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仕事への向き合い方を考える ジョブ・クラフティングとは?

「これからは『自らクラフトする』感覚が大切ということか」

週末なので、少し日々の仕事から距離をおいて、「仕事観」について考えていました。先日、キャリア形成について学ぶ機会がありました。起業家でなかったとしても、組織の中で起業家のようなマインドセットと行動で生きていくことが今の時代は求められると言います。

その際、仕事と向き合う中で持っておくべき考え方として「ジョブ・クラフティング」という概念があります。

この概念はどういったものなのか、これから生きていく上で、どう活かしていくべきかをまとめます。

「当事者意識」の持ち方

仕事に向き合う上でよりポジティブに目の前の仕事に向き合うためには「当事者意識」が欠かせません。当事者意識とは「自分がその案件に関係している」と自分ゴトとして捉え、積極的に関わっていく意識のことですね。

当事者意識が高い人材は主体的に考え、行動し、最後まで責任感をもって業務を遂行します。こうした意識を持つメンバーで構成されたチームは非常に生産性が高いです。

ではどうすれば「当事者意識」が芽生えるのでしょうか。ヒントになる実験があります。ハーバード大学の社会心理学者のエレン・ランガー氏が行なった実験があります。

心理効果「コントロールの錯覚」

宝くじを使った2つのグループに分けた実験です。

Aグループ :ランダムな抽選番号の宝くじを渡す。
Bグループ :自分の好きな番号を宝くじに書き込む。

両方のグループに「抽選をする前に宝くじの買戻しをします」と伝えます。その時にいくらなら譲ってもらえるかと質問。本来であれば、抽選前の宝くじは当選自体は運で決まるため、両グループに差は生まれないはずです。

結果はBグループの方が宝くじに高い値段をつけました。自分で番号を記入した人への買い取り額の方が、何と5倍以上多かったそうです。その時のマインドは「自分で選んだ番号はきっと当たる。だから手放したくない。高値で買い取って欲しい」という感じでしょう。

「自分で決めた数字」に価値があると感じてしまう背景には『コントロールの錯覚』と呼ばれる心理法則が働いています。人は自分で物事を選択した場合には、自分で選択しなかった場合よりも、価値を高く感じ、自分に有利な結果であると考えてしまいます。

これを「仕事」に置き換えれば、自分の意志で選択したタスクや業務には、自分自身の意志で責任をもって推進しようというパワーにつながります。こうした意識を持ったメンバーで仕事の臨めるのが理想的なチームと言えそうです。

自分の意志を反映する余地を持つことが重要となります。

ジョブ・クラフティングという考え方

これまでは「会社や上司から降りてきた仕事に従う」という仕事観が一般的でした。そこに異議を唱えたのがジョブ・クラフティングという考え方。雇う側、雇われる側という線引きをするのではなく、たとえ雇われる側でも主体性を重視し、仕事を生き生きとしたやりがいのあるものに変えていくことを目指す考え方のことです。

「指示されたことをこなす」という仕事は創造性が低く、誰しも退屈に感じてしまうものです。「上司の指示」「会社からの要請」と思うと、仕事はいきなり退屈な作業に見えてしまいます。

個人のモチベーションは下がり、自分が退屈になるだけでなく個人のパフォーマンスの低下が組織全体の生産性を下げかねません。

そこで役立つのが、ジョブ・クラフティングという考え方です。この考え方を理解するのに役立つのがピーター・ドラッカーによる「3人の石工職人」の話です。

あるところに3人の石工がいました。
この3人に「あなたは何をしているのか?」という質問を尋ねました。
1人目の石工「親方の命令でレンガを積んでいる」
2人目の石工「レンガを積んで塀を造っている」
3人目の石工「人々がお祈りをするための大聖堂を造っている」
最も生き生きとした様子で仕事をしている3人目の石工でした。

レンガを積むという作業は3人とも同じですが、「命令に沿って作業している」と答えるのと、「大聖堂を造っている」と答えるのでは仕事に向かう意識がまるで違います。大聖堂と答えた石工は前向きに、そしてより精度高く仕事をすることが想像できます。

3人の石工の言葉は、それぞれ「Job」「Career」「Calling」と呼ばれる3種類の仕事観に対応していると言えます。これらは「仕事志向性」という考え方に基づく分類です。

「Job」の仕事観
「仕事は生活のためにやむを得ずにするもの」という考え方。先の石工の話では1人目の石工の考え方ですね。仕事は報酬を得るための手段と捉えているので、仕事に楽しさ、意義に対して関心が弱いです。アウトプットの質は必要最低限になりがちです。言われたことだけやる、という感じですね。

