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外資系投資銀行で17年、プライベートエクイティで2年。今の仕事はベンチャー投資をしてい…

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外資系投資銀行で17年、プライベートエクイティで2年。今の仕事はベンチャー投資をしている会社でCFO

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他者との競争から、社会との共創へ

ルネ・ジラールというフランスの文芸批評家によると、人間の活動はミメーシス(模倣)の理論によって説明できるとのことです。幼児が母語を獲得するところに始まり、人間の…

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4年前
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Human kind(親切な人類)

プラシーボ効果というのはよく知られていると思うのですが、ノーシーボ効果というものがあるのはご存知でしょうか。いずれも思い込みから現実に影響する作用のことを指して…

やの
3年前
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ドキュメント:ファスティング記録(後半)

3日目 4時半:起床。 6時:昨日と比べると、断然、不安が少ない。ニューノーマルという感じ。マスクの中で嗅ぐ自分の息が臭い。普段は改札でてから臭ってくる飲食店の匂…

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3年前
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ドキュメント:ファスティング記録(中盤)

2日目 3時半:目が覚める。さっさと寝たからか。いつもの洗濯かごを持ち上げるのが、ちょっと普段より重く感じる。気がする。 6時: ・卓上のバナナに鼻を押し付けて嗅…

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3年前
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ドキュメント:ファスティング記録(前半)

ファスティングを主催されている方が、 腸を休ませること=ブラック企業で酷使されている労働者を休ませること と面白いアナロジーで話されていた。それでいうと、よく噛…

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3年前
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「当事者研究」から考える「自分らしさ」

昨今、「自分らしさ」を見つけることが大事だというのがよく言われるように思うのですが、いざやろうと思うと、これがなかなかに難しい。以前に友人に聞いた話ですが、そう…

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3年前
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数字を飼いならす

新年に入り、今年の抱負として何かしらの数値目標を設定される方も多くいるのではないかと思います。 先日、たまたま書店で「The Number Bias」という本(未邦訳)を見つ…

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3年前
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私はどんな世界に住んでいるのか

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」という本で、(晴眼者が取り込んでいる情報のうち8〜9割を占めると言われる視覚情報が入ってきていない)視覚障害者の方々に対…

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3年前
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自己表現と葛藤

ハルキストの友人が、村上春樹の作品はデタッチメント とコミットメントのテーマが通底しているんだ、と教えてくれました。河合隼雄との対談で村上春樹本人がそのフレーム…

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3年前
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「ラッキー」ってどういうことだろう。

会社の同僚がホーキング博士の本を読み始めていて、内容を一部シェアしてくれたんですが、良いセオリーとは 1。過去の多くの出来事を、少ない変数で説明できて 2。将来…

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4年前
9

思考と行動の速度の違い

近所でやっていた中古書セールでたまたま見つけたAdaptive Marketsという本をちんたら読んでいるのですが、Financial Evolution at the Speed of Thoughtという興味深い副…

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4年前
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マネーが表しているもの(続々)

前職の元同僚たちとZoom飲みする機会があったので、この話もしてみました。話しているうちに、ちょっと違う角度でもう少し整理進められました。 前回、「(業務の標準化が…

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4年前
9

マネーが表しているもの(続き)

前編に対してフィードバックをいくつかもらいました。 質問:「で、なんで外資系投資銀行の給料は下がらないの?」「いや、そりゃ安くても誰でもやりたがる仕事じゃないか…

やの
4年前
9

マネーが表しているもの

先日、来年から某外資系投資銀行で働く予定という学生さんと話す機会がありました。「年収の高さは、社会的価値を反映しているのだろうか」という素朴な問いと考えるきっか…

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4年前
16
他者との競争から、社会との共創へ

他者との競争から、社会との共創へ

ルネ・ジラールというフランスの文芸批評家によると、人間の活動はミメーシス(模倣)の理論によって説明できるとのことです。幼児が母語を獲得するところに始まり、人間の文化的活動には模倣が通底している。それは人間の特徴であり、効果的な学習方法でもある。ただ、それが行き過ぎると、世界は嫉妬で満ち溢れ、不毛な競争に明け暮れる。

ジラールを信奉するピーター・ティールの説明が分かりやすいのですが、(米国の例えで

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Human kind(親切な人類)

Human kind(親切な人類)

プラシーボ効果というのはよく知られていると思うのですが、ノーシーボ効果というものがあるのはご存知でしょうか。いずれも思い込みから現実に影響する作用のことを指しており、例えば、偽薬を「これは効果がある」と信じて服用すると実際に心身にプラスの影響が与えるのがプラシーボ効果。逆に、「これは副作用がある」と信じて服用すると実際に心身にマイナスの影響が出てくるのがノーシーボ効果にになります。

Humank

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ドキュメント:ファスティング記録(後半)

ドキュメント:ファスティング記録(後半)

3日目

4時半:起床。

6時:昨日と比べると、断然、不安が少ない。ニューノーマルという感じ。マスクの中で嗅ぐ自分の息が臭い。普段は改札でてから臭ってくる飲食店の匂いが、ホームまで届く。

7時:通常どおりのジム1時間。縄跳びをしていて、自分の体の軽さを実感する。ただ、スタミナが持たない。

9時:視覚的に明らかにわかるレベルで痩せてきた。

17時:まったく空腹感がない。明日から食べられると思

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ドキュメント:ファスティング記録(中盤)

ドキュメント:ファスティング記録(中盤)

2日目

3時半:目が覚める。さっさと寝たからか。いつもの洗濯かごを持ち上げるのが、ちょっと普段より重く感じる。気がする。

6時:

・卓上のバナナに鼻を押し付けて嗅いでる。複数回。たしかに、動物化している自分がいる

・塩で歯磨きしてみる。めちゃめちゃオイシイ

・いつもの駅までの徒歩、いつもよりゆっくり歩く。食べてないのでエネルギー少ないのはもちろんあるのだが、まだあと2日食べないので、と予

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ドキュメント:ファスティング記録(前半)

ドキュメント:ファスティング記録(前半)

ファスティングを主催されている方が、

腸を休ませること=ブラック企業で酷使されている労働者を休ませること

と面白いアナロジーで話されていた。それでいうと、よく噛まずに食べるとは、自ら仕事をろくにせずに下に仕事を丸投げにしているダメ経営者のようなものだ、と。

「分解の哲学」という本が面白い。

人々は毎日食べて生きているではないかという、という反論はしかし現状にはあてはまらない。食べる客体では

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「当事者研究」から考える「自分らしさ」

「当事者研究」から考える「自分らしさ」

昨今、「自分らしさ」を見つけることが大事だというのがよく言われるように思うのですが、いざやろうと思うと、これがなかなかに難しい。以前に友人に聞いた話ですが、そういう社会的要請が新たなプレッシャーとなって、それに押しつぶされる(鬱になったり、最悪、自殺したり)という人たちもいるらしい(「自分らしさ」が見つからない自分はつまらない、ダメな人間なんだ、、)。

そうなってしまっては、本来は各人の幸せを願

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数字を飼いならす

数字を飼いならす

新年に入り、今年の抱負として何かしらの数値目標を設定される方も多くいるのではないかと思います。

先日、たまたま書店で「The Number Bias」という本(未邦訳)を見つけました。コンパクトにまとまっていて参考になったので、自分の頭の整理を兼ねて、私なりに受け取った内容を一部紹介させていただきます。

「言葉」と「数字」はいずれもパワフルなものだと感じますが、解釈の余地が多い言葉に比べると、

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私はどんな世界に住んでいるのか

私はどんな世界に住んでいるのか

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」という本で、(晴眼者が取り込んでいる情報のうち8〜9割を占めると言われる視覚情報が入ってきていない)視覚障害者の方々に対してインタビューを重ねてリサーチし、晴眼者である筆者自身が想像力を働かせて、(晴眼者である読者にとって)新しい世界を言葉、時には絵を使って、紹介してくれています。

詳しくはぜひ本書を読んでいただければと思いますが、違う世界を知りたいとい

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自己表現と葛藤

自己表現と葛藤

ハルキストの友人が、村上春樹の作品はデタッチメント とコミットメントのテーマが通底しているんだ、と教えてくれました。河合隼雄との対談で村上春樹本人がそのフレームワークで回想していますが、初期の作品はデタッチメント に重心を置いているのだが、村上春樹本人の歩みと重なる形で、その後の作品は社会との接続を試みるコミットメントに重心がシフトしていく。

デタッチメント→自分を他者から切り離すことで、自分の

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「ラッキー」ってどういうことだろう。

「ラッキー」ってどういうことだろう。

会社の同僚がホーキング博士の本を読み始めていて、内容を一部シェアしてくれたんですが、良いセオリーとは

1。過去の多くの出来事を、少ない変数で説明できて

2。将来の出来事を、決定的に予測できる

という要件を満たしているそうです(さらには、セオリーというのはあくまでも私たちの心の中に存在しているもので、それ以上の何物でもない、らしい。深い)。

自分の行動原理に思いを巡らせても、なかなか考えさせ

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思考と行動の速度の違い

思考と行動の速度の違い

近所でやっていた中古書セールでたまたま見つけたAdaptive Marketsという本をちんたら読んでいるのですが、Financial Evolution at the Speed of Thoughtという興味深い副題がついています。

金融マーケットの動きは毎日秒単位で変化していて、その変化のスピードが(病みつきになるくらい)エキサイティングです。速いスピードは人を疲弊する側面もあると思います

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マネーが表しているもの(続々)

マネーが表しているもの(続々)

前職の元同僚たちとZoom飲みする機会があったので、この話もしてみました。話しているうちに、ちょっと違う角度でもう少し整理進められました。

前回、「(業務の標準化が得意な)日本の商業銀行がDisruptできるマーケットなんじゃないか」っていう話を書きました。で、多分その一面はある一方で、「いや、やっぱり米系証券の●さんが言うのと、日系証券の●さんが言うのとは違うよね」って言うクライアントからのレ

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マネーが表しているもの(続き)

マネーが表しているもの(続き)

前編に対してフィードバックをいくつかもらいました。

質問:「で、なんで外資系投資銀行の給料は下がらないの?」「いや、そりゃ安くても誰でもやりたがる仕事じゃないから(給料下がったら、かなりの人がやめるんじゃないだろうか)」って即答だったんですが、「じゃあ景気悪くなったら、もっと低い給料でもやりますー、っていう人がたくさん出てくるの?」と聞かれ。確かに。

1。会社同士の競争が激しくて、引き抜き合戦

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マネーが表しているもの

マネーが表しているもの

先日、来年から某外資系投資銀行で働く予定という学生さんと話す機会がありました。「年収の高さは、社会的価値を反映しているのだろうか」という素朴な問いと考えるきっかけをもらいました。

私自身が外資系投資銀行で長年働く中で感じていてたのは、「イコールとは思えない。明らかにもらい過ぎ(でも、立場的に、何かしら連動していると思いたい)」という感覚でした。もう少し発散的にこの問いを「マネーの大小は何を表して

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