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くろ・しろ・みどり③
コロッケを食べた夜は、なかなか眠れない。消化されずに残った油と炭水化物が寝返りのたびに波打って、何か悪いことが起きそうな気がしてくるからだ。ソファに寝そべった環さんのにぎやかな寝息を確認すると、ハルはそそくさと部屋に駆け込んだ。最新式から10年は遅れているであろうノートパソコンを開くと、指が勝手に動画サイトのURLを打ち込む。たっぷり2分ほど読み込みバーを眺めているうちに、液晶画面は急に刺すように
もっとみるくろ・しろ・みどり②
環さんが帰って来たのは20時を回るころだった。鍵を閉めるのもそこそこに、今にもちぎれそうなビニール袋を二つ、ハルに乱暴に手渡した。そのまま「失礼」とハルを押しのけて廊下をずんずん進む。片方は長ネギが飛び出し、もう片方からは甘い揚げ油のにおいが立ち上ってくる。
「ごめん遅くなって。これ、お詫び」
環さんは首だけ振り返って、揚げ油のほうを指さす。牛乳パックと卵とその他諸々の上に、油のしみた茶色い紙