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読書ノート

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本屋の息子なので、読書は今でも道楽の王道。 iPad のヘビー・ユーザーなので、僕のスタイルは、すべての本を裁断して、電子書籍化。 いつでもどこでも、マイiPad をスワイプしな…
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#読書レビュー

読書「十角館の殺人」綾辻行人

読書「十角館の殺人」綾辻行人

ミステリー紹介の読書系YouTuberのチャンネルを見ていると、とにかく、とにかく誰の動画にも登場しまくるのが本作です。
皆さんもう大絶賛。ケチをつけようなどという人は皆無です。
作者は綾辻行人。本作がデビュー作です。
今の若い人たちの心をどれだけ掴んでいるんだと感心したのですが、本作が発表されたのはなんと1987年。
今からもう37年も前の作品なんですね。
驚きました。
そんな長きにわたって、ミ

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読書「ユダの窓」カーター・ディクソン

読書「ユダの窓」カーター・ディクソン

YouTubeの「海外古典ミステリー」ランキングで、これまでに読んだことのある数々の傑作ミステリーを抑えて、堂々一位に輝いていたのが本作でした。
カーター・ディクソンは、ジョン・ディクスン・カーの別名義です。
彼の名前は、ミステリー・ファンとしては「密室トリックの名手」としてもちろん知っていました。
ミステリー界の中では大御所です。
しかし、個人的には彼の作品を読むのは、恥ずかしながら今回が初めて

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読書「Yの悲劇」エラリー・クイーン

読書「Yの悲劇」エラリー・クイーン

エラリー・クイーンの最高傑作と誉れ高いのが本作です。
「Xの悲劇」に続いて執筆された元舞台俳優探偵ドルリー・レーンが活躍するシリーズの第二作目です。
物語の中に、前作ロングストリート事件の話題が、ちょいちょい出てきます。
ワトスン役となるサム警視や、ブルーノ地方検事も引き続き登場。
レーンの住むハムレット荘の執事フォルスタッフや、メーキャップ係のクエーシー老人なども不動のキャスティング。
今でこそ

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読書「イニシエーション・ラブ」乾くるみ

読書「イニシエーション・ラブ」乾くるみ

ん?ん?ん?

え? いったい何が起きた?

正直申して、これが本作を読了した瞬間の偽らざる感想でした。

キツネにつままれたような気持で、さらにページをめくったら、もうそこに本文はありません。
僕が読んだ「ミステリー・リーグ特別限定版」では、作者による「11年目のあとがき」になっています。
もしや、これを読んだら「答え」の解説があるかもとおもってのそのまま読み進めましたが、書いてあるのはファンな

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読書「ジェリーフィッシュは凍らない」市川憂人

読書「ジェリーフィッシュは凍らない」市川憂人

本作は、2016年に発表された、第26回鮎川哲也賞受賞作品です。

そういえば、飛行船てみなくなりましたよね。
昭和の頃には、まだ企業宣伝用の飛行船がゆっくりと空を浮遊していた記憶があります。
日立の「キドカラー号」、ブリジストンの「グッドイヤー号」などなど。
たぶん、有人ではなかったと思います。
Wiki してみたら、今はメットライフ生命保険の「スヌーピーJ号」が、桶川の河川敷を本拠地にして稼働

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読書「アクロイド殺人事件」アガサ・クリスティ

読書「アクロイド殺人事件」アガサ・クリスティ

本書は、アガサ・クリスティの長編ミステリーの6作目。
彼女がミステリー作家として、認められることになった記念すべき作品です。
エルキュール・ポワロが活躍する小説としては、これが3作目に当たります。
執筆されたのは、1926年。ですから、今から、ほぼ100年前ですね。
実家が書店でしたので、ミステリーにはまっていた学生時代に、何度か手に取ったものの結局未読のままでした。
今にして思えば、なぜあの時に

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読書「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午

読書「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午

21世紀になってからの、日本ミステリーはかなり盛り上がっているようです。
1970年代後半から、ピタリとミステリーとはご無沙汰になってしまった老人ですので、最新のミステリーで読むべきは何かを選ぶのには、読書系のYouTuberの推薦動画を素直に参考にさせていただきました。
ミステリーは好みもありますが、概ねどの動画でも推薦されていることが多かったものが本書でしたね。

