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散文詩

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#真実

記憶の庭園 《詩》

記憶の庭園 《詩》

「記憶の庭園」

僕は其処に

ひとつの季節の匂いを感じていた

現実と幻想の境目

僕が死んだのは
もう一度再生する為だ

そうやって全ての事柄は

死に再生する

生命の萌芽を湛えた空が

海に溶け落ちる

其処にはどの様な地点も無く

時間の感覚さえも無い

死の無いところに再生は無い 

そう彼女は静かに囁いた

永遠とは
終わりなく何処までも続く道

僕は記憶の庭園で

彼女と会話を交わ

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鱗片 《詩》

鱗片 《詩》

「鱗片」

細長いグラスに

注いだ冷えたシャンパン

細かく立ち上がる

気泡の先に見えた淡い光

まばらに点在する 

それらの綺麗な光

ささやかな温もりに似た灯りを
其の中に感じていた

生と死の境界線が微妙に揺れた時

淡い光が僕に囁きかけて来る

真実が連れて来た無制限の孤独

鱗片状の慈愛が剥がれ落ちる

流れる様に艶やかな彼女の髪と

静かに話す言葉の文脈

其の対局にある確かなも

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春の風 《詩》

春の風 《詩》

「春の風」

其れは
間に合わせで作られた世界の中で

全ての辻褄合わせとは

かけ離れた場所にある

唯一の真実の様に煌めいていた

決して強い輝きではなく 

見逃してしまいそうな

弱く消えそうな光

限りなく透明に近い生命の輝き

窓の外の冬に似た静寂と

月を待つ夜に似た漆黒が混ざり合う

見捨てられた街に佇み

昼と夜の狭間に腰掛けていた

顔を持たない人々が通り過ぎてゆく

奇妙で

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チバユウスケ 《詩》

チバユウスケ 《詩》

「チバユウスケ」

ねぇ聞かせてよ 其処の世界の音

ねぇ教えてよ 空で花を見たか 

僕は読みかけの小説を閉じて

煙草に火を付ける

また空が落ちてくる

憧れの森の中

歩いてるけど目は閉じたまま

現実と言うその深い海に似た

無限の森が僕を包み込む

赤みのかかった 月が昇る時

それで最後だと僕は聞かされる

真実は突然 空から降って来る

ロックンロールみたいに

嘘ばかりをつき続け

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月見草 《詩》

月見草 《詩》

「月見草」

いつも僕は青空を望んでいた 

其処に澄み渡る
青がある事が当然の様に

燃える太陽 

その光を受けて暗闇の星は輝く

眠れない僕達は

夜空の月を連れて
真夜中に外へ出かけた

真白な淡い光に
つつまれて夢を見る 

月見草

静かな森の湖 

独りじゃない 嬉しかった

ふたりは朝が来るまで愛し合った

僕等の真実 君の好きな青と白 

その色で世界は出来ていた

そして 

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オレンジジュース 《詩》

オレンジジュース 《詩》

「オレンジジュース」

純粋で透明な氷が
オレンジジュースに溶けていく

透かして窓の外を見渡す

不均一な混ざり合いの中 
屈折した街の灯りが見えた

押し付けがましく喋る
テレビのスイッチを切り

君を抱き寄せた

僕は剥き出しになった
正直さを隠しきれず

欲望と正比例する様に

深く君の中に沈み込む

真実を示す必要も無く 

リスクを回避する必要も無い

凡庸を固着させ
切り取った様な絵

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岩国バイブス 《詩》

岩国バイブス 《詩》

「岩国バイブス」

岩国 川下 アメリカンスラム

川向こうの朝鮮人部落

橋の下に住む片腕の浮浪者
金庫には札の束

チンタラ歩いてると
引っ掛けられるぜ

ひねくれた真実 勘繰り

足りない頭で稼ぎ出す現生

乗りこなして来た波  

感覚 直感 初期衝動

価値観が呼び合う 
無言で交わす意思疎通

岩国バイブス 
お前の持ち掛ける甘い案件

岩国バイブス 
奴等の正体 焼き付けた網膜

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虎と龍 《詩》

虎と龍 《詩》

「虎と龍」

嘘ばかりをつき続けて
誤魔化した孤独

見透かされた作り笑顔

罪を重ねた刻んで来た時

独り紛れた嘘の波

消えない炎に投げ入れた後悔

雷鳴引き裂き崩れ落ちる空
悪夢の向こうに探した真実

勘ぐり判断基準 損得勘定 
糞気怠い午後

吐き出した煙草の煙

胸にあてた手のひら

手を出しなよ 
片手じゃ足りない
両手を広げて

素通りする女神を抱きしめてみろ

輩に売女 
中身の無

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