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読書家ノート

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『夜のみだら鳥』ドノソ(著) 鼓直(訳) 『百年の孤独』文庫発売時期に、あっちが「陽」なら(わやくちゃだけれど読んでいると楽しい気分になるんだよな、あれは)こっちは「陰」の極みのようなラテンアメリカ小説の名作らしいので、読んだら、ほんとに鬱々としてしまいました。

『夜のみだら鳥』ドノソ(著) 鼓直(訳) 『百年の孤独』文庫発売時期に、あっちが「陽」なら(わやくちゃだけれど読んでいると楽しい気分になるんだよな、あれは)こっちは「陰」の極みのようなラテンアメリカ小説の名作らしいので、読んだら、ほんとに鬱々としてしまいました。

『夜のみだら鳥』
ドノソ(著) 鼓直(訳)
集英社 ラテンアメリカの文学11 1984年7月刊

Amazon内容紹介が無いので、本の帯

ここから僕の感想 七月のはじめにガルシア=マルケスの『百年の孤独』文庫が出版されてTwitterでも大騒ぎになったときに、何人かの人が「ラテンアメリカ文学なら私は『夜のみだらな鳥』が好き」というようなツイートをしていた。一人ではなかったんだな。そうか、知らな

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『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』渡邉雅子(著) いやもう歴史的名著。僕はこの本の内容を若者に伝道する仕事を余生全部かけてもいいと思ったくらい。自分が「感想文教育」の申し子であることも痛感自覚しました。

『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』渡邉雅子(著) いやもう歴史的名著。僕はこの本の内容を若者に伝道する仕事を余生全部かけてもいいと思ったくらい。自分が「感想文教育」の申し子であることも痛感自覚しました。

『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』

2023/9/26 渡邉 雅子 (著)

◆Amazon内容紹介◆ここから僕の感想 この前、フライングで読書途中で興奮して投稿してしまったけれど、ノートを取りながら読み進め、読了。

 この前「今年読んだ本の中でNO1」と書いたけれど、訂正。これまでの人生で読んだ本の中でベスト3に入るすごい本でした。かなり興奮状態にある。

 どれくらい興

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昨夜(8/17)、再放送されていたNHK BS「パクス・ヒュマーナ 〜平和という“奇跡”〜」(初回放送日は2024年2月23日だったそうだが、見ていなかった)素晴らしい内容だった。

昨夜(8/17)、再放送されていたNHK BS「パクス・ヒュマーナ 〜平和という“奇跡”〜」(初回放送日は2024年2月23日だったそうだが、見ていなかった)素晴らしい内容だった。

昨夜、再放送されていたNHK BS
「パクス・ヒュマーナ 〜平和という“奇跡”〜」
(初回放送日は2024年2月23日だったそうだが、見ていなかった)
素晴らしい内容だった。

番組HPから

ここから僕の感想まずは番組前半。

十字軍の時代に奇跡の十年間の平和な時代を築いたフェデリコ2世。シチリア島パレルモに生まれ育ったのだが、父はドイツの神聖ローマ帝国皇帝(母がシチリアの女王)で、神聖ローマ帝

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『迷宮の将軍』ガブリエル ガルシア=マルケス (著)木村榮一 (訳)  ちょうどコパ・アメリカの期間に読んだので、「南米ってなんでたくさんの国に分かれているのかな」ということを改めて考えた。

『迷宮の将軍』ガブリエル ガルシア=マルケス (著)木村榮一 (訳)  ちょうどコパ・アメリカの期間に読んだので、「南米ってなんでたくさんの国に分かれているのかな」ということを改めて考えた。

『迷宮の将軍』

ガブリエル ガルシア=マルケス (著) 木村 榮一 (翻訳)

Amazon内容紹介が無い!ので本の帯

ここから僕の感想 ガルシア・マルケスの長編小説でまだ読んでないの、最後の一冊(かなあと思う、短篇はまだずいぶん読んでいない)を、この機会に(『百年の孤独』文庫本で話題のこの時期に)読んでしまおうと、手に取った。

 いや、この機会にっていうのが、どっちかというとサッカーのコパ

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『出会いはいつも八月』ガブリエル・ガルシア=マルケス (著), 旦敬介 (訳)  今、話題の作者の未完の遺作を読んでみた。「未完」の意味を考える。

『出会いはいつも八月』ガブリエル・ガルシア=マルケス (著), 旦敬介 (訳)  今、話題の作者の未完の遺作を読んでみた。「未完」の意味を考える。

『出会いはいつも八月』
ガブリエル・ガルシア=マルケス (著), 旦 敬介 (翻訳)

