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自選note

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自分のお気に入りの投稿・読み返したい投稿をまとめました。
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記事一覧

遠くの人を想う

小さきものを観るということが減ってきてしまったな、と思う。もっと外に目を向けていきたい。

いま、恋人が海外旅行に行っている。恋人が遠くへ行っているときが、わりと好きだ。寂しさももちろんあるが、遠くの人を想うのは、とても美しいことだと思う。当たり前ではない相手の存在のありがたみ、あたたかさ、尊さを思い知ることができる大事な時間でもある。また、ひとりになることで、孤独に帰ってくることができる。自分自

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恋衣

己が世世恋衣打つ霙かな

 
以下、参考作品

愛という、透明なもの

その人と過ごした時間の中で堆積した
怒りとか悲しみとか好きとか嫌いとか、
ぐちゃぐちゃに混ざり合った色々な感情を
濾過して残った透明なもの、
これはたしかに愛だと思う。

ご自愛ください

ご自愛ください、という言葉が好きだ。
忘れかけていた自愛の大切さを、ふと思い出させてくれる。
ご自愛しましょう。ご自愛ください。

友人と、山の方にあるヨーロッパ風のカフェに行った。涼しかったので、テラス席に座った。テラス席からは田園風景が見渡せる。やや風が強かった。風が一層強くなったところで、解散した。

先月誕生日だったので、遅めの誕生日プレゼントをもらった。お手紙も添えられていた。とても嬉し

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秋の夜の空気

人々の細かい涙の粒でできた
秋の夜の空気のなかを、深海魚のように泳ぐ

あなたになら裏切られてもいい、そう思って私を選んでくれていた人を、裏切りたくなかった

私とおなじ色をした人を、傷つけたくなかった

後悔でもない、恨みでもない、未練でもない、憎しみでもない、諦めでもない、嘆きでもない、純度100%の透明なかなしみで、秋の夜の空気はつくられている。

首すじをちいさな風があたためる ここにも夏がしのびこんでる

記憶の墓場

思い出になった栞を宝箱に詰めて蓋した 手紙とともに

しるし

歌集よみお気に入りの詩鉛筆でしるし
ー、つけずに2回唱える

笹井宏之さんの歌集を買いました。
爽やかで夏にぴったりだと思いました。

短歌『桜』

桜より寿命の長い恋だったと思えばまた生きてゆけると

静電気

離れたほうが大きく鮮明に見えるそれに、
気づいていないわけではなかったけれど、
ずっと違うと否定していたかったのに、
静電気の小さな痛みと衝撃で、
気づかされてしまった、
はっきりと。

異なる極同士がぶつかり合い、
かたちなきものが確かな輪郭を持ち、
その疼きの輪郭を、
抜毛症のひとが毛を抜くみたいに、
繰り返し繰り返しなぞる。
呻きながら、震えながら。

短詩3篇

地面に散った桜の花びらを踏みたくないので、
お花見には行かないことにしているのです。

切れかけの蛍光灯みたいに
瞬きを繰り返す
この瞳もそろそろ
交換すべき時が来たのでしょう

未知に満ちた道を彷徨した帰り途、
遠くでサイレンが鳴り響く。
あの人は結局
自分の約束事を果たせたのだろうか

続・別れの詩

ぼくは一緒に孤独を抜け出してくれる人じゃなくて、一緒に孤独でいてくれる人が欲しいのだと思う。

きみと別れて一層美しく響くようになったスピッツの『冷たい頬』と、きみが残した手帳の独白が教えてくれた。

ぼくはひとりになりたいから、あなたも一緒にひとりになって。

そう思いながら、海で生まれたいきものと山で生まれたいきものたちが一堂に会する墓場を食べた。

別れたことで、我々の関係は完全なものになっ

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10年前のきみへ

10年前のきみに、やっと追いついた気がする。

きのうまでのひと欠片をちぎって差し出すのが、愛かもしれないね。

まだまだぼくの中のきみに学ぶことは多そうだ。
いつか同じ位置で同じ深さで同じものについて語れたらと、死ぬまで憧れ続けるのかもしれない。

このまま一生、ぼくに恥をかかせてください。

つめたい電子の海の向こうに
あたたかい血の通った人間がいる
ということを忘れてはならない

自戒