「Career」の仕事観
「仕事は自分のキャリアをアップ、成長のためにやるもの」という考え方。2番目の石工の考え方が該当します。Job型と比べ、能動的に働いていると考えられます。仕事を通じて得られる社会的地位や、自分の成長を重視しています。ただ、仕事そのものを楽しんでいるわけではありません。

「Calling」の仕事観
「今の仕事が自分の天職だ」と考え、仕事の内容そのものを愛する考え方。先の石工では3人目の「大聖堂を造っている」と答えた石工が該当します。仕事の「意義」を原動力としており、仕事を自分自身のアイデンティティとつなげて理解しています。働く目的は仕事の内容そのものにあるので、常に充実感をもって日々を過ごしています。モチベーション、パフォーマンスいずれも高く、3者の中では最も生産性高く仕事を進めていきます。

ジョブ・クラフティングでは、このCalling型のモチベーションに近づくことを目指します。

ジョブ・クラフティングのポイント

ジョブ・クラフティングでは、以下の3つのアプローチから意識と態度の変容を促せます。

1. 仕事の捉え方
1つ目は「考え方」の改善です。「3人の石工」の話で言うと、「レンガを積み上げる退屈な作業」と捉えるのではなく、積極的に「仕事の意義」を見出すことで、モチベーションは高められます。仮に事務作業でも、その仕事で誰を笑顔にするのか、その小さな仕事が会社を陰で支えているというマインドを持つことで、その業務に向かう姿勢は変わります。

Mr.Childrenの「彩り」という歌にこんな歌詞があります。

なんてことのない作業が この世界を回り回って
何処の誰かも知らない人の笑い声を作ってゆく
そんな些細な生き甲斐が 日常に彩りを加える
モノクロの僕の毎日に 増やしていく 水色 オレンジ

自分が取り組んでいる仕事は他の誰かの仕事の歯車とつながっています。その先にある大きな歯車を想像しながら目の前の歯車と向き合う。想像するのは自由です。より大きな歯車をイメージして、自分の仕事が誰かを幸せにする。そんなポジティブなマインドセットを持つことが大切です。


2. 仕事の取り組み方
2つ目は仕事の「仕方」の改善です。同じ手法で取り組んでいると誰でも飽きてしまい、モチベーションを維持するのは困難です。時には新しい要素を仕事に取り組むことも大切です。

その時に、自分で考えたやり方を加えたり、新しい手法や技術を取り入れたりしながら仕事自体の鮮度を高めるのが有効です。これは仕事の中に何らかのチャレンジ要素を入れるということです。そうすることで、マンネリが打破され、やりがいを生み出せる可能性があります。そこに自分のアイデアや意見が反映されていると先のエレン・ランガーの実験の学びの様に、当事者意識が芽生えます。こうした「工夫を加える」余地を持つことがポイントです。


3. 誰かの役に立つ感覚
3つ目は「人間関係」からのアプローチです。仕事は一人ではできません。必ず誰かとの「関係」の中で成り立っています。イキイキと仕事をするためには「誰かの役に立つ」という感覚を自分の力に変えることも重要です。

日々の仕事の中で創造的に活動するには「アイデアを伝える相手がいる」ことが必要です。自分を頼りにしてくれる人や認めてくれる人が職場にいることはモチベーションアップにつながります。「役に立ちたい」「喜んでほしい」といった利他的な意識が積極的な行動を生みます。

特にこのコロナの環境ではテレワークで仕事をされている人も多くなってきています。気軽なコミュニケーションがしにくくなってきている環境ですので、積極的に自分から関りを持って行くアクティブな行動を心掛けたいですね。

まとめ

より前向きに、楽しみながら仕事に取り組むためには「当事者意識」をいかに高めるかが大切です。その時に、大切なのは「自分の考えを反映する」ということです。

3人の石工職人の比較では3人目の「大聖堂を造る」というマインドで臨む「Calling」の仕事観が理想ですね。この仕事観を持てるように自分の意識と行動を変えていくことがジョブ・クラフティングという考え方です。

自分で仕事の意味や意義を考え、その意義のために積極的に行動する。そんな主体的にポジティブな行動が求められます。仕事自体の捉え方、取り組み方、人のために役立つ、といった3要素の意識を改善することで、Callingの仕事観に近づくことができます。

私も改めて「自分は何をしているのか?」という石工職人への問いを自分にも問いたいと思います。そして、より大きな意義(大儀)を描きたいですね。

この週末に、少し立ち止まって、自分なりの仕事観を振り返ってみてはいかがでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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