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「推し」に「様」づけの謎

あなたには「推し」がいるだろうか。
「推し」のことは、何と呼んでいるだろうか。

~君?
~ちゃん?
親しみを持って、あえて呼び捨て?
あるいは、名前の略称だろうか。

「推し」の呼び方をめぐり、とても疑問に思っていることがある。
そんな疑問を抱くのは、もしかしたら自分だけなのかもしれないが、思い切って文章にしてみることにした。

私には、好きなドラマと、しきりに追いかけている芸能人の、二つの分野の推しがいる。
どちらも最近メディアへの露出が多く、嬉しい限りだ。
ある一定数のファンが確実についていることがうかがえる。

しかし、これらの推しのメディア露出に際し、共通して、一ファンとして拭い去れない違和感を覚える部分がある。
それは、ドラマの主人公が、そして、その芸能人のコンビ名が、ファンから「様」づけで呼ばれている!としきりに取り沙汰されることだ。

ドラマに関しては、もう過去のことになるが、数年前、ドラマの公式ツイッターアカウント上でその主人公が「様」を付けて呼ばれ始めた段階から、私の身近なファンの間においては「何かおかしい」という疑問の声が上がり始めていた。
このドラマは20年近く続くご長寿シリーズなのだが、そもそも、これまでのドラマの歴史において、主人公が「様」づけで呼ばれた機会など、ドラマ内においても、ファンの間においても、ついぞなかったことのはずなのだ。

にも関わらず、公式アカウントでは「様」づけが続けられ、そればかりか、公式アカウントが「いちファン」を名乗って、絵文字、顔文字や叫び声などの浮かれ切ったツイートや、放送直後のネタバレツイートを繰り返したことから、ファンから多くの批判が集まった。
現在、この公式アカウントはすっかり落ち着きを取り戻し、「普通」のツイートをしているように見える。

芸能人に関しては、ファンになった当初、タイムラインに流れてきたツイートを見て、彼らのコンビ名に「様」をつけて呼ぶのがファンの間での共通認識なのだと思い、私もそうしていた。

しかし時間が経つにつれ、彼らに「様」をつけて呼ぶファンはあまりおらず、むしろ、コンビ名を省略したり、あえて呼び捨てしたりするファンの方が多いことに気付き、「様」づけはしないようになった。

むしろ、彼らがファンの間で「様」づけで呼ばれていると強調するのは、テレビ番組や、動画配信に限られるように思われる。
「~様の〇〇」という単発の看板番組まで放送されてしまった。
(とても面白い番組だったのであまり文句は言えないが)

以上、ドラマ、芸能人、二つの「様」づけのケースを経験した私は、ある一つの仮説を持っている。
それは、ファンではなく、むしろ放送局側、事務所側、メディア側が、作品や芸能人に「様」づけし、あるいはファンのごく一部の動きを拾い上げ、「ファンから様づけで呼ばれている」と強調することで、「売れている」演出に色を加えようとしているのではないか、ということだ。
芸能人の事例で、ファンになりたての頃の私が「みんな様づけしているんだ」と思い込んだように、新規ファンがドラマの主人公なり、コンビなりを「様」づけで呼び始めれば、あえて作り出したはずの「風潮」は「事実」に変わる。

「様」づけされた人物として有名な人物というと、あの「ヨン様」を思い起こす。
ヨン様ブームがあったのは2000年代初頭だが、放送局や芸能事務所のお偉いさんに「このドラマ、この芸能人、売れてますよ」と下っ端が説明するには、誰でも知っているヨン様の事例を念頭に置きながら「ファンから様づけで呼ばれるほど売れている」と説明することが、一番手っ取り早いのではないだろうか。

まあでもこれは証拠のない一仮説にすぎない。

ただ、ファンの現状にそぐわないものを、あるいはファンの中のごく一部で起きていることを、まるでファンの間の共通認識のように語られるのは、あまり心地の良いことではない。
これだけは強調しておきたいと思う。

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