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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年5月の記事一覧

第217話:努力は報われるか?

第217話:努力は報われるか?


空が青い ミャンマーで人が死んでいる

今日はいい天気でした。
昨日、今日はインターハイの県予選でした。
勝ち切れませんでしたが、生徒はいい試合をしました。
涙と笑顔と・・。

毎年、3年生が引退を迎えるこの試合、
勝たせてあげられない自分の無力を感じます。

ひたむきに努力することが大事
と言いながら、
努力が決して報われるものでもない
ということも伝えなければならない・・。

でも、
それで

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第97話:ちゃちゃ先輩が負けた理由

第97話:ちゃちゃ先輩が負けた理由

これはひょっとしたら、18禁でお願いしたいかもしれない。
辻仁成のエッセイ集『そこに僕はいた』の中に、「ちゃちゃ先輩が負けた理由」という話がある。
ちゃちゃ先輩というのは、辻仁成が高校時代に入っていた柔道部の先輩で、ムチャクチャに強く、またムチャクチャに硬派な人物である。いまどき硬派などということばは死語になりつつあるが、むくつけき容姿、柔道に対する厳しさ、口下手、不器用、硬く一直線だが、それでい

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第164話:呼ばれること

第164話:呼ばれること

「先生」と呼ばれるようになって40年近い年月が経とうとしているが、「先生」と呼ばれることにいまだに馴染めないでいる。

まともな先生はそんなことは感じないのだろうが、僕のように、およそ「先生」と呼ばれるにふさわしくない劣等教員にとっては、この呼称は何だか面映ゆい、重い、違和感の塊のような呼ばれ方なのである。

「先生」とは本来「先に生まれた者」なのであって、「後から生まれた者」である「後生」の対に

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第76話:呼ぶことと呼ばれること

第76話:呼ぶことと呼ばれること

くだらぬ話だが、僕は結婚当初、カミさんのことを何と呼べば良いのかさんざんに迷った。それまでは知り合ってから6年間、苗字で呼んでいたため、結婚と同時にその呼び方に行き詰まったわけである。

名前で呼べばよいではないかと思われるかもしれないが、そう呼ぶのはなんとなく気恥ずかしくもあり、ひとつ年上のカミさんを呼び捨てにするのも気がひける。

そこでカミさんに相談すると「『順ちゃん』って呼べばいいじゃない

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第111話:みんなボッチ

第111話:みんなボッチ

息子が小学生だった頃、家族でボーリングによく出かけた。雨の日や寒くて外に出られない休日に、有り余る元気をもてあまして欲求不満状態になる息子の「元気の捨て場所」としてボーリングが選ばれ、我が家の遊びのひとつのパターンとして定着したのだった。

息子も僕もカミさんも、たいしてうまくはないのだが、段々にはまっていき、息子は子供会の大会で180を出し、カミさんは貯めたポイントでマイボールを持つようになった

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第211話:ないことの証明

第211話:ないことの証明

小学生の時分に友人から何も書かれていない年賀状が届いたことがあった。

白紙の年賀状というのはなかなかに奇怪なもので、例えばみなさんも自分が白紙の年賀状を受け取った時のことを考えてみていただきたいのだが、それは多分、まったく奇異な出来事なんだろうと思う。

今であればパソコンのプリントミスだろうと、差出人の粗忽さを笑ってもみるところだが、僕が小学生だった昭和40年代にはそんなものはなく、まして小学

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第89話:お母さんのオチンチン?

第89話:お母さんのオチンチン?

