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■お笑い

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湖のさざなみ~坂本龍一さん追悼

湖のさざなみ~坂本龍一さん追悼

坂本龍一さんが亡くなってしまった。坂本さんの作った音楽には子供の頃から大いに影響を受け、親しむようになった。思い入れもあるから、各作品についてゆっくり振りかえる時間を持ちたいのだけれど、今日はその「思い入れ」について考えてみる。

実は、坂本さんの音楽がきっかけで、学生時代にとある大きな選択をした。その選択をしなかったら出会わなかった人や物も多いのではないかと思う。「坂本さんの音楽があったからこそ

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推し友とシスターフッド

推し友とシスターフッド

知っているのは、たぶん女性だろうということだけ。本名を知らない。年齢も、出身地も、職業も、これまでの経歴も、家族構成も、いまどこに住んでいるかも知らない。もちろん顔さえもだ。

友人知人なら、名前も、だいたいの年齢も、顔だって知っていて当たり前だ。けれど彼女たちは違う。知っている情報は限りなく少ない。だとしてもわたしたちはつながりを感じる。同じ「推し」を応援しているというただその一点において…

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推し短歌

推し短歌

まばゆさにまなこ閉じれば見えてくる六等星の頃のあなたが/優木ごまヲ

おめでとう、よかったね。ひたすら前を向いて突き進む、光に包まれたあなたの姿。でも時々、今の自分にはまぶしすぎて。少しだけ時間をさかのぼれば、まだ荒削りだった頃のあなたと会える。そうして安心してしまうことに後ろめたさがないと言ったら嘘になるけれど、だからこそまた応援するのだろう。

推しの年収を知っても応援できますか

推しの年収を知っても応援できますか

あなたは推しの年収を知っていますか。

もし、何らかの経緯で知ることができたとして、

それがいわゆる「高所得」に該当するほどのものだったとしても、

今まで通り、応援し続けられますか。

「推しの年収を知っても推し続ける人が偉くて、そうじゃない人は偉くない」という訳ではないことを確認してから、始めよう。

質問に対するスタンスは様々だろう。

そもそも推しの年収についてなど考えたことなどないし、

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夫への怒りは「男性全般への怒り」なのか(私たちの場合)

夫への怒りは「男性全般への怒り」なのか(私たちの場合)

私も怒るべきなのだろうか、ということを、昨日ふと考えたのだった。

情報発信、収集のために使っているツイッターのタイムライン(フォローしているアカウントから流れてくるツイートの一群)を眺めていると、かなりの頻度で、何かしらに腹を立てている人たちの呟きが流れてくる。

呟きには相当数のいいねやリツイートが集まり、かなり話題になっているらしいことがうかがい知れる。

例え趣味別にアカウントを使い分けて

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笑われながら笑う

笑われながら笑う

「女の人は歴史に興味なんかないの!」

先日、テレビ番組の見逃し配信サービスで、関西圏のみで放送されているお笑い番組の旅番組風ロケVTRシーンを見ていたら、こんな台詞が聞こえてきた。

画面には、主に関西で活躍するアラフィフ世代の女性お笑い芸人さんの姿があった。

面倒見の良さそうな、いわゆる「大阪のおばちゃん」的な包容力と、歯に衣着せぬ発言、豪快な笑い声。

私が好きな若手芸人さんを可愛がってく

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映画「世界で一番美しい少年」について(引き続きワーキャーを考える)

映画「世界で一番美しい少年」について(引き続きワーキャーを考える)

※この記事は映画「ベニスに死す」および「世界で一番美しい少年」の若干のネタバレを含みます。

つい先日、2021年公開のスウェーデン・ドキュメンタリー映画「世界で一番美しい少年」(クリスティーナ・リンドストロム、クリスティアン・ペトリ両監督)を見てきた。

ドキュメンタリーの主人公はビョルン・アンドレセン。

2022年現在、67歳。

十代の頃、1971年公開のイタリア・フランス映画「ベニスに死

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ワーキャーという説得力~「エビシーくん」デビューの考察を通じて

