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鍼灸こばなし

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一般的には知られていない日本鍼灸界の実情や、誰も教えてくれないであろうお役立ち鍼灸ネタを随時UPしています。
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#中国

逆子の灸法について

逆子の灸法について

中国では灸を用いた逆子治療が、1000年以上前から行われているそうです。実際に、8世紀頃に記された『太平圣惠方』には、棒灸を利用した逆子の治療法が紹介されています。棒灸を用いた逆子治療は妊婦への負担が少なく、経済的で、効果が良いため、現在でも中国では盛んに行われているようです。方法はとても簡単です。至陰というツボを10分ほど温めるだけです。

中医理論では、至陰穴は足の太陽膀胱経に属する井穴と呼ば

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花甲(師匠の還暦を祝う)

花甲(師匠の還暦を祝う)

2016年某日、師匠の還暦パーティーがあった。私は予約しておいたホールのケーキと、還暦祝いに剪纸を持参することにした。

ケーキは最も見た目が美しく、実際に食べても美味しそうなケーキを選んだ。近所では見当たらなかったので、新宿のアンテノールで予約注文した。ケーキに載せる板チョコには「祝愿师父万寿无疆!(師匠が長生きでありますように!)」と、チョコペンで書いてもらった。「师傅」と書いてもらっても良

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胆嚢結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例4)

胆嚢結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例4)

ここ数年、メディアの影響で小食、粗食がブームになっており、1日1食が良いと主張する人もいれば、1日2食が良いと主張する人もいる。3食は獣、2食は人間、1食は聖などと言う人もいる。インドには食事を一切摂らず、「私は太陽を眺めているだけで生きてゆける」と主張する人もいるらしい。体を浄化するという断食も、根強い人気がある。

確かに大食、過食、偏食は心身を狂わせ、健康を損ねる可能性が高い。しかし常軌を逸

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腎臓結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例2)

腎臓結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例2)

食が欧米化し、飽食に溺れる日本人にとって、結石はもはや他人事ではない。しかし残念ながら、 鸡内金や金钱草、海金沙など、結石を溶かすと言われているような漢方薬を使った治療は、未だ日本では一般的ではないようだ。そもそも中药(漢方薬)は中国が発祥で、長い伝統ゆえに独自のノウハウが日々積み上げられている。傷寒論だけを読んで胡坐をかいているような日本人などは、相当な遅れをとっていると言えるかもしれない。鍼灸

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早発閉経の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例1)

早発閉経の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例1)

CCTVの『中华医药』では、中国国内の少数民族の伝承医学や、最新の針灸術、家庭で行える中医的な養生法などが主に紹介されている。中医関係の専門家も素人も、共に楽しめるような、有益な番組である。日本には「伝統医学に基づいた鍼灸を伝授します!」とか、「古典に基づいた鍼灸治療をしています!」とか、「ダイナミックな鍼灸で治します!」などと怪しく騒いでいる鍼灸師が少なくないけれども、そういった輩が主催する高額

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アメリカで鍼灸が動き出した日(H.R.6 into law!)

アメリカで鍼灸が動き出した日(H.R.6 into law!)

2018年10月24日、トランプ大統領がH.R.6という法案に署名した。

これまでアメリカでは、オピオイド薬による死亡者が年間数万人以上に上り、鎮痛薬の過剰摂取が社会問題になっていた。『Dr.HOUSE』で、Hugh Laurie扮するDr.HOUSEが、バイコディン(コデイン)中毒に陥ったのと同じような状況が、多くのアメリカ人においても現実になっていたわけだ。アメリカでは、2017年に約7.2

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「得気(とっき)」の重要性

「得気(とっき)」の重要性

得气(deqi、得気)という言葉は中医の世界では常識だけれども、日本では未だにほとんど知られていないらしい。私が学生だった当時、鍼灸学校で扱っていた教科書には得气について詳しく記されておらず、教員も知らず、同級生も知らず、図書館に置いてある自称日本鍼灸界の重鎮だとかいう鍼灸師が記した著名な本にも記されていなかったため、恥ずかしながら私も得气についてほとんど知らなかった。残念ながら日本鍼灸のレベルは

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中国針灸がユネスコ入りした話

中国針灸がユネスコ入りした話

2010年、針灸は無形文化遺産として、ユネスコにリスト入りした。と言っても、保護対象になったのは中国針灸だけの話であって、日本鍼灸はほぼ無関係だ。これに対し韓国は猛反発しているそうだが、日本ではこの話題自体に触れる鍼灸師が皆無に等しい。

そんな状況を鑑みると、中国針灸に対する情報収集能力に関しては、日本よりも韓国の方が優れていると言えるかもしれない。さすがは年間50億本と言われる針の世界製造市

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最新の刺鍼法

最新の刺鍼法

中医経典の1つである『针灸大成(針灸大成)』には、“病滞则久留针(病が長引くのであれば、針を長時間留める)”、と記されている。

つまり、すでに古代中国では、一定時間の留針(置鍼)によって、より良い効果を得られることが知られていた。

それゆえ、中国では、刺鍼の刺激量に関する科学的な研究が古くから行われ、太い針を用いた方が明確な効果が出やすいことが常識となり、中医は好んで太い針を用いるようになった

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