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小学6年生だった頃の君の幻影を見ている
私たち兄弟にはお盆とお正月にだけ会える少し年上の従兄弟がいて、彼は長い間私たちの一歩前をゆく憧れのお兄ちゃんとして君臨していた。彼はいつも私たちに新しい世界を教えてくれた。ギャグ漫画もDSも面白いテレビ番組も、全部君が教えてくれた。
でも、今の彼は私たちの思い出のなかの彼とは少し違う。なんというか、社会のなかで色々なものを見て、大人になった。
そんなこと言ったら私だって弟だって等しく成長して、そし
MATERNITY-YELLOW【短編小説】
ゆうちゃん
ゆうちゃんはね、あたしをサンタクロースにしてくれた。
先生にしてくれた。
神様にしてくれた。
1才3ヶ月のとき、ゆうちゃん、あたしのこと"ママ"って呼んだよね。それなのにすぐ"おかあさん"に直して御免なさい。あたしね、少女のときから、自分の子におかあさんって呼ばれるの夢見てたのよ。許してね。
今日はね、ゆうちゃんにひとつ言わなくちゃいけないことがある。
ゆうちゃんが小学校にあがっ
思春期を軽やかに語る
髪を切りに美容室に行った。20cmくらいカットしたら鏡に映る自分が別人みたいで驚いた。シャンプー台に移るとき、床に落ちた自分の髪の毛を踏まなければならなかった。平気なふりしていたけど、ほんの少し前まで私を構成していたものなのだから、踏むなんて心が痛んだ。わざわざ美容師さんの前でそんなこと言っていられないのは21年生きてきて理解しているから、私の中の社会性が、笑顔で少し前まで自分の一部だった物質を踏
もっとみる私が運転免許を取りたくなかったのは
私が運転免許を取りたくなかったのは、本当はね、運転が怖いからじゃないの。大人になりたくないからなの。
どういうこと?って思うでしょ?でも聞いて。私にとって運転はいつもパパかママがするもので、私と弟は後ろの席に座ってる。車内にはQueenの「Jewels」ってアルバムが流れていて、乗り物酔いをしやすい私のために、高速道路に乗る前はコンビニでハイチュウを買ってもらうの。それが私の、車の中の記憶。
だ
君と一緒に見た桜がもう一度咲くころ
初めて人を好きになった。17歳。子供の恋愛って言われるかな。でも、あれを超える恋愛はもうできないと思う。それはまるで、閃光だった。
いつも会いたかった。いつも触れていたかった。嬉しいことがあると、綺麗なものを見ると、真っ先に伝えたくなった。
だけどずっと不安だった。いつも会いたかったのは、会わないとどこかに行ってしまいそうだったからかもしれない。ふとした瞬間に、もう好きじゃないって笑顔で言われ