外資系コンサルファームのプレゼン資料(2020年最新版)~各社の特徴を洗い出す
0.はじめに
本来、各外資系コンサルティングファームに勤めていたり、各ファームのクライアントでないと、なかなか見る機会のない外資系コンサルファームの資料ですが、近年、報告書が公表されることになり、普段見ることができない資料に触れることができるようになりました。
そこで、今回は経済産業省の委託調査報告書のホームページ(https://www.meti.go.jp/topic/data/e90622aj.html)で公表されている資料を横に並べて見て、それぞれの特徴やトレンド、共通点を記していきたいと思います。
1.このNoteで活用した資料
下記の図1がこのNoteを作成する際に利用した資料の一覧です。Big4と言われる世界規模で会計監査を行っている会計事務所のネットワークを持つファームや戦略コンサルと言われるマッキンゼーやボストンコンサルティンググループ、世界最古の経営戦略ファームのアーサー・ディ・リトル、そして、外資系ではありませんが違いの有無を確認するために国内のシンクタンクの三菱総研と野村総研を対象としました。なお、できるだけ各ファームの最新の資料となるように、経済産業省にアップされている資料の中で新しいものを選択いたしました。
2.基本フォーマットにおける違い
山口周先生の「外資系コンサルのスライド作成術」や他の外資系コンサル流の資料作成術に記載されているように、スライドには大きく6つの記載すべき事項があります。(図2)
RubatoではスライドタイトルをT1、メッセージをT2と呼んでおりますが、その配置位置の違いから、特徴をまとめてみました。(図3)
基本的にスライドタイトルの下にメッセージを配置するファームとスライドタイトルの下にメッセージを配置するファームの2つに分かれます。これは好みによるものが大きいと思いますが、前者は報告書のようにページ数の多いパッケージ資料の際には、読み手にとって何のスライドかを示すのに長けており、後者はプレゼン資料のように前後のスライドとのメッセ―ジの繋がりがしやすい点で長けていると考えられます。
次に出所の違いです。基本的に「出所:×××省×××調査より×××分析」や「出所:エキスパートインタビュー、×××調査、××××分析」といったような表記をするファームが多いのですが、三菱総研はシンクタンクとして厳密性だと思われますが、出所を丁寧に明記しています。(図4)
続いてグラフタイトルですが、基本的に多くのファームではグラフタイトルを記載するケースが多いのですが、ボストンコンサルティンググループでは、グラフタイトルは記載せずに、グラフから見出せるメッセージをグラフの上に記載をしています。このルールからは、グラフを作成する際にやってしまいがちな、グラフを作った後にグラフから言えることを記載し、前後の文脈とメッセージとグラフが一致しなくなってしまうといったミスを防止する効果があると考えられます。このフォーマットからは、メッセージを先に決め、そのメッセージに沿ったグラフを選択、作成、強調表現を入れるといったファンダメンタルを徹底している姿勢が感じられます。図5から見て取れるように、グラフの上のメッセージを読むと、左のグラフのメッセージ「2025年には人口の30%以上が高齢者」+右のグラフのメッセージ「中でも後期高齢者は10年間で1.3倍の見込み」=スライド全体のメッセージ「65歳以上の高齢者はすでに人口の27%を構成し、2025年には30%を超える見通し」という構造になっていることが分かると思います。
3.最近のトレンドをいち早く取り入れるマッキンゼーとボスコン
図1のスライドで記載をしておりましたが、マッキンゼーとボストンコンサルティンググループの2つのファームはA4型のフォーマットでなく、モニターサイズの16:9の形で納品をしていました。その資料の中から分かったのが、この2つのファームは、以前こちらのnoteで大塚さんが執筆した『「かっこいい」デザインと「余白」の話』の中で言っているように、インク量を減らすことを意図的に導入しているように見受けられます。(図6、7)
