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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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#説教

書くこと

書くこと

「問題をよく読みなさい」とだけ生徒に言っても、「読んでるよ」としか答えようがない。しかし、現に読み間違いがあり、なかなかなくならない。
 
文が実は読めていない、という衝撃的な事実を提示したことで、『教科書が読めない子どもたち』といった本は、一時的に話題を蒔くことができた。だが、事の深刻さは世を変えるほどには至っていないように見える。その本を著した新井紀子氏は、AIの研究家である。その研究過程で、

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読書感想文のコツ

読書感想文のコツ

もう生徒たちは提出したことだろうが、夏は、読書感想文の課題がよく出る。近年は強要されなくなりつつあるが、以前は「必ず」書きなさい、という圧力があった。
 
感想文というものは、実に厄介だ。子どもたちは、原稿用紙を見ただけで尻込みすることが多い。もちろん、それが楽しくて仕方がない、という生徒もいる。私も、仕事で書かせることがあるが、そんなとき、板書は大きく次のことを書くだけだ。
 
 「楽しくかこう

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授業のたとえ

授業のたとえ

これは学習塾の話である。教師の立場の話である。子どもたちに、受けてよかった、と思われることを語りたいと思っている。言うまでもないが「ウケて」ではない。
 
テキストを解説するのは当然。書いてあることが分かる。もちろん。それを基にして、問われてきた問題に解答することができるようになる。そうありたい。その連続が、入試合格へと導くことになる。それが目的だ。
 
だが、それで終わりなのか。それが目的かもし

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共につくる

共につくる

息子がジャズのギターを学んでいる。大きなバンドでは、そう目立つばかりであってはならない。いや、小さなバンドでもそれはそうだろう。リズムを刻む重要な役割がある。しかし、ソロあるいはソロ・フィーチャーというような演奏の時間も与えられることがある。そこでは主役である。聴衆を魅了することが求められることになる。
 
そのソロだが、中にはきっちりフレーズも決めて、決めた通りに演奏する、というタイプの人もいる

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読めていない・聞けていない

読めていない・聞けていない

トリセツなどという言い方が通用するようになったのは、いつ頃からだろう。西野カナの歌が広めたのは確かだが、私自身はもっと以前から使われていたような気がする。根拠は見つからないので、話半分に聞いて戴きたい。
 
取扱説明書。製造物責任法にも関係して、どんな商品にも説明書が付くようになった。危険性については特に、警告をしておかなければ、責任が問われることになる。ところでこうしたトリセツ、私たちは、しっか

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読点

読点

文章を書くのが上手でない人の特徴の一つは、読点が打てない点にある。小中学生の作文を見ると、言いたいことが整っており、スムーズに伝わってくるときには、概して自然な読点が打たれている。だが、風呂上がりにジャージを穿くように、足がひっかかりもっかかりとなるような印象で読む文章は、読点の打ち方がおかしいという場合が多い。頻繁に不自然にブレーキランプが点く車の後ろを走るとドキドキすることがあるが、読点は、走

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言葉にならない

言葉にならない

詐欺師の語りというのは、話だけ聞いていると、尤もらしく聞こえるものである。後から振り返ればその誤りに気づくこともあるし、書いたものを冷静に読めば、騙されないという場合もあるだろう。歴史の中で、集団催眠にかかったように、国民がひとつの破滅的な空気の中に取り込まれ、その空気をつくっていったということを、私たちは悲しい経験として知っている。だが、知っているからといって、それを免れているというわけではない

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教え、教えられ

教え、教えられ

不思議なもので、うまい人が見ると、文章の上手さ下手さはよく分かるらしい。私の文章もそうで、人に読ませるようなものではないのだという。
 
だが、文章をそれなりに書き続けていると、小中学生の作文の指導くらいはできるようになってくる。彼らもまた、自分では頑張って書いているつもりなのだが、そこは教育的指導をこちらがすることで、いろいろ気づかされることがあるようだ。文章を比較的書き慣れているであろう生徒も

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それはわたしのことだ

それはわたしのことだ

小学生の国語の授業で、ある文章を読み解くことがあった。小学校のクラスで、互いにプレゼント交換をすることになり、それぞれ手作りのものを提出し、皆に配った。先生は、それを心をこめてつくったものを受け取ることを学ぶ機会としたかったのだが、うち一人が、あまりに雑なものに下手な絵が施されているものを、「これはひどすぎます」と皆に見せた。すると、クラスの皆が大笑いをした。それを作った当人が発覚する場面が続くの

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語る仕事の基礎

語る仕事の基礎

経験のない先生(小中学校の教師)のひとつの特徴は、子どもたちのほうを見ていない点にある。
 
確かに、自分がどのように教えるとよいのか、そこにまずは不安がある。どう教えたら善いのか、そのための準備がまず気になるはずである。そして教職課程でも、授業計画でも、またそうしたアドバイスを伝える本や雑誌でも、どう教えればよいのか、そこに主眼がある。
 
導入を考え、展開を構成し、結論を印象づける。どのように

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