【再掲】【コラム】『全てを懸けて戦う。永井龍が見せた覚悟と惜別のゴール』

※2023明治安田生命J2リーグ第42節ツエーゲン金沢VSファジアーノ岡山のレビュー記事に掲載したコラムを再掲したものです

永井龍が見せた全身全霊のプレーに、心が打たれっぱなしだった。

入場時から顔つきが違った。いつも笑顔を絶やさず、底抜けに明るい生粋の関西人。それが永井に対する印象だ。今節は彼にとって岡山でのラストマッチ。今季は度重なるケガでほとんどをリハビリに費やした。ついに掴んだ先発出場は約1年ぶり。鋭い眼光を放ち、“ファジサポ”の方を何度も見ながらピッチに入場した。

最後の時計の針が動き出すと、背番号38は、一生懸命に、必死にプレーした。前線からの守備では二度追い、三度追いを披露し、スライディングで相手のクリアを阻む。スペースに流れるプレーとポストプレーで起点を作り、PA内では何度も相手と駆け引きしてボールを呼び込む。献身性、機動力、技術、ゴールへの姿勢。自分の力を存分に発揮し、存在価値を証明してやる。並々ならぬ覚悟を感じた。

そして、ストライカーは最高の形で結果を残す。28分、輪笠のクロスに体を投げ出して反応した。ボールが来る前に相手DFの背中を取り、前に出て、再び背中を取る。動き直してマークを完全に振り切ると、スライディングで押し込んだ。“生粋のワンタッチゴーラー”を象徴するような今季初ゴールだった。

タイムアップを迎えると、足を攣っていた。限界突破の全力プレーだった。勝利とはならなかったが、確かなものを、ピッチに、サポーターの心に残した。自分自身のために、支えてくれた家族のために。プロとして、ストライカーとしての意地を見せる。その姿は力強く、美しかった。

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