OB会

人生で一度だけ就職した会社のOB会(転職や独立した人たちの集まり)に誘われた。考えてみると学校の同窓会にも一度も行ったことがなく、同窓会的な会に参加したのは初めてだった。社会人になってからの7年間を共に過ごした先輩や後輩との再会は想像していたよりずっとポジティブで感慨深いものだった。

私は大学を卒業してすぐに商業施設の設計施工を手がける会社にいわゆる社員カメラマンとして就職した。カメラマンという職種は私一人、ほかは全員設計や施工部門、管理部門の人たちだ。当然写真撮影業務を教えてくれる先輩はおらず、入社直後から現場に出て撮影して来いという無謀なスタートだった。時代はまさにバブル景気に突入したところ、同社が手がける商業施設は全国におびただしい数あり、明けても暮れても現場に出て出来たばかりの店舗を撮影する日々が1995年に退社・独立するまで7年間続いた。

社員カメラマンといっても本体の設計会社の所属ではなく系列会社の社員であり、系列会社、と言っても本体の社長が社長を兼任、部長が一人いて、あと私だけ。社長と部長は本社ビルにいて、私は設計事務所ビル内の大型青焼き機があるコピー室と呼ばれる部屋にデスクがあった。同僚や先輩後輩と一緒に働くという職場環境ではなかった私を飲み会やキャンプに誘ってくれたのが本体設計会社の大型商業施設を企画・設計するチームの人たちだった。

フリーランスに憧れ、カメラマンとして独立することだけを目標にしていたサラリーマン時代。当時は毎朝の通勤や面倒臭い日報書き、経費の精算などにうんざりしていたが、職場にはたくさんの人がいて日々の会話があり、時間を共有していた。その人たちに出会えたことがかけがえのない宝物だったということにあらためて気付かされた会だった。企画してくれた先輩がメールに書いていたが、皆そこにいた時代があるからこそ今の自分が創られている・・まさにそのとおりだとしみじみ思う。

同窓会(OB会)=過去を懐かしむ、というのは前向きじゃないと敬遠していたが、がむしゃらに突っ走ってきた時代を共に過ごした仲間に実際に出会うと、全くマイナスな感情は起きなかった。「懐かしい」という感情すら起きなかったと言っていい。集った皆がそれぞれの分野で活躍されているからだと思うが、過去の自分を思い起こし、初心に戻って新たな気持ちで前に進む力を頂いたことに感謝。

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