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読書記録

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記事一覧

第1493回 もう平成を総括できるのか

1、読書記録356

本日ご紹介するのはこちら。

与那覇潤2021『平成史ー昨日の世界のすべて』

歴史学者をやめた、そんな珍しい著者の描く平成史はどんなものなのでしょうか。

2、歴史学者として最後の書

サブカルチャーから政治群像劇まで幅広く話題を展開しながら、いま我々がいる場所、について考察しています。

私自身が生きてきた時代なので、随所に、「そうだった、懐かしい!」と言える記述が出てき

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第1491回 江戸時代の人はどのように歩いていたか

1、読書記録 355

今回ご紹介するのはこちら。

谷釜尋徳2017「近世後期の街道筋における榜の用途と身体技法」

『東洋大学スポーツ健康科スポーツ健康科学紀要』 (14) 1-17 2017年3月

たまたま別なものを検索していたら引っかかって読み込んでしまったのが面白かったので紹介します。

こちらのアーカイブからダウンロードができます。

2、江戸の旅人のすがた

江戸時代の人は右手と右

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第1490回 島自体が文化財

1、読書記録354

今回ご紹介するのはこちら。

月刊文化財732号
新指定の文化財ー建造物・伝統的建造物群

2、新指定の一覧

令和6念5月17日に開催された文化審議会文化財分科会の審議を経て新たな文化財指定が答申されました。

【重要文化財】

京都市綾部市 斎神社本殿
滋賀県大津市 園城寺 観音堂、札所鐘楼、百体堂、観月舞台、絵馬堂
           附 旧伏間瓦 一竈 棟札
   

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第1489回 歴史書であろうとすること

1、読書記録353

今回ご紹介するのはこちら

薮本勝治2024『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』

「正史」公式記録は編纂者、為政者側の都合の良いように書かれている、というのは常識ですが、具体的にどこがどう怪しいのか、丁寧に解きほぐされています。

2、文学作品と歴史書の違いは

すごく簡単にまとめると、『吾妻鏡』は北条泰時から貞時へと受け継がれていく為政者の系譜が正当であることを述べた物語で

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番外編 ビブリオバトルに出演します!

1、初挑戦ってわくわくする

実は人生で初めてビブリオバトルに挑戦します。

読書好きの人たちの前で、自分の好きな本の良さを語る、

そんな夢のようなイベントに参加できることに、

今からワクワクが止まりません。

今回はその発表原稿の下書きを兼ねて、取り上げる本の紹介をしていこうと思います。

辻村深月『東京會舘とわたし』

2、語り継がれる魅力

辻村深月さんは1980年生まれで、ちょうど私と

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第1481回 漢詩で歴史を語る

1、読書記録352

今回ご紹介するのはこちら。

揖斐高2024『頼山陽 詩魂と史眼』岩波新書

以前もご紹介した、瑞巌寺老師の漢詩の講座を受けて

頼山陽という人物に関心を持ったのでまさにタイムリーな本でした。

2、今回は漢詩よりも歴史

本書は副題の通り、漢詩と歴史叙述の二つの側面から頼山陽という人物を分析していきます。

前回は漢詩のところで触れたので、今回は歴史叙述家としての部分につい

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第1478回 江戸の旗本のお墓を掘る

1、読書記録351

本日ご紹介するのはこちら。

竹内俊之編 2022『東京都新宿区 市谷柳町遺跡Ⅳ(緑雲寺旧寺域)』株式会社四門

お世話になった方からご恵送いただきました。

本稿ではご遺骨など生々しい画像は掲載しませんが、お墓の遺構写真は出てくるので、苦手な方はスクロールせずにここで閉じていただけると幸いです。

2、個人の歴史がここまで明確に

調査地点は牛込川田窪の谷筋で、牛込七軒寺町

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第1477回 創建1300年記念に合わせた指定ラッシュ

1、読書記録350

今回ご紹介するのはこちら。

月刊文化財 令和6年6月号 通巻729号
◆新指定の文化財ー美術工芸品ー

今回のテーマは美術工芸品、ということもあり、指定件数は膨大なものとなりました。

2、多賀城フィーバー

国宝に指定されたものは

京都市大報恩寺 木造六観音菩薩像 木造地蔵菩薩立像

文化庁保管 和漢朗詠集 
      
奈良県 金峯山神社 金峯山経塚出土紺紙金字経

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第1473回 川崎町の砂金氏

1、読書記録349

今回ご紹介するのはこちら。

川崎町の文化財第13集「城館」

発刊したばかりの城館調査報告書です。

2、お城のことについては本書をご参考に

東北福祉大学名誉教授の吉井宏氏らを中心とした有志で調査した小野城と前川本城を中心に、本砂金城、前川城、大森山館、上楯城、小屋館山館、今宿清水城館遺跡の8件の城跡について遺された絵図、縄張図、赤色立体図などを駆使し、川崎町内の城跡につ

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第1472回 飢饉より恐ろしいものは

1、読書記録348

今回ご紹介するのはこちら。

藤木久志2018『飢餓と戦争の戦国を行く』

本書のキモは8年ほどかけて作られたという中世の飢餓をひきおこす災害に関するデータベース。

平成5年、1993年の冷夏による東日本の大凶作に衝撃を受けて調べ始めたといいます。

中世の記録や古文書に旱魃、長雨、疫病や飢饉に関わる記事を見出して年表風にしたもの。

7000項目余りのデータベースから11

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第1467号 人の心性はこんなところに現れるもの

1、読書記録347

本日ご紹介するのはこちら

平野多恵2024『おみくじの歴史: 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか 』吉川弘文館(歴史文化ライブラリー 583)

2、こんなおみくじがほしい

日本人でおみくじを一度も引いたことがない、という人はなかなかいないのではないでしょうか。

それだけ身近なものなのに、意外とその歴史は知られていません。

本来容易に決断できない時に、それを神仏にうかがうた

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第1465号 郷土の偉人を調べるきっかけに

1、読書記録346

本日ご紹介するのはこちら。

https://bookmeter.com/books/21702804

古田義弘2023『仙台領に生きる 郷土の偉人傳Ⅴ』

住宅問題評論家から郷土史家へと変遷した稀有な経歴の持ち主の著者。

あとがきには米寿を迎えた、とありますからそのバイタリティに驚かされます。

しかもすでに郷土の偉人傳も5冊目ということ。

やはり継続することは素晴ら

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第1464号 「なんとなく」から「そうだったのか」に

1、読書記録345

本日ご紹介するのはこちら。

島村恭則2024『現代民俗学入門』創元ビジュアル教養+α

身近なところから、しかもかなり現代的な疑問をとっかかりに、

若手から中堅の研究者が解説してくれる、かなり手に取りやすい内容になっています。

なんと私の大学の時の同級生も一項目執筆していました。

2、身近な話題を掘り下げる

構成としては

1章 日常のなぜ

2章 四季のなぜ

3

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第1461回 まだまだブラックボックスの中に

1、読書記録344

今回ご紹介するのはこちら

出版社の編集者で、昭和の歴史探偵、半藤一利氏と親しく交流していたことがあとがきに記されています。

そんな著者が、太平洋戦争開戦のポイント・オブ・ノーリターン(帰還不能点)である昭和16年9月6日の御前会議に徹底的にこだわって調べまとめたのが本書です。

当時の新聞の縮刷版や、NHKアーカイブスの「日本ニュース」からの引用、

恵比寿にある防衛研究

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