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日本経済の産業転換−製造業の縮小は避けられない

皆さんこんにちは。今回は日本経済の産業転換についての記事です。多くの日本人は日本経済の主要産業は「製造業」だと思い込んでいる人達が多いでしょう。しかし、付加価値や従業員数のデータを見れば、製造業が大きく衰退していることがわかる。高度経済成長期において製造業が大きな役割を果たしたため、日本の主要産業は製造業だと考えられています。たが、現在では非製造業が台頭し、製造業からサービス業へと産業が変わってきています。

変わり続いている日本の産業

農業から製造業へ

かつての日本の主要産業は農業でした。高度経済成長期の時代に入った時期では工業化が進み、日本の主要産業は農業から製造業へと転換しました。その影響により日本の国内総生産(GDP)や所得が拡大し、日本経済を支えた重要な産業になりました。下のグラフの産業別就業者数を見ればわかりますが、

産業別15歳以上就業者数の推移(大正9年〜平成17年)−総務省より

戦前では農業などの第一次産業が就業者数が1番多い割合ですが、時代が戦後の高度経済成長期に入った時期は、労働者が第一次産業から第二次産業に労働移転し、第二次産業の就業者数の割合が大きくなり、主要産業が製造業になりました。昭和後半期の日本の製造業は、主に自動車や鉄鋼、家電機器、化学製品中心に発展させました。また、工業化に伴い、人口が急激に増加や都市部の一極集中化などが起こりますた。農業社会が工業化する過程で高度な経済成長するのは、日本だけではありません。日本と同様に急成長する国や地域が、中国、韓国、台湾、香港、シンガポールなどのアジア圏の国と地域が工業化に成功して高度経済成長期が起こりました。

製造業の衰退

しかし、日本の製造業の拡大傾向は変わりつつあります。産業別就業者数の推移をみると、1950年代の製造業の就業者数は増加しまし、1970年代は約1400万人に増加しました。だがその後、1990 年代には製造業の就業者数が減少、サービス業の就業者数が増加、この結果、サービス業が製造業に代わって就業者数首位の産業になるという大きな産業構造変化が起こっています。

主要産業の就業者数の推移−経済産業省より

また、第一次産業である農林業は1950年代頃から大きく減少しており、建設業よりも低い水準であります。 

サービス業と製造業の名目GDPの比率で表したグラフを見てみると、1970年代はサービス業と製造業の間は小さいのですが、その後は大きく開き続けており、2000年代では、サービス業は約60%、製造業は約20%ぐらいになり、約40%の開きが生まれました。

名目GDPの産業別構成(1970年〜2000年)-内閣府より

このように名目GDPの比率を見ても、製造業は伸び悩み、縮小しています。1970 年代頃はサービス業と製造業は近い水準でしたが、1980年代ではサービス業は上昇しだし、製造業はほぼ一定の水準で停滞しています。その結果、2000年代ではサービス業と製造業の間は大きく広がりました。

世界の製造業

先程では日本の製造業の状況を解説していましたが、次は世界の製造業を見ていきましょう。実は製造業の縮小は日本だけではなく世界の先進国でも起きています。経済や産業は経済発展に伴って経済活動の重点が第一次産業から第二次産業、第三次産業へと移る現象を「ペティ=クラークの法則」というが、先程も説明したように、この現象は世界中の先進国で起きています。

ではアメリカの産業構造の推移を見ていきましょう。アメリカにおいても、1950年代以降から対名目GDP比率における財生産部門及び製造業のシェアは長期にわたり低下し続ける一方で、サービス部門のシェアは増加し続けており、アメリカ経済の産業構造の変化が見られ、現在では非農業部門就業者の約70%が民間のサービス業に就業している。

米国の製造業・サービス業のシェア-経済産業省より

他に、ドイツでは第一次産業が0.9%、第二次産業が30.5%、第三次産業が68.6%。イギリスでは第一次産業が0.7%、第二次産業が19.6%、第三次産業が79.7%。韓国では第一次産業が2.0%、第二次産業が37.7%、第三次産業が60.7%(2018年時点:国連より)となっており、先進国になれば、第三次産業の割合が高くなる傾向になります。

製造業縮小の理由

では何故、世界の先進国でこのような現象が起きているのでしょうか。
大きく分けて4つあります。
1.新興国の工業化
2.IT革命による技術進歩
3.国内需要低迷と変化
4.人口構造の変化
これらの要因を一つずつ見ていきましょう。