◆Amazon内容紹介

◆ここから僕の感想

 いやいやAmazon内容紹介、「未完の傑作」なのに「圧巻のラストに息をのむ」って矛盾してるだろ。そう思いますよね。説明しますね。

 遺作で未完というと、夏目漱石の『明暗』みたいに、えーこれからいいところじゃーん。二人はどうなるの?するの?しないの?みたいないい

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『社会学をはじめる――複雑さを生きる技法 』(宮内泰介 (著) 広告マーケティングのことはひとかけらも書かれていないけれど、自分の仕事時代に大切にしていたことがまるごと書かれていてビックリした。あと社会学について「科学的な学問なの?」と批判的な人も必読。

『社会学をはじめる――複雑さを生きる技法 』(宮内泰介 (著) 広告マーケティングのことはひとかけらも書かれていないけれど、自分の仕事時代に大切にしていたことがまるごと書かれていてビックリした。あと社会学について「科学的な学問なの?」と批判的な人も必読。

『社会学をはじめる ――複雑さを生きる技法 』
(ちくまプリマー新書 460) 新書 – 2024/6/7
宮内 泰介 (著)

Amazon内容紹介

◆ここから僕の感想 ふだんは世界文学・小説の感想ばかり書いているのだが、今回はちょっといろいろ事情が違う。この本自体はツイッターでちらっと見かけて何の気なしにAmazonでポチって読み始めたのだが、これはもういろいろ書きたいことが山のように頭の中

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『フォークナー短編集 』(新潮文庫) フォークナー (著), 龍口 直太郎 (翻訳) 40年前に買った文庫を初めて読みながら、バイデンvsトランプのテレビ討論についてまで思いをはせたという話。

『フォークナー短編集 』(新潮文庫) フォークナー (著), 龍口 直太郎 (翻訳) 40年前に買った文庫を初めて読みながら、バイデンvsトランプのテレビ討論についてまで思いをはせたという話。

フォークナー短編集 (新潮文庫) 文庫 – 1955/12/19
フォークナー (著), 龍口 直太郎 (翻訳)

Amazon内容紹介

ここから僕の感想

この本を手に取った経緯

 フォークナーの長編『アブサロム、アブサロム!』『響きと怒り』を続けて読んで、かつ『アブサロム、アブサロム!』の池澤夏樹氏の親切な解説で、フォークナーの主要作品が彼の生まれ育った故郷の南部ミシシッピ州の町をモデルに

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『響きと怒り』 (上・下) (岩波文庫) フォークナー (著), 平石 貴樹  新納 卓也 (翻訳) 第二章ってサリンジャー主要作と似てる?(影響を与えたのでは)など、気づくこと考える事たくさんありました。

『響きと怒り』 (上・下) (岩波文庫) フォークナー (著), 平石 貴樹 新納 卓也 (翻訳) 第二章ってサリンジャー主要作と似てる?(影響を与えたのでは)など、気づくこと考える事たくさんありました。

『響きと怒り』 (上・下) (岩波文庫) 文庫 – 2007/1/16
フォークナー (著), 平石 貴樹 (翻訳), 新納 卓也 (翻訳)

Amazon内容紹介

が、なぜか岩波文庫には無いので、講談社文芸文庫の方の内容紹介

ここから僕の感想

 先日読んだフォークナーの『アブサロム、アブサロム!』の池澤夏樹氏の解説で、架空の町、ヨクナパトーファ郡ジェファソンを舞台にした多数の小説連作「ヨク

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『人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造』熊代 亨 (著) いや、薄いんだけど新書なんだけど『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』合わせたくらいの全人類ビッグヒストリー+未来予測提言の書です。

『人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造』熊代 亨 (著) いや、薄いんだけど新書なんだけど『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』合わせたくらいの全人類ビッグヒストリー+未来予測提言の書です。

『人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造』 (ハヤカワ新書) 新書 – 2024/2/21 熊代 亨 (著)

普段ならここでAmazon内容紹介なのだが。この本、タイトルも副題も帯のコピーも、Amazon内容紹介も、どれも本の内容の凄さを全然、表していない。まあ、キャッチーで売れるにはこうだ、と編集者の人が決めたのかな。だから引用しません。なんか、現代の、自分探しの、生きにくさを感じている人向

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『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム フォークナー (著), 篠田 一士 (訳) アメリカという国の、その根底にある狂気について。資本主義の根っこにある狂気について。考えてしまった。

