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ジブリパークの記憶をたどる
1年と少し前、愛知に住んでいた時期に2度ジブリパークに行った。その時はまさか「君たちはどう生きるか」が人生レベルの大事な映画になるとは思っていなかったので、ジブリへの興味関心はそこそこ、トトロとぽんぽこは大好き、ぐらいのテンションで行ったのだった。
久々にその写真を読み返すと、どこか不思議な感じがした。その不思議さを言い当てるべく、ジブリパークの記憶を写真と共に辿りながら振り返っていこうと思う。
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ジブリパークは愛知県長久手市のモリコロパークに建設されている。モリコロパークといえば、近年では04 Limited Sazabysの「YON FES」の会場であり、かつては愛・地球博の会場として知られている。そのため、モリゾーとキッコロの幻影が今でも園内にはある。
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園の象徴的な存在である時計塔エレベーター。これは特定のジブリ作品から持ってきた建築ではなく、あくまでラピュタの世界観をイメージしただけのもの。そう、ジブリパークは”完全再現“がアピールされがちだがオリジナルの要素も多い。
たとえば「となりのトトロ」をモチーフにした“どんどこ森”。ジブリパークの起点となった「サツキとメイの家」は全く隙のない、凄まじい再現度である。
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一方、山を登って現れるのは傘を被ったトトロのモニュメント。これは全くのオリジナル要素だ。こんな櫛形の歯を持つトトロは劇中にはいない。
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「青春の丘」にある“地球屋”も再現度は圧巻。中は撮影禁止だが、是非とも一目見ていただきたい。
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しかし“地球屋”の前には、ムタさんの家がある。「耳をすませば」の月島雫が書いたという設定の「猫の恩返し」の世界観がそのまま実体化している。また「耳をすませば」の劇中に登場する観念的な光の道も、“地球屋”のすぐ下に作られていた。
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ジブリパークには人間のスタチューが存在せず、実際にその世界の中に身を置いているという没入感はある。その一方で完全再現ではなくある種の”イメージ“を具象化したような部分も多く、そのバランスが絶妙なのだ。
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言うなれば、我々の脳内で圧縮され保存されているジブリの風景が公園に析出しているような質感なのだ。この門と像を見ると、「千と千尋の神隠し」をブワッと想起するわけだが、その先に湯屋はない。ただ、このひと要素が記憶をくすぐっていくのだ。
圧縮された記憶空間という側面は「ジブリの大倉庫」というブースがそれを象徴している。次々と現れる名場面、その通路に設置された作品無関係の展示。トトロがカフェなんてやるわけないが、なんとなくそれをアリにしてしまえる情報量があるのだ。
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その最深部と言えるのが、様々なスタチューが置き捨てられているゾーン。ジブリ世界のスケッチのような、キャラクターたちの源泉のような、それでいて終結する場所のような、混沌とした空間で心がざわついた。
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私は「君たちはどう生きるか」を観た時、この混沌をわずかに想起した。イマジネーションが渦巻き続け、具象を成していないようなカオスはジブリパークにも忍ばされている。そもそも存在しなかったはずの“記憶の場所”が後天的にひしめき合うジブリパークとは、まさに「君たちはどう生きるか」そのもののような作品性を誇っている、と後に気づくのだ。
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ジブリ映画が多くの人々の記憶に根付いたからこそ、ジブリパークは思い出の圧縮空間としてカオスとともに成立することができたのだと思う。これからさらに、その空間は広がっていくのだという。まだ見ぬ混沌の先、末長く愛される場所であってほしい。
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