Shinichi Sato

人がつくった風景を愛する写真家。20歳のときに4×5判カメラを購入して以来現在でもクラ…

Shinichi Sato

人がつくった風景を愛する写真家。20歳のときに4×5判カメラを購入して以来現在でもクラシックなスタイルのビューカメラを愛用。独特な透明感のある作品が持ち味。インテリア・建築・庭園写真のスペシャリスト。https://satoshinichi.com/

記事一覧

2023年

2023年もあと数時間で終わろうとしている。 私の2023年を漢字一字で表すとしたら、「痛」だろうか。 5月に大怪我をして救急搬送され、今年後半は手術後のリハビリに費やす…

Shinichi Sato
6か月前
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人で輝く街「下北沢」

「商店建築」誌で撮影の仕事を始めてから今年で30年になる。 同誌は名前のとおり、主に商業に関わる建築やインテリアのデザインを取材し掲載している建築の専門誌。1956年…

Shinichi Sato
2年前
18

iPhone 12 Pro Max と LEITZ PHONE 1

昨年のクリスマスにiPhone 12 Pro Maxを買った。 iPhone 13シリーズが発表になったところだが、約9ヶ月使ってみた感想を書いてみる。先月2021年8月に発売になったばかりの…

Shinichi Sato
2年前
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連載をはじめました

2000年の写真集、2002年の個展以来、個人としての作品発表から遠ざかっていたが、今年2021年の1月号から月刊商店建築誌にて連載をはじめた。 撮り続けてきた都市風景の写…

Shinichi Sato
3年前
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花の都大東京

死にたいくらいに憧れた花の都大東京、長渕剛の歌の歌詞の一節だが、この東京に暮らして今年で36年、歌のように東京に憧れ18で九州大分から上京してきた私は、郷里で過ごし…

Shinichi Sato
4年前
18

庭とはなんぞや

庭「にわ」と聞くと、一般には住宅の庭が思い浮かぶ。庭園「ていえん」となるともう少し規模が大きく、寺社の庭や公園的な場所がイメージされるが、日本において庭園と呼ば…

Shinichi Sato
4年前
15

love the life

昨年2019年の今日3月17日夕刻、長年のクライアントであり、友人であり、かけがいのない私の写真の理解者であったヤギタカシ氏が亡くなった。 享年50歳。東京から京都に転…

Shinichi Sato
4年前
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Behind the Scene 渋谷宮益坂

2020年1月23日、ついに雨が降った。 2017年から同じアングルで渋谷宮益坂の交差点を毎年1月に撮っている。 なぜ1月なのか・・私は年始の挨拶状(年賀状)として自分の写真…

Shinichi Sato
4年前
4

写真を撮るのではなく自分の眼で感じること

先日のとある撮影でのこと。 暗いうちに小高い山に登り、夜明けを待つ。刻々と表情が変化していくなか決定的瞬間を撮り漏らさぬよう粛々とシャッターを切ってゆく。 明るく…

Shinichi Sato
4年前
10

私、失敗しないので・・

テレビドラマの主人公、凄腕外科医の決めゼリフである。 このドラマに登場するこの場所でカメラを構える・・たとえばこの男、 私はどうか・・ もちろん、クライアントに…

Shinichi Sato
4年前
3

いざという時にどこに入れたかわからない・・

昨日の現場でのこと。 ムービーカメラマンの車と2台で現場入り。 撮影ポイントの公園内の森のようなスペースまで管理用道路を進んで行き、先行するムービーカメラマンの車…

Shinichi Sato
4年前
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私と韓国

私はこれまで何度となく韓国を訪れ、各地の撮影現場で出会った人たちと親交を深めてきた。親友と呼べる韓国人の友人もいる。日常的に接していなくても彼ら一人一人との信頼…

Shinichi Sato
5年前
5

OB会

人生で一度だけ就職した会社のOB会(転職や独立した人たちの集まり)に誘われた。考えてみると学校の同窓会にも一度も行ったことがなく、同窓会的な会に参加したのは初めて…

