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ばらの花

弟は月5万のお小遣いをくれる。
 
俺がこの家に払う金は一銭も無い。弟が拒むのだ。電気代位払うと言うと「見栄をはるな」とまるで父親気取りだ。この5万は日々の昼食と社会復帰活動にあてろと言うことなのだろう。俺は甘える。
 
今日は宅配で有名ラーメン店の油そばを頼んだのだが、全然美味しくなかった。宅配に向いてない食事ランキング文句なしの第一位だ。それに1300円も支払った。
 
俺は何してるんだろう…毎日考える。溜まった目やにを擦りながら、昼寝に着く。起きる頃には弟が帰宅し食事を作っている。それが日々のローテーションだ。
 
今日の主菜は挽肉と筍の梅肉炒めだ。山椒がアクセント。俺が好きな食事。
「これ好きなんだよねぇ」
「結構手軽に作れるよ」
遠まわしに自分で作れと言ってるのだろうか。そう考えるのは俺が捻くれてるからか?
「俺不器用だから」
「それ音楽家としてどうなの」
「……」
 
その後、沈黙のまま食事を終えた。それは俺なりの優しさだ。イラっとしてる時喋ると言葉がプルプルしちゃうから、黙る事でせめてもの平穏な空気を保ってる。…何様なんだろう、俺は。
 
自室でくるりの『ばらの花』を聴く。子どもの頃、弟はこの曲を「俺達の曲だね」と言った。俺は「馬鹿、これは男と女の曲なんだよ」と言った。どっちにしたって、独りよがりの俺には勿体無い曲だ。

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