はるか彼方の宝島
私にとって海は特別なものだった。ここぞというときにだけ連れて行ってもらえる、遠い遠いところ。幼い頃は異国の地という感覚だったかもしれない。
2年前に母と二人で訪れたときの旅路を振り返ってみる。
まずは羽田空港へ…
この時点で自宅から1時間前後。
飛行機に乗って2時間半の空の旅。
那覇空港に到着。
空港のお土産ショップを覗きたい気持ちを抑え、バス乗り場へ急ぐ。(一本逃すと大変)
北部へ向かう「エアポートシャトル」か「やんばる急行バス」に乗る。
私が乗ったエアポートシャトルは座席の背もたれが壊れている席があった。このゆるい感じ… 沖縄に来た。
ここから3時間バスに揺られる。乗り物酔い民には良くないとわかっていても、つい窓の外をキョロキョロ見てしまう。
道路工事の道端にシーサー。かわいい。
南国の木々の間からチラリと顔を出す、キラキラ光る海。
バナナのようでバナナじゃない、謎の果物。
途中休憩を挟みつつ、やっと美ら海水族館前で下車。(バス酔いの限界ギリギリ)
もうフェリーがないのでこの日はホテルで一泊する。
翌日は朝イチで美ら海水族館やエメラルドビーチを探検。本部町まで来たなら行っておかないともったいない。
夢のように美しい海。ここで終わりでもいい気がする。
だけど、海の向こうに見えるあのとんがり帽子みたいな島に向かわなければならない。
ホテルからタクシーで10分前後、本部港へ。フェリーの切符を買う。
フェリーは多い時期でも1日5便しかない。
30分程の船旅。とんがり帽子が近付いてくる。
こうしてやっと、旅の目的地・伊江島へ到着!
遠い…
母はここで生まれ育った。
昔はもっともっと移動が大変だったらしい。沖縄を出るのにパスポートが必要だった時代だ。ここからよくひとりで大都会の東京まで出て、道を切り開いてきたなぁと感心する。
母の姉が港まで迎えに来て、島を案内してくれた。
とんがり帽子は近くで見るとゴツゴツした岩山みたい。
ドライブコースは青空とサトウキビ畑。
断崖絶壁から見下ろす海。風と波の音が響く。
島の南西には洞窟がたくさんある。戦時中には防空壕として多くの命を救ったそうだ。洞窟の横には今は穏やかな海が広がっている。
大きな大きな空と真っ白な夏の雲。
緑が茂る山、サトウキビ畑、鮮やかなハイビスカスにゆらめく蝶々。
その全てを包み込む、雄大な青い海。
ここは宝島。
母も私も忙しく、伊江島を訪れたのは10年ぶりだった。
母の兄弟たちは「次に来るのはまた10年後?」と笑っていたが、このご時世では本当にいつになるかわからない。特に沖縄への来訪は当面の間自粛が呼びかけられている。
いつの日か、またあの海を見たい。