新興国の工業化

まず1つ目は‘’新興国の工業化‘’です。
先進国の第二次産業が縮小し第三次産業が主要産業に変化していますが、中国やインドや東南アジア諸国などの新興国では高度経済成長に伴い工業化に成功しました。新興国での経済状況では、労働人口が多く基本的に増加傾向である。また低コストで雇えるため、先進国の企業は工場を新興国に移し、大量で安価な労働力を獲得でき、企業の生産性を向上や工業製品価格の下落が可能になりました。
先進国では労働者を雇うのに高いコストがかかり、工業製品価格が高くなります。しかし新興国では先程も説明したように低コストで生産することが可能なので、製品が安くなります。先進国と新興国で値下げ競争をやっても、コスト削減の限界がある先進国では勝ち目がありません。
このような産業構造の変化の中で我々日本を含む先進国がやるべきことは、先進国の主要産業であるサービス業などの第三次産業を特化し、製造業を新興国と共存しながら、向上していくことです。

IT革命による技術進歩

2つ目は‘’IT革命による技術進歩’’です。それまで高価な大型コンピューターで行っていた情報処理が、現在ではPCなので行われるようになりました。通信ではインターネットの発達によって利用できるようになりました。
これまででは大型コンピューターを利用するのは大企業や大学、政府機関に限られ、個人や中小企業にはかなり難しい状況でした。ところがIT革命によって大企業や中小企業関係なく、比較的に安価で高精度なコンピューターを利用することができました。
21世紀になると、インターネットが大きく普及し国際間の通信コストがほぼ0となり、また経済的な距離も縮小し、市場競争の条件が大きく変化しました。人件費が高い先進国が、一部の業務を新興国に委託するようになったのです。

国内需要低迷と変化

3つ目は''国内需要低迷と変化''です。先進国では経済発展に伴い、市場における需要の変化が起きました。高度経済成長期では戦後復興の要因で自動車や鉄鋼などの物質的な需要が中心でしたが、20世紀後半以降になると、消費者はより高度な文化的、娯楽的な体験を求めるようになり、精神的な需要に変化して観光サービスや情報通信、金融・保険、医療・福祉、二次元コンテンツなどのサービス業への需要が膨らみ、ゲームやアニメを見るための機械製品などの製造業は海外移転し、海外で製造して国内に持ち込むというビジネス構造が生まれました。

人口構造の変化

4つ目は''人口構造の変化''です。先進国では高齢化や女性の社会進出などでサービス業への需要が増加しました。高齢化に伴い、福祉や医療などの安心安全のサービス業が求められました。また、女性の社会進出により子育て支援や家事代行サービス、塾などの教育のサービス業も求められ、サービス業の需要の変化に影響を与えました。

海外移転は回避できない

日本の製造業は、20世紀後半以降生産拠点の多くを海外に移転させています。製造業の事業を携わっている多くの日本企業は、日本国内市場の伸びに期待できないため、労働力が豊富で、需要拡大が期待できる新興国の市場に生産拠点を設け、工業製品を生産しています。

生産拠点を日本国内から海外に移転すれば、もちろん国内の生産力は減少します。こうした事態に主張されるのは「海外に生産拠点を移転すれば、国内の雇用やGDPが縮小してしまう。それを食い止めるために生産拠点を国内に戻すべきだ。」という意見があります。しかし、製造業の生産拠点を海外市場に移転することは需要や人口構造の変化などの経済状況の変動に対応する企業の経営行動の結果のため、今更海外から国内に戻そうとしようとしても遅いですし、日本国内から海外移転はかなり進んでいます。

生産拠点が国内市場にあるか海外市場にあるかは、それほど問題ではありません。1番大切なのは海外市場の利益を日本国内市場に持ってくれば良いのです。国内に生産拠点を置き、輸出で貿易黒字化にすることは現在の経済状況ではできないのです。だから、海外市場で生産した利益を日本国内市場に持ってきて、企業の黒字化を維持するべきです。また、現在では日本を含め先進国では、主要産業はサービス業などの第三次産業が中心です。ですので日本国内の雇用とGDPの問題は第三次産業に転換して、金融・保険業、飲食業、観光関連業、情報通信業、娯楽業、スポーツ産業などのサービス業を成長させ、海外に移転した製造業の穴埋めをすれば良いのです。先進国の欧米諸国では、製造業からサービス業に転換して、サービス業の生産性を上げ、大きく国の経済を活性化させています。日本でも「製造業は日本の主要産業」という認識をやめ、サービス業の育成や転換に注ぐべきです。

以上。





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