マガジンのカバー画像

或る若者の思索

79
私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

ハイ・ヌーンは邪魔させない

ハイ・ヌーンは邪魔させない

 ある日の昼時、働いているのが逆に失礼なくらいの雲一つない空が広がっている。こんな空の下で、誰が私に働けと命じているのだろう、まったく不躾なやつだ、と思いながらも颯爽と車を走らせていた。社用携帯は11時を過ぎたころからめっきり鳴らないが、カーステレオは陽気なナンバーを鳴らしている。12時の5分前を告げるDJの高らかな声を合図に、車はややスピードを落とした。

 国道沿いのラーメン屋の駐車場に車をと

もっとみる
ドレッシング全然かかってへんで

ドレッシング全然かかってへんで

 バターがしみ込んで真ん中がしっとりへこんでいる薄切りの食パンを、私はさも愛おしそうに食べている。休日の喫茶店のモーニング、ひとりでコーヒーをすする私をさしおいて、常連客たちや店員さんは目まぐるしく動き回る。漫才を日常に落とし込んだような会話をBGMに、湯気の立つコーヒーに砂糖をひとつ落とす。
 そして目の前にはこんがり焼き色のついたトーストがある。こんなことを言ってはなんだが、トーストなんて味は

もっとみる
日本で一番気まずい奴ら

日本で一番気まずい奴ら

 2016年公開の映画「日本で一番悪い奴ら」。主演を綾野剛が務めた、いわゆる警察の汚職、不祥事などをテーマとした映画だ。内容も北海道で実際に起きた「稲葉事件」を基に描かれており、この映画のタイトルも同事件を取り扱った書籍から取られている。

※以下、ネタバレ内容含みます。

 当時大学生だった私は家にいた。ある日、ふと父親が「映画見に行こ」と言い、私と弟2人を連れ立った。向かったのは隣の市にある

もっとみる
スマブラは持ってないやつのほうが上手い

スマブラは持ってないやつのほうが上手い

 そいつは運動から勉強までひととおり何でも器用にこなす、たまに鼻にかかる奴だった。私はというと運動はてんでダメで、特に球技は壊滅的、しかし走るのと泳ぐのだけは問題なかった。勉強は苦手ではなかったけど、中の上あたりをずっと徘徊していたと思う。
 そいつは明朗快活な奴で、いわゆるヤンキーとも仲が良く、対照的にオタク連中とも親和性の高い、水と油の両方を性質を持ったような奴だった。私はというと、ヤンキーに

もっとみる