[子育ての記憶と記録]

子どもがまだ小さい頃の話。

だいたいの子供はそうではないかと思うが、やたらと疑問を連発する時期があった。
答えるのに随分難しいのもあって、例えば、

などと言う。

「それはオバアチャンを生んだ人だよ」と言うと、

と言う。
人類の祖先は誰かという疑問かもしれないと思い、「サルじゃないか」と言うとキョトンとしていた。

かと思えば、

と言う。

「それはね。地球がうん

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第103話:ボケ論争

第103話:ボケ論争

最近、僕ら夫婦の間でどちらが先にボケるかという問題がこのところ話題となり、熱い論争となったりしている。

僕はカミさんはまずボケるだろうと思っているし、僕より先にボケるだろうと思っているのだが、カミさんは「あなたみたいに自分は絶対ボケないと言っている人ほど早くボケるの」と言って憚らない。

特に二人とも決定的な論拠を持たないので、論争は常に平行線なのだが、最近どうもカミさんの様子がおかしく、僕の予

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第62話:好き嫌いは個性か?

第62話:好き嫌いは個性か?

小さい時分、僕は食べ物の好き嫌いが激しく、肉や魚はほとんど食べなかった。特に肉はダメで、自慢ではないが、高校を卒業するまであまり食べた記憶がない。大学に入ると自炊では焼肉が一番手軽なのでそれなりに食べるようにはなったが、今でも血のしたたるステーキなどという代物は「うまい」と思って食べたことが、ただの一度もない。

では何を食べていたのかと言えば、芋・蒟蒻の煮物とか大根の切り干し、大根・人参・ゴボウ

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第60話:恋と愛

第60話:恋と愛

古典では恋しい男女が互いを思い合うと、肉体を離れた魂同士が夢の中で会えると考えられていた。(もしよろしければ59話を見てください)

そのお互いの魂が夢の中で通い合うルートを「夢の通ひ路」とか「夢のかけ橋」と呼ぶのであるが、天空の星の輝きの中に虹のような橋がかかり、その上を恋しい人が向こうからやって来るなどという想像は、確かにしてみるだけでも楽しいものではある。

小野小町に「いとせめて恋しき時は

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第59話:夢のない夢の話

第59話:夢のない夢の話

古典の世界では、夢は「イメ」なのであって、これを「寝目」と書く。精神世界の豊かだった昔は眠りに落ちると魂が肉体から黙って抜け出し、勝手にあちこちを散歩なさっていた。そんなふうにムクロを抜け出した魂が外出先で目にしたものが夢だと考えたのだという。その意味でまさに夢は「寝目」なのである。

愚問ではあるが、皆さんは夢をご覧になるだろうか。実のところ、この何年か、僕はほとんど夢を見ていない。カミさんは「

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第88話:死語について

第88話:死語について

図書館で読む本を物色していると『現代死語辞典』という本に出くわした。ほーっと思い手に取ると、なるほど古びた懐かしいことばが並んでいる。

ちなみにその中から僕の実感の中にある身近なことばを幾つか拾ってみる。

赤線
赤チン
内風呂
エアガール
おさんどん
オート三輪
おひつ
蚊帳
行水
猿股
シミちょろ
ズロース
雪隠
洗濯板
乳バンド
どかべん
虎刈り
寝圧
ねんねこ
はばかり
べいごま
坊ちゃ

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第43話:自分という死角

第43話:自分という死角

愚話である。

学生時代、僕はテニスをしていたのだが、年に4回の合宿、遠征などを合わせるとそれなりの日々を、仲間と共同生活していたことになる。懐かしいテニス漬けの日々であり、同じ釜のメシを食った何にも替え難い友を得られたことに感謝したいと思っている。

しかし、共同生活とはまた普段には分からないそれぞれの人となりが露呈されるもので、彼らのそれも「一生の仲間」という高級な表現に甚だそぐわない、およそ

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第156話:現実逃避短歌

第156話:現実逃避短歌

先日の秋の一日、久しぶりにのんびりと山歩きをしたのであるが、蓑虫を見たのをきっかけに、ふと短歌が口をついて出ると同時に、現実逃避の世界に入った。
およそやる気に欠けるくだらぬ世界なので、読まずにパスしていただければ幸いである。

第1章

日溜まりに蓑虫を発見する。

●この温い寂しさがいい ぽかぽかと日溜まりにいるみのむしといる

心地よい風に蓑虫がふらりと揺れる。

●風吹けばゆらりと風に揺れ

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