マガジンのカバー画像

政治(国内・国際)

34
運営しているクリエイター

#政治

権威と権力の分離

私見であるが、権威と権力は分離されているのが究極である。

一般に政府権力と権威の関係を考えれば、権力の強さが権威をもたらし、権威を維持するために権力が振るわれるという状況はさして珍しくなく、歴史上の封建国家は当然として、近代以降も独裁国家に限らずアメリカなどの現代民主制国家でも見られる現象である。

しかし、この関係性では権威と権力が両輪となって際限なき強権化を生じる可能性があり、結果として政府

もっとみる
【政治学講座4】「憲法」について【体系的知識】

【政治学講座4】「憲法」について【体系的知識】

政治学講座(たぶん全十回くらい)参考文献 中村菊男 著,政治学 改訂第3版,2010

第四回 「憲法」についてはじめに

今回は近代国家のほぼ全てが持つ【憲法】についての話。

現代の日本で護憲や改憲の議論が起こるのも、これが国家および政治にとって極めて重要であるからである。

今回は憲法とは何であるのか、どのような働きをしているのか、その特徴について見ていこう。

近代憲法と立憲主義日本には聖

もっとみる
【政治学講座3】「国家」とは【体系的知識】

【政治学講座3】「国家」とは【体系的知識】

政治学講座(たぶん全十回くらい)参考文献 中村菊男 著,政治学 改訂第3版,2010

↓動画(簡略)版↓

第三回 「国家」とははじめに

第一回で政治学における政治は「国家に関わるor政府による政治的営みに限る」と結論したが、政治学にとっては中心ともいえる「国家」あるいは「政府」とは一体、なんなのであろうか?

今回は人々が暮らし、政治の舞台となる「国家」についての回になる。

国家の特質政治

もっとみる
【政治学講座2】政治学とは【体系的知識】

【政治学講座2】政治学とは【体系的知識】

政治学講座(たぶん全十回くらい)参考文献 中村菊男 著,政治学 改訂第3版,2010

第二回 政治学とは↓動画(簡略)版↓

政治学は国家と称する無形観念の性質および作用を考定する一種の形而上学にして、その範囲最も広漠なるものなり。

故に、学海広しといえども、その進歩の緩慢迂回なる此の学の右に出るもの有らず。学派多しと言えどもその支離滅裂する、またこの学の如きものあらざるなり
(カール・ラート

もっとみる
【政治学講座1】政治とは何か【体系的知識】

【政治学講座1】政治とは何か【体系的知識】

政治学講座(後で装飾を追加)参考文献 中村菊男著「政治学」改訂第3版,2010

第一回 政治とは何かはじめに

アリストテレスは著書の『政治学(Τα Πολιτικά)』で「都市国家は自然の所産であり、人間は本質的に政治的動物である」と述べた。

人間の存在は国家乃至それに類する社会集団の存在と、そこで振るわれる政治的権力の存在をも意味しているのである。

何を「政治」とするか

「政治」とは何

もっとみる
公平と公正と平等

公平と公正と平等

今回の内容は大体、これに書いたやつ。

・・・

公平と公正と平等、これらは似たようなものと解釈される事があるが、根本的に全く異質の概念であり、特に公正と後者二つの違いは大きい。

まず後者の説明から入る。

公正は機会均等、平等は結果均衡であり、これらは競争とその成果の配分に対する立場のちがいである。

「公正」はルール上競争の有利不利が運と自力以外で極力生じないよう機会を均等にする一方、その競

もっとみる
終戦の日

終戦の日

結局のところ、1945年の敗戦はもとをたどれば明治以来の立憲主義と政党政治の敗北に帰する。

扇動に惑わされ衆愚政治に堕し、外交的失敗を重ねながら勝ち目の薄い戦いに突き進んでしまった。

そして、この末に、もし本土決戦が行われれば日本人の8割は殺害され国土は回復不可能なまでに破壊される手筈であった。

昭和天皇はこの危機から国民を救ってくださった事になる。

しかもこの時、連合軍は昭和天皇の待遇を

もっとみる
保守主義から見る現代の正義

保守主義から見る現代の正義

保守主義の見地において、無知のヴェールには欠陥を認めることが出来る。
無知のヴェールとはジョン・ロールズが「正義論」にて唱えた”誰もが自分を含めた個々人の背景を全く無視した場合に、どのような選択が最良と考えられるか”という思考実験である。

