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ポップカルチャーは裏切らない

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”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。
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2024年3月の記事一覧

断念から始まる世界/森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」【本の感想】

断念から始まる世界/森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」【本の感想】

1月に刊行された森見登美彦4年ぶりの新刊「シャーロック・ホームズの凱旋」。本作はヴィクトリア朝京都なる世界を舞台に、名探偵シャーロック・ホームズや助手のワトソン君をはじめ、シャーロックシリーズでお馴染みのキャラクターが登場する二次創作シャーロック作品でもある。

京都の建築や地名がひしめき、登場人物のパーソナリティも少しずつ異なる“京都リミックス”が施された本作。おまけにシャーロックがスランプで謎

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アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる①(1~24話)

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる①(1~24話)

30歳を迎え、子供が生まれ、取るべき資格試験を一応全て終え、人生が一区切りついたように思うこの折。こういう時こそ、自分のルーツに向き合おうと思い今年からNetflixで配信開始となった『ボボボーボ・ボーボボ』を観直してみたのだが、あまりにも私のポップカルチャー体験の原点すぎて感動すらしてしまった。超越、突飛、不条理。好きな表象表現の全てがあったのだ。

『ボボボーボ・ボーボボ』は澤井啓夫・作で20

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そのリズムに転がされ【遅日記】

そのリズムに転がされ【遅日記】

3-4時間おきにミルクを作り、我が子に飲んでもらうというルーティーンが日常に加わって幾ヶ月か経つ。3月から育児休暇を取ってからはさらにそのリズムと併走して生きている。ミルクを与え、眠りこけることもあれば、泣いてオムツを変えることもある。吐き戻したり、しゃっくりで落ち着かなかったり。様々なパターンがある。

我が子が穏やかなタイミングを見てあれこれと用事を済ませたり、穏やかじゃない時も断腸の思いで用

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街裏ぴんく/虚構の身体性

街裏ぴんく/虚構の身体性

街裏ぴんくがR-1グランプリを獲ったという嘘のような本当の報せにとてつもなく心が踊った。そして実際に放送を確認して更に興奮する。ピン芸という何でもアリの大会において、漫談というステゴロなスタイルで勝ち切っており、しかも最終決勝ネタは彼のポッドキャスト番組「虚史平成」で放送された漫談をベースにしていたからだ。

これだけ多彩な笑いの選択肢が溢れる現代において、彼のスタイルはどんな場所でも変わらない。

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ジブリパークの記憶をたどる

ジブリパークの記憶をたどる

1年と少し前、愛知に住んでいた時期に2度ジブリパークに行った。その時はまさか「君たちはどう生きるか」が人生レベルの大事な映画になるとは思っていなかったので、ジブリへの興味関心はそこそこ、トトロとぽんぽこは大好き、ぐらいのテンションで行ったのだった。

久々にその写真を読み返すと、どこか不思議な感じがした。その不思議さを言い当てるべく、ジブリパークの記憶を写真と共に辿りながら振り返っていこうと思う。

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戻れないけど消せもしない/Base Ball Bear『天使だったじゃないか』【ディスクレビュー】

戻れないけど消せもしない/Base Ball Bear『天使だったじゃないか』【ディスクレビュー】

子どもが生まれてから生活は変わった。粉ミルクを溶かす時間がルーティーンに組み込まれ、泣き叫べばオムツを変え、それでも泣き続けるならば抱っこする。当たり前のことだが、妻とともに育児に向き合う日々は去年までの自分とは全く違う。しかし買い物に行ったり、出勤したりする時にはいつも1人。そんな時、慣れ親しんだ音楽を聴けば自分が我が子の親になったという事実と同時に、今までと変わらない自分もまたここに居続けてい

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