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自選note

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自分のお気に入りの投稿・読み返したい投稿をまとめました。
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2022年6月の記事一覧

損なわれる美、失われる美

村上春樹著『ノルウェイの森』を読み返しながら感じたこと

私は美しいものが損なわれることが何より哀しい
美しいものが失われることが何より哀しい

でも
損なわれているから美しいと感じるのかもしれない
失われるからこそ美しいのかもしれない

美しいものは損なわれないでほしいのに
損なわれていることに美を見出してしまう
惹かれてしまう 
むしろ損なわれることを望んでしまう

自分の中のどうしようもない

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悪から救われるために悪を救う

昨夜、多崎つくる(以下略)の考察を読みながら眠りに落ちた。自分は考えもしなかった考察が展開されており、目から鱗が落ちた。なんとなく引っかかっていた違和感の、点と点が結びついていった。衝撃を受けた。ゾッとした。気味の悪さを覚えた。

特に心を抉ったのは、シロに関する考察。詳細は割愛するが、彼女の人生が自分の人生と重なり、封印していた記憶、過去の心的外傷が生々しく蘇った。理不尽な悪に蹂躙された怒りと憎

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手紙

自分が手紙に何を書いたか
いつも忘れちゃうけれど 

忘れてしまうのもまた情趣があるな 
と思って敢えて記録しないでおくことにした

書いた本人も忘れちゃって
世界でひとりだけが読める手紙
なんてめちゃめちゃ素敵じゃない

神さまの話

神さまの話

リルケ著『神さまの話』を読んだ。

リルケの書いたものは、みな繊細で優しく、神聖で清らかだ。私が知っている作家の中で、最も敬愛している作家だ。文字を追うごとに、次々に透明な感銘が湧き上がる。心が浄化されていく。読んでいて、思わず涙しそうになった。

特に惹かれたのは、「人間の真の姿を神様にお伝えするのが、子供たちや、絵を描いたり、詩を作ったりする人たち(要約)」と書かれた箇所だ。なぜ惹かれたのか、

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ひとこと声を発した瞬間
現実世界に着地する感覚

ずっと浮遊していたいのに
地面に引き摺り下ろされるような

「パクリ」と「オマージュ」や「リスペクト」などの違いについて

本題はタイトルの通り。しかし体験の記述が大半を占めるので、手っ取り早く結論のみ知りたい人は、目次の「『パクリ』と『オマージュやリスペクト』などの違い」の項目から飛んでほしい。

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こころ

こころ

こころは
いろいろな色を映す泉

晴れた昼空のあおいろを映すときもあれば
夕焼けのももいろを映すときもある

そうして いろいろな色が映り込む透明な水で
いつも胸の中は満たされている

ところが 

夜の闇に塗りつぶされると
泉は真っ黒になってしまう

泉にたくさんの泥が投げ込まれると
水はたちまち濁ってしまう

泉が土砂で埋め立てられると
水は湧かなくなってしまう

でも 

再び光が差し込めば

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印象深い言葉。

「わたくしの胸のなかには、決して退屈することのない三つの気持ちがあります。悲しい気持ち、慕わしい気持ち、それにありがたいと思う気持ち。」

-『モンテ・クリスト伯』エデ より

言葉拾い

言葉拾い

言葉は意識の流れを堰き止める
石のようなもので
私はそれを拾い上げるように書く

石を拾い上げると再び意識は流れ出し
また別の石に堰き止められる

石はさまざまな色やかたちを持っていて
水面に顔を出している石もあれば
水面下に眠っている石もある

詩を書くことはまるで
流れる意識の底に潜り
水面下に沈んでいる石を拾うような営みだ

手探りで言葉を探し
見つかることもあれば 見つからないこともある

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ガー子の最期

ガー子の最期

忘れられないアヒル、ガー子との思い出を、追悼の意味を込めて書く。

出会い小学生の時、祖父に連れられて行ったホームセンターで、ヒヨコのような可愛い生き物が箱の中でひしめき合ってピヨピヨと鳴いているのを見かけた。見るとアヒルの雛だった。どうしても飼いたいと、祖父に頼んで買ってもらった。

ガー子との暮らしの始まりその日から、アヒルのいる暮らしが始まった。ピーピー鳴くので、ピー子と名付けた。アヒルの飼

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