Traveling Alice

旅の途中の考え事💭これまで訪れたステキな場所、忘れられない出来事をつづっています。

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就活をやめて憧れの地へ旅立った日のこと

引き出しの奥に眠る赤いパスポート。もう10年近く前、このパスポートを手にして旅立った、あのめまぐるしい一日が懐かしい。 *** まだ寒い春だった。 成田空港第1タ…

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はるか彼方の宝島

私にとって海は特別なものだった。ここぞというときにだけ連れて行ってもらえる、遠い遠いところ。幼い頃は異国の地という感覚だったかもしれない。 2年前に母と二人で訪…

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黒猫と目が合った

オックスフォードに滞在していたとき、カルチャーショックのようなものを体験した。語学学校へ向かう道の途中で黒猫に出会った日のことだ。 「魔女の宅急便」のジジみたい…

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空を刺すのはビルか山か [読書旅行記]

vol.3 余韻 最終日、朝一で東寺へ。京都駅から歩いていけるのがいい。 曇り空が似合うひっそりとした雰囲気。神社とはまた違った良さがある。そう思いながらいつかの父の…

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鳥居をくぐり夢現 [読書旅行記]

vol.2 道中 五条の小さなビジネスホテルを拠点に、京都をめぐる4日間の一人旅。 地下鉄とバスが乗り放題になる乗車券を買った。聞こえてくる駅員さんや運転手さんの声に…

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本を読みに、京都へ。[読書旅行記]

vol.1 旅立ち 秋のはじめ。長袖のワンピース1枚がちょうどいい季節。 旅人が行き交う東京駅の地下街でサンドイッチを買う。小さなスーツケースをコロコロ引いて、東海道・…

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オックスフォードのバスの中で

ホームステイが始まってまだ1ヵ月もしない頃だったと思う。 私はすごく活動的だった。日本にいるときはインドアだったのに、とにかく毎日朝から晩までどこかへ出かけてい…

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「立派な大人」という呪縛

30歳を過ぎて気付いたこと。 コンビニの店員さん、担当の美容師さん、フィットネスの先生。 なんだかみんな若い。周りに年下が増えてきた。 つい最近まで新人だと思って…

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雨のご褒美

サッカー部の階段ダッシュ。 窓の外、降り続く雨を見ていると、懐かしい記憶が蘇る。 中学生のとき、サッカー部に気になる男の子がいた。 部活の時間、いつもサッカー部…

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ノスタルジーとトキメキ

旅の途中、車窓から外を眺めて、ぼんやりと考え事をする時間が好きだ。 流れる景色の中に、懐かしいあの頃を思い出す。 前の職場のこと。本のにおいが落ち着く大学の図書…

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就活をやめて憧れの地へ旅立った日のこと

就活をやめて憧れの地へ旅立った日のこと

引き出しの奥に眠る赤いパスポート。もう10年近く前、このパスポートを手にして旅立った、あのめまぐるしい一日が懐かしい。

***

まだ寒い春だった。

成田空港第1ターミナルの北ウイングで、私は母に手を振った。この日を心待ちにしていた私は笑顔だったが、母は複雑な表情だったと思う。口にしないが内心かなり心配しているようだ、と兄から聞いていた。

23番ゲートの前でひとり、イスに座ったところで急に涙

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はるか彼方の宝島

はるか彼方の宝島

私にとって海は特別なものだった。ここぞというときにだけ連れて行ってもらえる、遠い遠いところ。幼い頃は異国の地という感覚だったかもしれない。

2年前に母と二人で訪れたときの旅路を振り返ってみる。

まずは羽田空港へ…
この時点で自宅から1時間前後。
飛行機に乗って2時間半の空の旅。

那覇空港に到着。
空港のお土産ショップを覗きたい気持ちを抑え、バス乗り場へ急ぐ。(一本逃すと大変)

北部へ向

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黒猫と目が合った

黒猫と目が合った

オックスフォードに滞在していたとき、カルチャーショックのようなものを体験した。語学学校へ向かう道の途中で黒猫に出会った日のことだ。

「魔女の宅急便」のジジみたいなかわいい黒猫が、煉瓦造りの家の門で日向ぼっこをしていた。あまりに絵になるロマンチックな光景に、私はテンションが上がった。

ステキな物語が始まりそう!

