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外資系コンサルファームのプレゼン資料(2020年最新版)~各社の特徴を洗い出す

0.はじめに

本来、各外資系コンサルティングファームに勤めていたり、各ファームのクライアントでないと、なかなか見る機会のない外資系コンサルファームの資料ですが、近年、報告書が公表されることになり、普段見ることができない資料に触れることができるようになりました。
そこで、今回は経済産業省の委託調査報告書のホームページhttps://www.meti.go.jp/topic/data/e90622aj.html)で公表されている資料を横に並べて見て、それぞれの特徴やトレンド、共通点を記していきたいと思います。


1.このNoteで活用した資料

下記の図1がこのNoteを作成する際に利用した資料の一覧です。Big4と言われる世界規模で会計監査を行っている会計事務所のネットワークを持つファームや戦略コンサルと言われるマッキンゼーやボストンコンサルティンググループ、世界最古の経営戦略ファームのアーサー・ディ・リトル、そして、外資系ではありませんが違いの有無を確認するために国内のシンクタンクの三菱総研と野村総研を対象としました。なお、できるだけ各ファームの最新の資料となるように、経済産業省にアップされている資料の中で新しいものを選択いたしました。

スライド1


1.アーサー・ディ・リトルジャパン株式会社
ロボット実装モデル構築推進タスクフォース活動成果報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000348.pdf

ADL画像


2.マッキンゼー・アンド・カンパニー
戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)最終報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000825.pdf

McKinsey画像


3.株式会社ボストンコ ンサルティンググ ループ
平成30年度商取引・サービス環境の適性化に係る事業 ソーシャルビジネスに係る市場調査: 最終報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000141.pdf

ボスコン画像


4.アクセンチュア株式会社
令和元年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業(産業保安システム構築事業に伴う代行申請者への周知に係る検討調査)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000033.pdf

アクセンチュア画像


5.KPMGコンサルティング株式会社
令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(貿易手続データの金融・保険分野等への利活用に関する調査)貿易データ利活用調査報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000052.pdf

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6.デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
太陽光発電設備の廃棄等費用及び適正処理の在り方に関する調査最終報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/010716.pdf

デロイト画像


7.三菱総合研究所
令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(諸外国における需給調整市場関連制度及び託送料金負担に関する制度の検討状況等に係る調査事業)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000334.pdf

三菱総研画像


8.株式会社野村総合研究所
令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(2020東京オリンピック・パラリンピックへ向けたイ ンバウンド向けサービス開発に係る調査事業)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000241.pdf

野村総研画像


2.基本フォーマットにおける違い

 山口周先生の「外資系コンサルのスライド作成術」や他の外資系コンサル流の資料作成術に記載されているように、スライドには大きく6つの記載すべき事項があります。(図2)

スライド2


RubatoではスライドタイトルをT1、メッセージをT2と呼んでおりますが、その配置位置の違いから、特徴をまとめてみました。(図3)
基本的にスライドタイトルの下にメッセージを配置するファームとスライドタイトルの下にメッセージを配置するファームの2つに分かれます。これは好みによるものが大きいと思いますが、前者は報告書のようにページ数の多いパッケージ資料の際には、読み手にとって何のスライドかを示すのに長けており、後者はプレゼン資料のように前後のスライドとのメッセ―ジの繋がりがしやすい点で長けていると考えられます。

スライド3


次に出所の違いです。基本的に「出所:×××省×××調査より×××分析」や「出所:エキスパートインタビュー、×××調査、××××分析」といったような表記をするファームが多いのですが、三菱総研はシンクタンクとして厳密性だと思われますが、出所を丁寧に明記しています。(図4)