4.最後に
ひと昔前はファームによって明確な差があるように感じていたのですが、最近はファーム間の人の移動やGlobalのテンプレート等の普及によってなのか、フォーマットレベルでは、そこまで明確な違いは無いように感じました。今回対象とした資料の中で上記に述べたファーム以外に、気になった特徴がある2つのファームの例を示して結びとしたいと思います。
まず、KPMGですが「昔と比べてピクトがかっこいい」と感じました。完全に主観なのですが、様々なピクトを多用していたのでご参考にしていただければと思います。(図8)
最後にアーサー・ディ・リトルは、図9のように比較項目→各評価→評価のまとめ→優先度付けといったように、納得性のある俯瞰表現を、端的に用いているスライドが多く勉強になります。(図9)
長々と記してきましたが、どのファームの資料もフォーマットの重要性、スライド間の繋がり、多様な表現方法など、学ぶことが多いので、実際に公表されている資料をダウンロードして、詳細に見てもらうことをお勧めします。
* * *
【公開中note一覧】
◆「人を動かす一人歩きする」資料Before→After
第1回 入門編①図解の基本形「一人で行くバー」をお薦めするスライド
第2回 入門編②2つの比較「ストアカ」をお薦めするスライド
第3回 入門編③図解の基本形「コーチングアプリ」をお薦めするスライド
第4回 基礎編①線グラフの基本 企業の変革を促すスライド
第5回 基礎編②スライド構成と図解 新規事業を提案するスライド
第6回 Before→After OBOG版(前編)~霞が関文学編~
第7回 Before→After OBOG版(後編)~霞が関文学編~
番外編 『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』
Amazon週間売上ランキングのスライド
◆Rubato講師×note
1.ロジカルな図解のつくりかた(前編)
2.ロジカルな図解のつくりかた(後編)
3.アウトプット→インプットの話
4.Rubato流「オトナのパワポ正月遊び」
5.ターゲットを絞り、刺さる資料をつくるコツ
6.「かっこいい」デザインと「余白」の話
7.添削からわかる、伝わるパワポ資料3つの特徴~添削 of the Year
8.図解でわかる!新型コロナウイルス予防のコツ
9.外資系コンサルはなぜ資料作成にこだわる?
10.知る人ぞ知るPowerPoint効率化スキル
11.テレワークでのコミュニケーションスキルとは
12.【保存版】グラフを自在に操りたい人必見の書籍9選
13.周りに差がつく!情報収集のコツと独断で選ぶ国内外のウェブ9選
14.ビジネス記事のロジカル図解化3ステップ~設計→MECE→表現~
15.オンライン研修から学ぶ、オンライン打合せの生産性を高める3つの小さな工夫
16.ゼロからロジカルシンキングを学んだ講師のおすすめ書籍5選!
17.オンライン会議をスムーズにする3種類の1枚資料
18.4つのグラフで予算と実績のギャップを可視化する~ファイナンス(FP&A)実務から~
19.パワポはチャラ書き(下書き)が重要って知っていますか~そのプロセスとコツ~
20.資料の配色でもう迷わない~ブランドイメージを伝える配色のノウハウ~
21.論理で「見えていない世界」に気付く ~MECEな切り口(軸)の考え方~
22.プロフェッショナル流、マネージャーのための資料作成マネジメント術
23.資料作成講師がMacのパワポを触ってみた~MacとWindowsのパワーポイントの違い~
24.パルテノン神殿解体~外資系コンサルがよく使うメタファー表現~
25.資料が劇的にわかりやすくなる!おすすめピクトグラムサイト7選
26.嫌われないロジカルシンキング~ロジシン馬鹿と言われないために
27.リアル派?リモート派?ワークスタイルを使い分けるには~ミーティングの観点で考える
28.スライド作成のためのパワポ操作の効率化の5つの方針
【Rubatoの資料作成講座】
直近の「戦略的プレゼン資料作成2日間集中講座」のご案内
講座一覧はRubatoウェブサイトから
【Rubatoの書籍】