そんな気持ちを共有しようと、学校に着いてから早速みんなに写真を見せた。すると、スイ

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空を刺すのはビルか山か [読書旅行記]

空を刺すのはビルか山か [読書旅行記]

vol.3 余韻

最終日、朝一で東寺へ。京都駅から歩いていけるのがいい。
曇り空が似合うひっそりとした雰囲気。神社とはまた違った良さがある。そう思いながらいつかの父の言葉を思い出した。

「大人になれば寺の良さがわかるよ」

少し似てきたのだろうか。認めたくないけど。

***

新幹線が東京駅に近づき、窓の向こうは山の代わりにビルが建つ。空が小さくて息苦しい。

目を閉じて思い浮かべる、夏と秋

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鳥居をくぐり夢現 [読書旅行記]

鳥居をくぐり夢現 [読書旅行記]

vol.2 道中

五条の小さなビジネスホテルを拠点に、京都をめぐる4日間の一人旅。

地下鉄とバスが乗り放題になる乗車券を買った。聞こえてくる駅員さんや運転手さんの声に感動する。イントネーションが、ものすごく京都。なんて素敵な喋り方なんだろう。

駅のホームで道に迷ったときにも車掌さんが助けてくれた。私が迷子だとバレてしまったのか、運転席の窓から顔を出して丁寧に道を教えてくれた。危ない、全く逆方

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本を読みに、京都へ。[読書旅行記]

本を読みに、京都へ。[読書旅行記]

vol.1 旅立ち

秋のはじめ。長袖のワンピース1枚がちょうどいい季節。
旅人が行き交う東京駅の地下街でサンドイッチを買う。小さなスーツケースをコロコロ引いて、東海道・山陽新幹線のホームを目指す。

自動販売機でカフェオレのボタンを押したのに何も出てこない。もう一度ICカードをかざしてボタンを押す。ガタンと音がした辺りを探ると、350mlペットボトルが2本みつかった。

東京駅11時発のぞみ22

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オックスフォードのバスの中で

オックスフォードのバスの中で

ホームステイが始まってまだ1ヵ月もしない頃だったと思う。

私はすごく活動的だった。日本にいるときはインドアだったのに、とにかく毎日朝から晩までどこかへ出かけていた。
平日は語学学校で授業を受けて、そのあとは街の中心地へ出てカフェや雑貨屋さん、いろんなお店を巡った。

スーパーで買い物をしたある日の帰り道。

市街地からホームステイ先まではバスに乗る。いつものように窓側の座席に座って揺られながら、

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「立派な大人」という呪縛

「立派な大人」という呪縛

30歳を過ぎて気付いたこと。

コンビニの店員さん、担当の美容師さん、フィットネスの先生。
なんだかみんな若い。周りに年下が増えてきた。

つい最近まで新人だと思っていた職場では、仕事の相談をされたり、リーダーと呼ばれるようになったり。

この焦りと戸惑いはなんだろう?

いつのまにか大人側へ来てしまった。子供の頃、学校の先生たちはものすごく「立派な大人」に見えた。大人はなんでも知っていて、強くて

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雨のご褒美

雨のご褒美

サッカー部の階段ダッシュ。

窓の外、降り続く雨を見ていると、懐かしい記憶が蘇る。

中学生のとき、サッカー部に気になる男の子がいた。
部活の時間、いつもサッカー部はグラウンドで練習するが、雨の日は外に出られない。体育館はバスケ部やテニス部が使っている。

そんな日、サッカー部の男子たちは、校内の階段を1階から4階まで駆け上っては駆け下りる、キツいトレーニングをしていた。今考えるとかわいそうだが、

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ノスタルジーとトキメキ

ノスタルジーとトキメキ

旅の途中、車窓から外を眺めて、ぼんやりと考え事をする時間が好きだ。

流れる景色の中に、懐かしいあの頃を思い出す。
前の職場のこと。本のにおいが落ち着く大学の図書館。嬉しいときは小走りで、悲しいときはゆっくり歩いた帰り道。

ふとみつけた、昔のアルバムをめくっているときのような。

これまでの旅路を振り返り、この先の道を想像する。今向かっている場所では、どんな出来事が待っているだろう?目的地が近付

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