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非行

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息子の非行の日々
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#子育て

長男

長男

今日は初めて長男のことを書いてみようと思う。

長男は小さな頃から手がかからない子だった。
聞き分けがよくわがままを言うこともほとんどなかった。
誰の空間も邪魔しないような空気感で、家にいても居たの?と思うほど気配が無くよく驚かされた。

初孫で両家の祖父母から愛された。
大人の用事で連れ回すことがあっても自分なりの時間を過ごすことが出来た。
絵が好きで本が好きで静かで物を丁寧に扱う子だった。

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夫の限界

夫の限界

「出て行け」と言われた次男。
そう言われてどこかに行くと次男はいつも大変なことになるのだ。

私はすぐに保護司に連絡した。
遅い時間だったがすぐに来てくれた。
荒れた部屋を見ても落ち着いていた。

私はもう参っていた。
繰り返されるこういうバトルに消耗していた。
保護司に対し半泣きで
「夫にもう少し助言して欲しかった、荒れないように言って欲しかった」と八つ当たりをした。

保護司は、
「私はお母さ

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いつもこうなる我が家

いつもこうなる我が家

案の定、財布のお金が減った。

夫はそうなることが予想できていたのか怒ってはいなかった。
ただ、自分の勘違いではないことを確認したかったのだと思う。
夫は見て見ぬふりをする人ではない。
次男の部屋へ話に行った。

前からお金が減っていると思っていたこと。
あえて財布を置きっぱなしにしたこと。
家族しかいない家でお金がなくなるとしたら次男しかいないということ。
人の財布から金をとるな、そんな

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仕事と彼女

仕事と彼女

次男に彼女ができた。
非行の再犯防止には【仕事と彼女】と聞いたことがある。
仕事で誰かの役に立ち、好きな人といる幸せがあれば悪いことなんてしないのだろう。

単純だがこれに尽きると思う。

彼女は明るく元気で何よりも次男を好きになってくれて嬉しかった。
彼女の親御さんとは面識があった。
羨ましいくらい家族仲のよい素敵なおうちだった。

次男は仕事から帰ると身支度をし毎日のように彼女の実

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祖母の面会

祖母の面会

次男の少年院での生活は続いていた。
私は書けるだけ手紙を書き、面会も欠かさなかった。

次男からの手紙には
[前略、拝啓、ご自愛ください]などの文字が強い筆圧で丁寧に書かれていて、こんなに上手に字が書けたんだなと思った。

普段使わない言葉への違和感と次男の学びを感じながら何度も読み返した。

「面会の時、駐車場に停まっているうちの車が見えました。一緒に乗って帰れたらどんなにいいかと思いま

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少年院へ

少年院へ

少年院。
社会生活の中では更生が難しいと判断された子どもたちが行く矯正施設。罰ではなく更生するための教育を受けることを目的としている。

家庭裁判所での審判で次男は県外の少年院へ行くことが決まった。

自宅から遠く離れた静かな場所だった。

はじめて面会に行った日。
大きな建物の中は静かだった。
入り口には卒院生の絵などが飾られている。
独特の雰囲気がある。

我が子に会うために身分証

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親子が別々に暮らすということ

親子が別々に暮らすということ

未成年の息子を追い出す夫。
そうなってしまうほど夫も限界だった。

保護観察ということもあり、親の関わりや接し方についてやんわりではあるが助言のようなものもされる。

時には面識のない市の担当の人に子育てについて柔らかく遠回しに言葉をかけられることもある。
過敏になっている夫の心はもう閉じていた。

もう誰かに何か言われることを拒否していた。

親子は一緒に暮らした方がいいのかもしれない。

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怒り

怒り

ピリついた毎日だった。

保護観察中の分際で、遅くまで帰らないこと、仕事に寝坊すること、次男の態度の悪さに夫はイライラしていた。

「やりたいことをやるなら筋を通せ」という夫のまっすぐ過ぎる正論は正しかった。

そして正論では伝わらないことが山ほどあり、言葉でねじ伏せても効果はないように感じた。

次男はあまりしゃべらなかった。
というより、話してもどうせ聞いてもらえないことを感じ

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はじめての鑑別所

はじめての鑑別所

鑑別所がどんな所なのか知っている人はどのくらいいるのだろう。

鑑別所というのは、罰を与える場所ではなく文字通り子どもの心身を鑑別するところだった。

どんな事件を起こしたかということの調査もされるが、本人の資質や経歴、育った環境などを専門家が詳しく調べていくような施設だ。

親は家庭裁判所へ呼ばれ調査をされる。
小さい時にはどんな子どもだったか、祖父母との関わりなどにも遡り、家族構成、育

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