Shinichi Sato
5年前
12

Behind the Scene

令和元年の年賀状をつくろうと思い立って頭に浮かんだテーマは皇居と東京オリンピック。天皇交代の意味で皇居はふさわしいと思ったが、大きく変化することのないその佇まい…

Shinichi Sato
5年前
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2023年

2023年

2023年もあと数時間で終わろうとしている。
私の2023年を漢字一字で表すとしたら、「痛」だろうか。

5月に大怪我をして救急搬送され、今年後半は手術後のリハビリに費やすことになった。搬送先の病院で「手術が必要で全治6ヶ月」と聞かされた時には、カメラマン人生が終わった、と思った。

2023年12月31日、入院で落ちた筋力は理学療法士による適切なリハビリ指導のおかげでバランス良く強化されて回復し

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人で輝く街「下北沢」

人で輝く街「下北沢」

「商店建築」誌で撮影の仕事を始めてから今年で30年になる。
同誌は名前のとおり、主に商業に関わる建築やインテリアのデザインを取材し掲載している建築の専門誌。1956年創刊だから今年で66年の歴史を誇る。
先月6月28日に発売になった最新号2022年7月号で巻頭の大特集 変貌する「下北沢」の撮影を担当した。

私は生業として主に建築やインテリアを撮影してきたが、大学時代のゼミは報道写真だった。大判の

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iPhone 12 Pro Max と LEITZ PHONE 1

iPhone 12 Pro Max と LEITZ PHONE 1

昨年のクリスマスにiPhone 12 Pro Maxを買った。
iPhone 13シリーズが発表になったところだが、約9ヶ月使ってみた感想を書いてみる。先月2021年8月に発売になったばかりのライカのスマホLEITZ PHONE 1も気になるので、店頭で触った印象も含めて。

私はプロの写真家である。
仕事では、撮影後に明るさや色調などを調整できるRAWという形式で撮影するが、iPhone 12シ

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連載をはじめました

連載をはじめました

2000年の写真集、2002年の個展以来、個人としての作品発表から遠ざかっていたが、今年2021年の1月号から月刊商店建築誌にて連載をはじめた。

撮り続けてきた都市風景の写真を連載する企画をS編集長に相談したのは2019年夏。来たる2020年オリンピックイヤーの東京の街並みを記録し綴っていく、というのが当初のプランだった。
東京の街は常に変わり続けている。それぞれの年にそれぞれのドラマがあり、ど

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花の都大東京

花の都大東京

死にたいくらいに憧れた花の都大東京、長渕剛の歌の歌詞の一節だが、この東京に暮らして今年で36年、歌のように東京に憧れ18で九州大分から上京してきた私は、郷里で過ごしたちょうど倍の月日をこの東京で過ごしてきたことになる。

緊急事態宣言が解除された直後の5月30日土曜日(緊急事態宣言は5/25に解除された)銀座4丁目交差点の三越銀座店が営業を再開したその日に、私はその三越の前にカメラを据えてこの写真

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庭とはなんぞや

庭とはなんぞや

庭「にわ」と聞くと、一般には住宅の庭が思い浮かぶ。庭園「ていえん」となるともう少し規模が大きく、寺社の庭や公園的な場所がイメージされるが、日本において庭園と呼ばれている場所は必ずと言って良いほど何らかの建物と一体になっている。建物と庭(庭園)はどちらかが主でどちらかが従という関係ではなく、両者が一体になることで一つの造形、景観として成り立っている。