ワーキャーという説得力~「エビシーくん」デビューの考察を通じて

先日このnoteで、お笑いを語る文脈において多義語と化している「ワーキャー」という言葉について書いた。

その後、そもそも芸人さん本人がどのようなニュアンスで「ワーキャー」を使っているのか、その変遷のようなものも、もし掴めるのならば知りたいと思うようになり、ニュースサイトで「ワーキャー」という言葉で検索してヒットした記事を読むなどしている。

ヒットした記事には様々な芸人さんの名前が見えるが、より

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多義語としての「ワーキャー」と向き合うために

多義語としての「ワーキャー」と向き合うために

ワーキャー。

女性で、お笑いの世界に足を踏み入れたことのある方なら、誰でも一度はぶつかるのが「ワーキャー」の壁なのではないだろうか。

(とはいえ「男性は以下を読むな」「絶対的にあなたたちが悪い」というスタンスを取るつもりはないことを初めに明記しておきたい。)

かく言う私もそんな女性お笑いファンの一人だ。

一年と少し前、お笑い好きの家族が見始めたYouTubeチャンネルがをきっかけにとある男

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真に受けるということ

真に受けるということ

子供の頃、漫才師という仕事を初めて知ったのは「バラエティー生活笑百科」を通してだった。

「生活笑百科」はNHKの法律バラエティー番組だ。
制作はNHK大阪放送局。
1985年の開始以来現在も放送中で、その歴史は40年近くにもなる。
2021年に亡くなった落語家の笑福亭仁鶴が長年司会者(「相談室長」と呼ばれる)を勤めていた。
「四角い仁鶴がまぁるくおさめまっせ」という台詞をご存じの方も多いのではな

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推しは「推し」つけるためのものではない

推しは「推し」つけるためのものではない

先日、初めて推し(贔屓)のお笑い芸人を生で見たという記事を書いた。

記事の中で「生で推しを見たはずなのに、全くその実感が残らなかった」と書いた。

何故そんなことが起こったのか。
実は、書きながらも理由について思い当たる節はあったのだが、触れることに躊躇いがあった。

日を追うにつれ整理がついてきたので、今回記事にしてみる。

生で推しを見たはずなのに、全くその実感が残らなかった理由。
それは、

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地方から上京してお笑いライブへ初参戦する時に覚えておいて損はないかもしれないこと

地方から上京してお笑いライブへ初参戦する時に覚えておいて損はないかもしれないこと

先日、久しぶりに上京し、お笑いの推しの漫才を初めて生で見ることができた。

私は元々東京に住んでいたのだけど(という枕詞は偉そうなのかなと最近少し思う)、今は羽田から飛行機で一時間くらいのところにある海沿いの地方都市で暮らしている。

生でお笑いに触れられる機会は少ないし、都市部にあるお笑いの劇場へ足を運ぶとなれば、それなりの額の交通費が必要だ。

だから、限られた貴重なチャンスはできれば不意にし

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初めて生で推しを見た後に感じていること

初めて生で推しを見た後に感じていること

先日遂にお笑いの推しの漫才を生で見ることができた。

地方移住直前にも推しを見るチャンスは何度かあったのだが、家族が体調を崩したり、感染によって引っ越しできなくなったらどうしようという恐れがあったりで、結局果たせなかったのだった。

地方移住後も、隣県で推しの地方公演があったのだけれど、これも感染症流行再燃によって諦めざるを得ず、涙を飲むこととなった。

だから今回、感染症が落ち着いたタイミング

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「推し」に「様」づけの謎

「推し」に「様」づけの謎

あなたには「推し」がいるだろうか。
「推し」のことは、何と呼んでいるだろうか。

~君?
~ちゃん?
親しみを持って、あえて呼び捨て?
あるいは、名前の略称だろうか。

「推し」の呼び方をめぐり、とても疑問に思っていることがある。
そんな疑問を抱くのは、もしかしたら自分だけなのかもしれないが、思い切って文章にしてみることにした。

私には、好きなドラマと、しきりに追いかけている芸能人の、二つの分野

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