「見事などんでん返し」
「絶

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読書「なぜ宇宙は存在するのか」野村泰紀

読書「なぜ宇宙は存在するのか」野村泰紀

著者のYouTube動画を見たんですね。
「ReHacQ」や、物理系YouTuberの方との対談動画です。
野村氏は、物理学者であり、素粒子論と宇宙論を専門としています。
彼はカリフォルニア大学バークレー校の教授であり、同校のバークレー理論物理学センター所長でもあります 。
物理系のYouTube動画は、時々見たりはしていたんです。
けれど、なにせこちらは筋金入りの理系オンチであるため、まず理解

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読書「よだかの星」宮沢賢治

読書「よだかの星」宮沢賢治

昨夜寝る前に、ひさしぶりに「青空文庫」を開きました。
すでに、パブリック・ドメインになっている作品に限りますが、昔の作品が無料で読めるのは魅力です。
つらつらとタイトルを眺めながら、目に止まったのが本作。
7ページ程度の超短編です。

よだかという醜い鳥が、それゆえに周囲から虐げられて、絶望しています。
鷹には、その名前を変えなければ掴み殺すぞと脅されます。
このまま生きていても辛いだけだと思った

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読書「土佐日記」紀貫之

読書「土佐日記」紀貫之

土佐日記は、平安時代の歌人・紀貫之によって書かれた日記文学です。
934年(承平4年)に土佐守として赴任した貫之が、5年間の任期を終えて帰京するまでの船旅の様子を、侍女の視点から記しています。
なかなか凝った構成で、著者の遊び心が感じられます。
国司の重責を果たし終えた紀貫之が、京都の家に戻るまでの道中を、いっちょ日記にでもして楽しんでやろうかという開放感が感じられます。
肩の力を抜いたユーモアあ

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読書「新版画作品集 懐かしい風景への旅」西山純子

読書「新版画作品集 懐かしい風景への旅」西山純子

江戸時代の浮世絵、明治維新以後の光線画など、木版画の歴史をさかのぼってきました。
個人的な興味をそそられているのは、美人画、風俗画ではなく、なんといっても風景画です。
当然、その後の大正昭和期の木版画の盛衰も大いに気になるところ。
写真でもなく、絵画でもなく、どうして木版画の感触になんでこれほど惹かれるのか。
とにかく良いものは良いというしかなく、これは説明のしようがありません。
個人的に、うすう

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読書「名所江戸百景」一立斎広重

読書「名所江戸百景」一立斎広重

井上安治による明治初期の東京の風景木版画が、なかなか良かったので、時代をもう少し遡ってみようという気になり、今回は江戸の風景を描いた一立斎広重の浮世絵を集めた画集を図書館から借りて参りました。
この人は、江戸時代を代表する浮世絵師の1人ですが、僕が学生時代には、安藤広重と教わりました。
しかし、彼は62年の生涯で安藤広重と自ら名乗った事は1度もありません。
一立斎広重というのは、この連作浮世絵を制

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読書「官僚論」マックス・ウェーバー

読書「官僚論」マックス・ウェーバー

久しぶりに、関東平野に大雪注意報が出ました。
雪が降ってしまいますと、畑には行けませんので、ゆっくり読書と決めています。
今回図書館から借りてきていた本は、マックス・ウェーバーです。
政治学から経済学、宗教学から社会学と、彼の考察は、文化系学問を横断するような幅広いものです。
そんな彼の論考を全て理解できるような上等な頭脳を持っておりませんので、わからないものは無駄な抵抗はせずにスルー。
何とか自

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読書「社会契約論」ジャン=ジャック・ルソー

読書「社会契約論」ジャン=ジャック・ルソー

正月には、歴史的名著を一冊くらい腰を据えて読んでやろうと思っていました。
そこで選んだのがこの本です。
かなり敷居は高いですが、相手にとって不足はないと言う感じです。

我々ホモサピエンスが哺乳類最強の種族になった理由の一つに、社会性という能力を持つに至ったということが挙げられます。
社会性を持つことで、ホモサピエンスは協力し合い、知恵を出し合い、文化を創造することができました。

ルソーの社会契

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