この実験の結論として、自分のステータス、社会的地位や財産・人種・年齢・性別・職業他を知らない人間が自らの幸福を願う場合には、結果的に社会を構成する全成員に対し

もっとみる
平和憲法における平和とは何か

平和憲法における平和とは何か

日本国憲法は平和憲法と呼ばれますが、なんらの解釈を交えずに、その条文に従った場合、全ての戦力を放棄するため、日本は国際法上、当然に全ての国家が持つ自衛権すら事実上行使できなくなります。

つまり、外国が軍事力を背景に服従を迫れば、日本人には服従か死の選択肢しかありません。

もし、ユダヤ人を欧州から根絶しようとしたナチスのように、どこかの国が民族絶滅のために戦いを仕掛けたなら、日本人に殺される以外

もっとみる
【電子書籍】『保守主義の超克』・『大和心とは何か』がkindleに並びました。

【電子書籍】『保守主義の超克』・『大和心とは何か』がkindleに並びました。

○保守主義の超克

保守主義はフランス革命に対するアンチテーゼに端を発し、冷戦以降、共産主義の脅威に対抗する思想的主柱として西側諸国の主要の政党の多くがこれを奉じてきた。日本でも自民党をはじめとした多くの政治家がこれを奉じ、保守を標榜する論者も数多く存在している。彼らは保守主義こそが日本を守ると言うが、しかし、保守主義は本当に日本を守るものなのだろうか?

本書はエドマンド・バークについての諸研究

もっとみる
全体主義と独裁と専制の違い

全体主義と独裁と専制の違い

全体主義と独裁と専制は同じように見られるがちょっと違う。

1.全体主義全体主義というのは、個人主義の反対であり、実は古代以来どこでも行われてきた政治現象である。

全体主義は権威主義の極端な形ともいわれるが、全体主義だからといって民主的でないとはいえず、古代ギリシャのポリスにおける民主制のように全体主義的・権威主義的な民主政もありうる。

陶片追放やソクラテスが服毒死したのは古代民主制の全体主義

もっとみる
「ゲバ字」についての動画

「ゲバ字」についての動画

新左翼が使っていたゲバ字についての動画。
現代、稀に見られる簡体字混じりの字体についての解説動画。
youtube版
https://www.youtube.com/watch?v=QmOjwcZBqVc

ニコニコ版
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38117205

低賃金労働移民政策の将来

低賃金労働移民政策の将来

我が国の政府は昨今、リベリアかチベット、あるいはソマリアのような確固たる国際的地位を目指し、30年以上にわたり一貫して、それに見合う経済政策・財政政策を取り続けてきた。

これにより、日本は見事な低成長を遂げ、あとは後進各国の成長を見届けて大国に飲まれるか解体するだけと、ついに戦後日本は占領政策により与えられた歴史的役割を終えようとしている。

その政府による一連の政策の一つが技能実習生制度に代表

もっとみる
「保守=善・良いもの・日本の国益に適う」というのは誤解です。

「保守=善・良いもの・日本の国益に適う」というのは誤解です。

※以下はSNS上のやり取りを元に微調整したものです。

「保守主義の超克」
 http://amazon.co.jp/dp/B08P5FF949



まず、日本における”保守”は大きく五種に定義できます。

より詳しくは上記の電子書籍にまとめていますが、簡単にまとめると、次のようになります。

①政治思想としての保守主義(国制の精神を守るために漸進的改革を続ける)、②冷戦期に形成された西側自由

もっとみる