『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム フォークナー (著), 篠田 一士 (訳) アメリカという国の、その根底にある狂気について。資本主義の根っこにある狂気について。考えてしまった。

『アブサロム、アブサロム!』 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9

Amazon内容紹介

本の帯・裏

ここから僕の感想

 フォークナーを読むのは『野生の棕櫚』に次いで二冊目で、あちらの感想文で「アメリカでかすぎて人間がおかしくなる話」と書いたのだが。

 この小説もアメリカという国が、なにか根本的に日本人には分からない狂気の上にできあがっていること、その分からなさのもとの狂気が濃密に

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『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳) ウクライナの戦争前に書かれているのだが、この本の内容を頭に入れて、各国の動きを考えると、見えてくることが全然違う。特に第4部 中東のところはすごい。必読。

『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳) ウクライナの戦争前に書かれているのだが、この本の内容を頭に入れて、各国の動きを考えると、見えてくることが全然違う。特に第4部 中東のところはすごい。必読。

『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 2022/1/28
ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳)

Amazon内容紹介ここから僕の感想 一年前、ウクライナの戦争が始まる直前に日本では翻訳、出版された、ので書かれたのはそれよりさらにちょっと前なのだが、いやー、これ、今回の戦争の背景含め、ものすごくクリアにしてくれるすごい本でした。

 著者は学者的な研究者ではな

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『帰りたい』カミーラ・シャムジー(著), 金原瑞人,安納令奈(訳) 現代イギリスを舞台にした対照的な二つのパキスタン系移民家族。イスラム国に参加した弟を救おうとする姉二人という貧しい家族。イスラムに背を向け内務大臣となった政治家とその甘ちゃん息子という金持ち家族。シェイクスピア悲劇のような読後感でした。

『帰りたい』カミーラ・シャムジー(著), 金原瑞人,安納令奈(訳) 現代イギリスを舞台にした対照的な二つのパキスタン系移民家族。イスラム国に参加した弟を救おうとする姉二人という貧しい家族。イスラムに背を向け内務大臣となった政治家とその甘ちゃん息子という金持ち家族。シェイクスピア悲劇のような読後感でした。

『帰りたい』カミーラ・シャムジー(著), 金原瑞人,安納令奈(訳) 2022/6/28

Amazon内容紹介から抜粋(本の帯要素)

ここから僕の感想 いや、もう、ほんとに各紙の書評通り。初めは現代の「身分違いの恋」の物語かと思って読んでいたら、それがもう、ギリシャ悲劇のように、あるいはシェークスピア悲劇のように、もうどうしようもない運命、どんどんとそれぞれの人物が、どうしようもない状況に追い詰

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『ふたつの人生』 ウィリアム・トレヴァー(著),栩木伸明 (訳) 中篇ふたつを一冊の本にまとめたもの。最高の短篇小説家による中篇は、果たして最高か?いやあんまり面白かったので感想文書いたら盛大ネタバレになってしまいました。

『ふたつの人生』 ウィリアム・トレヴァー(著),栩木伸明 (訳) 中篇ふたつを一冊の本にまとめたもの。最高の短篇小説家による中篇は、果たして最高か?いやあんまり面白かったので感想文書いたら盛大ネタバレになってしまいました。

ふたつの人生 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション) 単行本 – 2017/10/25
ウィリアム・トレヴァー (著), 栩木伸明 (翻訳)

Amazon内容紹介

本の帯 裏から ウィリアム・トレヴァー・コレクション(全五巻)の紹介文

ここから僕の感想 というわけで、「世界最高の短篇作家の、その中篇小説」って、どうよ。この前読んだ短篇集『ラスト・ストーリーズ』はほんとによかったから。

 

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『奥のほそ道』リチャード・フラナガン著 noteを始める前に、2018年12月19日に書いていた感想文をブログから転載。

『奥のほそ道』リチャード・フラナガン著 noteを始める前に、2018年12月19日に書いていた感想文をブログから転載。

『奥のほそ道』 単行本 – 2018/5/26
リチャード・フラナガン (著), 渡辺 佐智江 (翻訳)

Amazon内容紹介

ここから僕の感想

 しむちょーん、読んだよー。本物の小説です。本物の文学です。としか、言いようがない。

 こういうすごい小説は、Amazon内容紹介を読んでしまったとしても、まったくネタバレの心配がないのだよな。あらゆる細部が、あらゆる人物が、どのエピソードのひと

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