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重ねる経験、見える穴。

重ねる経験、見える穴。

小説を書いてnoteに公開したのは半年前。

約半年前に私は小説を書き終えると、誰かに読んでもらいたいと思い、すぐにnoteで公開した。公開したものをたくさんの方に読んで頂き、ほとんど強制的に感想をお願いした結果、面白いと言っていただくことができた。来年の創作大賞に出したらと言う嬉しいお声をいただいたことを、私は忘れずにしつこく覚えていた。

猿は木に登るので、猿荻レオンという名に恥じぬよう、私は

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焼きそばに降る、黒ごまと塩こんぶ。

焼きそばに降る、黒ごまと塩こんぶ。

曇天。

ゴールデンウイーク最終日。予報では雨、雲、雲。この天候は、連休最終日くらい出かけずに家でゆっくりしなさいよとの神のお告げと信じ、私はその日、ぐうたらすることに決めていた。

ガラガラと窓を開け空を見上げてみると空には暗雲が立ち込めている、ということもなく、意外に雨は降りそうにない天候。濡れずに犬の散歩に行けるのはラッキーだなと私は思う。我が愛犬の名はポッキーだけど。

私は散歩に行き、帰

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おかわり三昧

おかわり三昧

ゴールデンウイークはお家が一番。

どこも人が多いし、お金はかかるし、疲れるし。冷蔵庫に、いっぱいお酒を冷やしておいて、いろんな焼酎も買っておいて、食材も買っておいたら、それだけでテンション上がるし。

どの田中だよ、って言いたくなるお酒。買わんぞって思っとったのに、なんか知らんけどついつい買ってしまった。サントリーの勝利。私の負け。味は、普通に美味しかった。ジントニックを家で作れたらおしゃれやな

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チキンペッパーフライ

チキンペッパーフライ

カレーが食べたい。私はおもむろにストックしていた無印良品のレトルトカレーをストック箱から取り出した。伊坂幸太郎の小説のタイトルにでもなりそうなカレーだな、とチキンペッパーフライと書かれたカレーを一瞥し、ぐらぐらと沸かしたお湯の中にそれをぶち込んだ。

私は冷凍ご飯もレンチンした。そして温まったカレーを温まった冷凍ご飯の上にぶちまける。

簡単にカレーができた。冷凍ご飯とレトルトカレーをスプーンでほ

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天ぷらは熱い方がいい

天ぷらは熱い方がいい

「ちょっくら釣りに行ってくる」

夫は前日にそう言い残すと、丑三つ時には用意をし、私が起きる頃には姿形もなく、ベッドに寝ていた時の布団の形を残したまま、どこかの海へと出かけて行った。

夫はその日の昼過ぎ、ちょうどいいサイズの鱚を50匹前後、クーラーボックスに入れて帰ってきた。これが磯野家の波平であれば、魚屋で調達してきた代物である可能性も拭い切れないが、これは夫の収穫である。

私は家にいるだけ

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サルオギ春の一人一枚ピザまつり

サルオギ春の一人一枚ピザまつり

業務スーパーに行き、ピザ生地とピザソースを買った。

ピザ生地は一袋に5枚入っているものを買った。パン生地ではなくてクラストタイプ。薄いヤツ。たぶん私がひとつひとつ尻もちをついて成型したとかしないとか言う噂の薄いヤツ。パンタイプの方が腹に溜まるので家計的には助かるのだが、耳の部分まで美味しく食べたいという高校2年生の長男にために、今回私は尻もちタイプの生地を選択。普段であれば私はピザを焼き、そして

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「くつしたの次男」と「走れ、ばあば」

「くつしたの次男」と「走れ、ばあば」

Telettelettelettele………………………………….

軽快な着信音が朝の爽やかな空気を楽しげに彩る。私のスマートフォンがピタゴラスイッチの着信音を奏でたのは、朝の8時20分のことだった。

電話をかけてきたのは、私の母だった。私の実家は自宅から徒歩3分程度の距離にあり、母は我が家の目と鼻の先に住んでいる。まさしくスープの冷めない距離。私も夫も日中は仕事に出ていて誰も自宅にいないので

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スーパーマーケットへ行こう!

