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【連続小説11】愛せども

激しい罵り合いにになる言い合いや、時には取っ組み合いになってしまう喧嘩をしたこともあった。しかし、その後リサが落ち着くと、お互いに冷静に話し、仲直りをした。繰り返す度に、自分たちは深く結ばれていく気がした。逃げ出したくなる束縛や、こんなに苦しい想いを乗り越えたのだから、その分、幸せを手に入れることができるはずだ。

誰から聞いた話だっけ、映画で見たんだっけ。人生という缶からの中には、不幸と幸福の飴玉が同じ数だけ入っている。最終的には、実はみんな幸福度は同じになる。先に幸福を手に入れた人は、後で試練が待っているし、若い頃に苦労をした人は、そのあと幸せになれる。僕は後者だ。だから大丈夫。

リサが友だちと遊びに行くらしく、「ミチも来れば」と、いつものように実質こちらに決定権はない質問を投げかけてきて、僕も行くことになった。

改札を出ると、一度会ったことがあるリサの友だちシュンと、初めて会う男の子が待っていた。リサと共に、二人のところへ向かう。遠目から見ても、二人が不服そうなのが分かる。おそらく、僕が来ることを望んでいないのだろう。何で彼氏がくっついて来るんだよ、と言わんばかりの空気感。

コンビニで缶ビール(正確には発泡酒)を買い、何となく4人で乾杯する。
「乾杯って何でするんだろうね。それで酒が旨くなるわけでもないのに。会ったばっかで疲れてもないし、今日俺らが何かやりきったわけでもないし。ただ酒飲むだけだから、何もめでたくもないよね」
言われてみればそうだが、今までまったく思いもしなかった。初めて会ったタケは、変なことを言うやつだ。

僕とタケは映画や音楽の趣味が合い、意気投合し話がはずみ、自然にリサとシュンが二人で話す形になった。公園で地べたに座り、缶ビールが尽きたら最寄りのコンビニへ行く。そんなことを繰り返していたら、小一時間ほど経っただろうか。

リサが、服を捲ってシュンに腕を見せている。シュンは深刻そうな顔をして話に耳を傾け、うなずいている。タケは僕に一生懸命、最近見た韓国のヤクザ映画の話をしてくれるが、僕の耳には入っていない。

やっと一言、シュンの声が聞こえた。
「暴力はマジでないわ」
リサは僕との取っ組み合いでできた喧嘩を、自分が一方的に暴力を振るわれたように話したのだろう。僕も髪を掴まれたり、殴られたりしていたが、こちらに痣はできていない。さっきは自分の腕の痣を見せていたのだろう。

帰り際、4人で歩いているとき、シュンは僕と目を合わせなかった。目が合わないタイミングで、僕を蔑視の目で見ていた気がする。

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