしようと、3回目の幽体離脱をした 》》
真希は祈った。心を込めて。
女性と、沈没事故で亡くなった死者と行方不明者達の魂に向けて。
海に散った、尊い命。もっと生きたかった命。
強制的に人生が終了させられ、無念だっ
この世の果て(短編小説 6)
《《 あらすじ → 真希は2度目の幽体離脱に成功した。海峡で例の女性を探していると、亡き愛犬の鳴き声が聞こえた。鳴き声に導かれるように移動したその場所は、かつて両親が住んでいた借家だった。人が住む気配を感じ、様子を伺っていると、引き戸を開けて亡き母が現われた 》》
何もないがらんどうの部屋の中で、次第に悲しみが押し寄せてくる。
昨夜の光景は幻覚か、または霊界に迷い込んだか
どちらかの可能性がある
この世の果て(短編小説 5)
《《 今までのあらすじ →幽体離脱に成功した真希は、海峡で観光船の沈没事故で亡くなった女性の亡霊と出会う。翌日も会う約束をしたが、女性の亡霊は現われなかった。
ふと、亡き愛犬の鳴き声が聞こえてきた。鳴き声に誘われるように上空を移動すると、かつて亡き両親が住んでいた借家に辿り着いた 》》
「母さん……」
嬉しそうに微笑む母を見て、真希は考える。
(この状況を、どう解釈したらいいのかしら?
一
この世の果て(短編小説 4)
《 今までのあらすじ→ 幽体離脱に成功した真希は、北へと向かった。海峡を通り過ぎようとした時、2年前に観光船の沈没事故で亡くなった女性の
亡霊と出会った。女性の話しを聞き、真希はしばらく傍にいた。明日また来ることを約束し、真希は一旦帰宅する 》
(上手く肉体に戻れるだろうか?)
自宅アパートの上空に戻ってきた真希は、少し不安になる。
(大丈夫、落ち着いて)
ゆっくりと屋根をすり抜け、自分の部
この世の果て(短編小説3 )
【 あらすじ→ 幽体離脱に成功した真希は、北へ北へと向かった。海峡を通り過ぎようとすると、泣き崩れる女性がいるのに気づいた。真希は気になり話しかけてみる。ここで数年前に船の事故で亡くなった女性の亡霊だった】
女性の話しは、こうだった、
2年前、この辺りを航行していた観光船が原因不明の事故で沈没した。女性は一人で乗船していた。何らかのトラブルで海水が流れ込み、制御不能になった観光船は、徐々に沈ん
この世の果て(短編小説 2)
【あらすじ→ 幽体離脱の動画をフォロワーさんに教えてもらった真希は興味を持った。少し怖いが、自分も試してみることにした。1回目は失敗したが、再度挑戦し、成功した】
空中で四肢を伸ばし、泳ぐような格好で前進してみる。
夜風が心地良い。
(そうだ、北海道に行ってみたいわ)
最後に北海道に旅行してから、もう10年以上経つ。
函館の夜景が見たくなった。
鳥になった気分で夜空を突き進む。眼下には通り過
この世の果て(短編小説 1)
決行の時がやってきた。
真希は思いきり息を吸う。そして、ゆっくりと吐き出す。
深呼吸しても興奮は冷めない。
が、そそくさとベットに入った。
スマホを手に取り、例の動画を表示する。
幽体離脱を誘導する音楽が、約8時間流れるのだ。
SNSのフォロワーさんが、幽体離脱できるという音楽を聴いてみたが、離脱はできなかったと呟いていたのを見て、興味を持ったのだ。
どんな動画なのか尋ねたら、この
愛した人 (短編小説 6 )
【 あらすじ → 5年前に亡くなった恋人、隼人がかつて住んでいた住居を美紀が訪れると、隼人そっくりの住人がいた。イヤ、隼人本人に見えた。それとも幽霊なのか? 隼人と一晩を過ごし、お互いの愛を確かめあった。が、翌日ドライブに出かけた海辺で、さよならと言い残したまま、隼人は消えてしまった……】
《 最終回 》
何だか寒気がした。
美紀は身震いすると同時に目覚めた。
ぼんやりとした意識
愛した人 (短編小説 5 )
【 あらすじ→ 5年前に亡くなった恋人、隼人がかつて住んでいた住居を訪れると、隼人そっくりの住人がいた。イヤ、隼人本人にしか見えない。亡くなったのは、何かの間違いだったのか? それとも隼人の幽霊なのか?
その後、2人はお互いの愛を確かめ合った。美紀が未来に希望を持ち始めた矢先……。 】
「天気もいいし、海でも見に行こうか」
隼人の提案に、美紀は二つ返事で同意した。
海岸線に沿って、隼人は車を走
愛した人 (短編小説 4 )
【 あらすじ → 5年前に亡くなった恋人、隼人がかつて住んでいた住居を美紀が訪れると、隼人そっくりの住人がいた。イヤ、隼人本人に見えた。
夢なのか、現実なのか判然としない中で、その後2人は…… 】
隼人は美紀を抱きかかえ、優しく押し倒した。
「もう会えないのかと思ってた。来てくれて嬉しいよ」
「私も、嬉しい……」
愛しさが込み上げてくる。
今まで隼人が夢に何度も現われ、目覚める度に泣いてい
愛した人(短編小説 3 )
(あらすじ → 5年前に亡くなった恋人、隼人が
かつて住んでいた住居を、美紀が訪ねると……。
そこには、隼人そっくりの住人がいた。
イヤ、そっくりというより、隼人本人? に
見えたのだが……)
長い抱擁の後、美紀を抱き締めていた手を緩めると
隼人は言った。
「本当に久しぶりだね」
「うん、そうね……」
(だって、あれからもう5年よ……)
2人はひとまず、ソファーに並んで腰かけた。
ベージュ