庭とは何なのか?日本庭園とは何なのか?ウィキペ

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love the life

love the life

昨年2019年の今日3月17日夕刻、長年のクライアントであり、友人であり、かけがいのない私の写真の理解者であったヤギタカシ氏が亡くなった。

享年50歳。東京から京都に転居してから会う機会は少なくなり、その日の朝まで闘病中であることを知らなかったが、亡くなる日の朝に報を受け、奥様と共に彼を看取った。

インテリアデザイナーであり、日本のインテリアデザイン研究の開拓者であり、亡くなる直前まで京都造形

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Behind the Scene 渋谷宮益坂

Behind the Scene 渋谷宮益坂

2020年1月23日、ついに雨が降った。

2017年から同じアングルで渋谷宮益坂の交差点を毎年1月に撮っている。
なぜ1月なのか・・私は年始の挨拶状(年賀状)として自分の写真のポストカードを毎年つくっているが、年末は仕事に追われ年賀状を書く(つくる)余裕がなく、次第に年明けに寒中見舞いや余寒見舞いとして出すようになって、そのための写真を1月に撮るのが恒例になっているから。

2017年は何日か通

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写真を撮るのではなく自分の眼で感じること

写真を撮るのではなく自分の眼で感じること

先日のとある撮影でのこと。
暗いうちに小高い山に登り、夜明けを待つ。刻々と表情が変化していくなか決定的瞬間を撮り漏らさぬよう粛々とシャッターを切ってゆく。
明るくなり始めてから日が昇るまで30分あまり、「夜明けのショータイム」はあっという間に終わった。
私は仕事として写真を撮っている、読者(クライアント)に最高に感動的なシーンを見てもらうべく、とにかく仕上がった写真がベストになるようカメラ操作に全

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私、失敗しないので・・

私、失敗しないので・・

テレビドラマの主人公、凄腕外科医の決めゼリフである。

このドラマに登場するこの場所でカメラを構える・・たとえばこの男、

私はどうか・・

もちろん、クライアントに納品できないような失敗はしない。しかし、あの時もう少しこうすればよかった、あの方法があった、など自分の中での反省=小さな失敗をしなかった現場はこれまで一度もない。

同世代の現役サッカー選手が言うように「俺ってこんなやってんのになんで

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いざという時にどこに入れたかわからない・・

いざという時にどこに入れたかわからない・・

昨日の現場でのこと。
ムービーカメラマンの車と2台で現場入り。
撮影ポイントの公園内の森のようなスペースまで管理用道路を進んで行き、先行するムービーカメラマンの車が少しだけ路肩に寄った次の瞬間、車体が大きく傾いた。草で完全に隠された側溝に左前・後輪共に脱輪してしまったのだ。

私の眼にも全く気付かない、完全に落とし穴に落ちたようなまさかの出来事。
私が先行していたら間違いなく私の車が脱輪していた・

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私と韓国

私と韓国

私はこれまで何度となく韓国を訪れ、各地の撮影現場で出会った人たちと親交を深めてきた。親友と呼べる韓国人の友人もいる。日常的に接していなくても彼ら一人一人との信頼関係にはいささかの不安も感じていないので、あえて何かを言う必要はないのだが・・このところの日々の報道に接していると黙っていることが不安になってきた。というか、韓国について自分がどう思っているか黙っていてはいけないと思うようになってきた。

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OB会

人生で一度だけ就職した会社のOB会(転職や独立した人たちの集まり)に誘われた。考えてみると学校の同窓会にも一度も行ったことがなく、同窓会的な会に参加したのは初めてだった。社会人になってからの7年間を共に過ごした先輩や後輩との再会は想像していたよりずっとポジティブで感慨深いものだった。

私は大学を卒業してすぐに商業施設の設計施工を手がける会社にいわゆる社員カメラマンとして就職した。カメラマンという

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Behind the Scene

Behind the Scene

令和元年の年賀状をつくろうと思い立って頭に浮かんだテーマは皇居と東京オリンピック。天皇交代の意味で皇居はふさわしいと思ったが、大きく変化することのないその佇まいの「いま」を見せるには周辺の景色を写し込むしかなく、皇居周辺でなかなかふさわしいシーンを見つけ出せず断念。まったくベタだが東京オリンピック2020のメインスタジアム、建設中の新国立競技場を撮ることにした。

高いビルから俯瞰出来るポイントは

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