スーパーマーケットへ行こう!

「今日、なんか予定ある?」

夫が尋ねてきたのは、週末の朝のことだった。
私は「特にない」と答え、続けて「なんか予定あると?」と反対に夫に質問をする。

「ロピア行くけん。今日は早く家を出るよ」
夫はやる気に満ちた表情を浮かべていた。私は『ロピア』というこの三文字の単語に胸を躍らせた。

「わ〜い! やったー! ロピアだ〜!」
と私が両手をあげて喜んだのは言うまでもない。

ロピアは神奈川県を中心

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燃えるゴミと燃やせるゴミ

燃えるゴミと燃やせるゴミ

夜がカチカチと音を立てている。

まるでゼンマイ式の時計の針が進むみたいな音を立てて、夜は歩いている。
私は夜と一緒に歩くでもなく、愛犬と一緒に歩く。

夜の散歩。

夜は昼に比べると、息がしやすい。
ぼんやりとした薄闇が私の表面に膜を張り、私はその中で息をする。

おてんとさまがいない足元には、当たり前に影の奴もいないから、私は地面と足の裏をきっちりとつけている必要もない。ドラえもんのように少し

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一点を見つめる女性の目線の先

一点を見つめる女性の目線の先

バス停に女性が一人佇んでいた。

私は自転車を漕ぎならが、反対側の道路にいる女性を一瞥する。どうにも哀愁が漂っていて、私は視線を逸らすことができないでいた。

六十代くらいの女性だろうか。髪はショートカットで、少し疲れているような表情が見てとれた。春はなんだか疲れるよね、と私は心の中で一点を見つめる彼女に声をかける。

新年度が始まり、慌ただしいと感じることが多い。

特別に忙しいと言うわけではな

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こどもたちへのプレゼントの行方

こどもたちへのプレゼントの行方

大掃除をしていたら、息子たちが小さい頃、私が息子たちのためにと作った絵本が出てきた。

その絵本は子どもたちにプレゼントとして作ったものだ。
今では誰の目にも触れられず、読まれることもなく、本棚にきちっと収まっている。

私はその絵本を手に取った。破れていたり汚れていたりするが、懐かしい気持ちになった。もう15年くらい前に作った絵本たち。
私は寝る前に、この絵本をよく読み聞かせをしていたものだ。

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夜のプリン

夜のプリン

君に会えるのを、ずっとずっと楽しみにしていたんだ。

僕は君に出会えた時、本当に本当に心が飛び跳ねた。君に出会ったのは、駅の構内にあるKALDIだった。僕が紙コップに入ったコーヒーを片手に店内をうろうろしていた時、君が僕の目に飛び込んできた。

え? 何でこんなところにいるの? と僕は驚いた。

だって絶対に、君とは二度と会えないって思っていたんだ。
いつの日だったか、君は知らないうちに僕の前から

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カップ焼きそばの作り方_43歳の一般人編

カップ焼きそばの作り方_43歳の一般人編

「まずは」と私は重い重い腰を上げる。

思い返せばこの重い腰肉は、いつ頃から腰巾着のように私に張り付いているのだろうか。いわゆる浮き輪肉。腰についた浮き輪肉のせいで、私の体は重いのかもしれない。

とはいえ、意外や意外。食事の用意をする時ばかりは、この浮き輪肉は文字通り浮き輪のように私の体を軽くしてくれる。

フットワークならぬウエストワークは軽く、軽い腰どりで私は部屋を練り歩く。それはまさにモデ

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春はたけのこ

春はたけのこ

反省と後悔に塗れていた朝、近所に住む母が爽やかな面持ちで春を運んできてくれた。

私が手に入れた春。
母から譲り受けた春。

その名は、たけのこ。

穂先はそのまま食べたら美味しいよと母に言われ、早速薄切りにして食べてみることにした。

母のおすすめはわかめと一緒に酢味噌でいただくということだったが、あいにく我が家には酢味噌がなかったので、刺身醤油とワサビをつけていただいた。

たけのこのシャキシ

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