スライド4


続いてグラフタイトルですが、基本的に多くのファームではグラフタイトルを記載するケースが多いのですが、ボストンコンサルティンググループでは、グラフタイトルは記載せずに、グラフから見出せるメッセージをグラフの上に記載をしています。このルールからは、グラフを作成する際にやってしまいがちな、グラフを作った後にグラフから言えることを記載し、前後の文脈とメッセージとグラフが一致しなくなってしまうといったミスを防止する効果があると考えられます。このフォーマットからは、メッセージを先に決め、そのメッセージに沿ったグラフを選択、作成、強調表現を入れるといったファンダメンタルを徹底している姿勢が感じられます。図5から見て取れるように、グラフの上のメッセージを読むと、左のグラフのメッセージ「2025年には人口の30%以上が高齢者」+右のグラフのメッセージ「中でも後期高齢者は10年間で1.3倍の見込み」=スライド全体のメッセージ「65歳以上の高齢者はすでに人口の27%を構成し、2025年には30%を超える見通し」という構造になっていることが分かると思います。

図5


3.最近のトレンドをいち早く取り入れるマッキンゼーとボスコン

図1のスライドで記載をしておりましたが、マッキンゼーとボストンコンサルティンググループの2つのファームはA4型のフォーマットでなく、モニターサイズの16:9の形で納品をしていました。その資料の中から分かったのが、この2つのファームは、以前こちらのnoteで大塚さんが執筆した『「かっこいい」デザインと「余白」の話』の中で言っているように、インク量を減らすことを意図的に導入しているように見受けられます。(図6、7)

図6
図7


4.最後に

ひと昔前はファームによって明確な差があるように感じていたのですが、最近はファーム間の人の移動やGlobalのテンプレート等の普及によってなのか、フォーマットレベルでは、そこまで明確な違いは無いように感じました。今回対象とした資料の中で上記に述べたファーム以外に、気になった特徴がある2つのファームの例を示して結びとしたいと思います。
 まず、KPMGですが「昔と比べてピクトがかっこいい」と感じました。完全に主観なのですが、様々なピクトを多用していたのでご参考にしていただければと思います。(図8)

図8


最後にアーサー・ディ・リトルは、図9のように比較項目→各評価→評価のまとめ→優先度付けといったように、納得性のある俯瞰表現を、端的に用いているスライドが多く勉強になります。(図9)

図9


長々と記してきましたが、どのファームの資料もフォーマットの重要性、スライド間の繋がり、多様な表現方法など、学ぶことが多いので、実際に公表されている資料をダウンロードして、詳細に見てもらうことをお勧めします。


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【公開中note一覧】
◆「人を動かす一人歩きする」資料Before→After
第1回 入門編①図解の基本形「一人で行くバー」をお薦めするスライド
第2回 入門編②2つの比較「ストアカ」をお薦めするスライド
第3回 入門編③図解の基本形「コーチングアプリ」をお薦めするスライド
第4回 基礎編①線グラフの基本 企業の変革を促すスライド
第5回 基礎編②スライド構成と図解 新規事業を提案するスライド
第6回 Before→After OBOG版(前編)~霞が関文学編~
第7回 Before→After OBOG版(後編)~霞が関文学編~
番外編 『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』
     Amazon週間売上ランキングのスライド

◆Rubato講師×note
1.ロジカルな図解のつくりかた(前編)
2.ロジカルな図解のつくりかた(後編)
3.アウトプット→インプットの話
4.Rubato流「オトナのパワポ正月遊び」
5.ターゲットを絞り、刺さる資料をつくるコツ
6.「かっこいい」デザインと「余白」の話
7.添削からわかる、伝わるパワポ資料3つの特徴~添削 of the Year
8.図解でわかる!新型コロナウイルス予防のコツ
9.外資系コンサルはなぜ資料作成にこだわる?
10.知る人ぞ知るPowerPoint効率化スキル
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22.プロフェッショナル流、マネージャーのための資料作成マネジメント術
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26.嫌われないロジカルシンキング~ロジシン馬鹿と言われないために
27.リアル派?リモート派?ワークスタイルを使い分けるには~ミーティングの観点で考える
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