見出し画像

ゼロからロジカルシンキングを学んだ講師のおすすめ書籍5選!

巷には、ベストセラーとなっている「グロービスMBAクリティカル・シンキング」「イシューからはじめよ」「論点思考」など、ロジカルシンキングに関する本がたくさんあります。

その中からロジカルシンキングの書籍を33冊読破したルバート資料作成講座の講師を務める丸尾武司が独自の視点でお勧めする5冊を厳選いたしました。資料作成において非常に役に立つ内容ですので、ご参考になればと思います。(実際の33冊のリストはこちらです)


はじめに

資料作成は、①思考、②表現、③操作の総合技です。資料作成スキル向上のため、「①思考」の強化の必要性を感じた方も多いと思います。これまで私自身も様々な書籍や研修で学んできました。資料作成に関係する思考の種類には、①顧客理解(洞察)、②創造的思考、③論理的思考の3つがありますが、今回は論理的思考のおすすめ本や身につけるコツをご紹介します。

スライド2


1. 問題解決プロフェッショナル 思考と技術

問題解決の中で論理的思考について解説している本です。この本の特徴は、ロジックツリーを使った要因分析や解決策を洗い出す事例が多いことです。ツリーの切れ味の良さには「美しさ」を感じ、いつか、このように考えられるようになりたいと強く感じたものです。
 ロジカルシンキングの代表的な思考道具に、ロジックツリーとピラミッドストラクチャーがあります。ロジックツリーは、主に要因の切り分けやアイデア出しの場面で使われ、ピラミッドストラクチャーは、考察や分析結果を伝える場面で使われます。ロジカルシンキング本では、どちらか一方の道具について解説していることが多いです。ロジックツリーを扱う本の代表として紹介しました。
 ロジックツリーの利点は、①MECEに分解していくことで思考の漏れを防ぐ、②分解の切り口によって要素間の関係を示す、③アイデアを一覧で見ることができることです。ロジックツリーが仕事で役立ったのは、ブレストで出たアイデアを整理したときです。ツリーで全体像を一覧で示すと、アイデアの偏りや掘り下げが浅い筋に気づきやすくなります。余談になりますが、ブレストの場面で大事なことは、アイデアを出す段階では評価はしないことです。アイデアが発表されたときに、「コストが高い」、「納期が間に合わない」など否定的意見が出ると、アイデアを出す人も身構えてしまいます。「コストは高いのか?」「納期は間に合うのか?」と投げかけがあると、アイデアを出すことよりも、その答えを出すことに議論が引っ張られてしまうので注意が必要です。


2. ロジカル・ライティング 論理的にわかりやすく書くスキル

ピラミッドストラクチャーを扱う代表的な本に「考える技術 書く技術(バーバラミント)」がありますが、残念ながら難解に感じました。ピラミッドストラクチャーを学ぶ本として、ご紹介したいのが本書です。ピラミッドストラクチャーの丁寧な解説もあるのですが、思考を文書にするときの視覚表現もあり実践的です。例えば、わかりやすい文頭表現として、切り口の言葉を主語にすることは、文章を書くときに意識しています。
照屋氏の著作には、岡田恵子氏との共著の「ロジカルシンキング」(東洋経済新報社)もありますが、「ロジカル・ライティング」のほうが、マッキンゼーのエディティング・サービスで培かわれた実践知が豊富に含まれている点が良いです。


3. 戦略思考ワークブック

ピラミッドストラクチャーにおける思考法としては、「演繹法」と「帰納法」の2種類があります。この本では、ピラミッドストラクチャーの解説はありませんが、「演繹法」にもとづく「重要思考」が解説されています。三谷氏には「重要思考」に関する他の著書もありますが、この本は豊富な事例と見やすい図解があり、簡潔な説明がわかりやすいです。
 演繹法は、ルールや基準が明示されていて、事象がそれらに照らして適合可否を判断する場合に適しています。例えば、投資案件の承認可否を判断する場面です。考える要素や情報が多くて、何から着手すべきか見当がつかない場合、「そもそも重要なことは何か?」と自問すると、問題に切り込んでいく糸口が見つかりやすいと思います。


4. ロジカル・プレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」

提案を通すという目的のため、ロジカルシンキングの活用として「論理思考力」、「仮説検証力」、「会議設計力」、「資料作成力」の4つの応用スキルを解説しています。この本の特徴は、学問のような体系的な解説と仕事場面での実務感を押さえていることです。解説に関しては、特にロジカルシンキングの要所となる「論点」の解説が丁寧で理解しやすいです。論点の考え方は、ピラミッドストラクチャーやロジックツリーなどの思考道具の土台にあたります。身につけると、考えるスピードが速くなりますし(大事なことに絞って考えるので効率的になる)、内容が詰まった成果物をつくることができるようになります。
余談になりますが、私は高田氏の講座で、多くを学ばせていただきました。執筆に込めた想いを伺うと、ロジカルシンキングの流行を追うのではなく、書店の本棚に定番の教科書として長くおかれることを目指されたとのことでした。ご自身が戦略ファームで学んだ実体験と理論の体系化がなされた結果、この本のページ数は約300ページになります。類書の多くは約200ページで、それと比較すると1.5倍の内容が詰まっています。高田氏の他の著作である「問題解決」(英治出版)もおすすめです。


5. あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか 論理思考のシンプルな本質

この本は、ロジカルシンキングにおける「頭の使い方」や「姿勢」を学べます。類書でロジカルシンキングの知識や理解を深めた後でも、本書の「公式やフレームワークに当てはめること≠考えること」、「考えること=書くこと」、「言葉は境界線」など多くの気づきが得られると思います。津田氏の他の著作である「ロジカル面接術」(WAC)は、採用面接での自己PRや志望動機などの質問と答えを題材に、論理的に考える事例が参考になります。転職活動をされる方には、読み物としておススメです。


身につけるコツ

私自身がロジカルシンキングを学んだ経験を振り返ると、本を読んだ直後は「できそうな気」はしますが、自分の仕事に当てはめ考えようとすると「できない」。このギャップの要因は、自分の知識や理解が不十分だからと考え、別の本に答えを求めるという沼に落ちました。ロジカルシンキングには詳しくなりますが、「できる」ようにはならないです。このような失敗経験も踏まえて、身につけるためのコツをお伝えします。

スライド3

①アウトプットすること

筋トレの方法を熱心に勉強しても、実際にトレーニングしなければ筋肉がつかないのと同じように、ロジカルシンキングもいくら本を読んでも、頭に汗をかかないかぎり鍛えることはできません。本を読む(インプット)以上に、実践すること(アウトプット)を心がけてください。一人で実践することは難しいので、スクールや研修講座を受講することもおすすめです。私は、講座受講中はアウトプットに時間を集中させるため、本は読まないようにしていました。
実践場面では、頭の中だけで考えるのではなく、紙やパソコンに書き出すことが大事です。まず頭の中にある情報を、頭の外に取り出すことです。ベスト一発をひねり考え出そうというより、思いついたものを書き出すこと。的確な言葉で表現できなければ、絵や図などの走り書きでも良いです。次に、書き出したものを見ながらブラッシュアップしていく。ずっと考えていると、思考が堂々巡りしはじめ、良し悪しの判断も怪しくなってくると思います。ブラッシュアップは、何度か時間をおいて思考の状態をリセットしながら行うと効果的です。

②場ごとに切り替える

プレゼンや説明する場面で陥りがちな例は、考えたプロセスをトレースするように話してしまうことです。相手は、まどろっこしく感じてしまいます。考える場と伝える場では、プロセスの順序が逆になります。例えば、解決策を提案するとしましょう。考える場では、ロジックツリーを使ってアイデアを広く洗い出し、重みづけ評価し、最終的な解決策を選びます。伝える場では、まず解決策を提案し、次に選定基準や評価理由を説明するのが基本です。より効果的に伝えるには、相手が気にする順に説明するという方法もあります。

③周囲からの指摘に反論しない

仕事でロジカルシンキングを使ったら、曖昧な部分や論理の弱い箇所にツッコミが入ることでしょう。ここで大事なことは、相手に反論しないことです。実は、私はこれが苦手で、自己防衛のための説明や方法論は正しいという認識から反論していました。結果、意見のすれ違いや後味の悪さばかりが残る経験をしてきました。指摘されたことを傾聴し、自案を補強することに活用するのが賢明です。周囲からの指摘は、思考の漏れをふさぐことや枠組みを広げる手助けになります。意思決定の場面でも、自分の意見が取り入れられた案には賛同しやすくなります。

④自分に対して使うもの

ロジカルシンキングは、「自分」に対して使う道具です。グロービスでクリティカルシンキングを学んだときの言葉です。例えば、ロジカルシンキングの考え方の一つに「ゼロベースで考える(原点思考)」があります。本でも「そもそも~?」と問うことの有用性が紹介されていたりします。この問いかけは、自分の思考を深めるには良いですが、他の人の企画や説明への問いかけに使うべきではないと考えます。「そもそも~?」と問いつつ、その後に持論を示すことで、自分の優位性を誇示しているように感じます。問われた人は、考えを否定されたように感じ、やる気が下がります。話し合いの場の目的は、良いアイデアを創り出し、実行に向けて納得性を高めることにあります。目的にかなった手段かを論理的に考えてみると良いでしょう。

⑤人を動かすには、共感や情緒を動かすことも大事

ロジカルシンキングは、仕事で成果を出す万能の道具ではありません。成果を出すためには、人を動かすことが大事です。人を動かすには、仕事相手への共感や情緒(心)を動かす必要があります。自戒を込めてお伝えしますが、論理や合理性を重視する一方で、それ以外を軽視していないか注意が必要です。論理的な正しさよりも、「申し訳ありません」「助けてください」「よろしくお願いします」と本心から伝えるほうが効果的な場面も多いです。共感や情緒(感情)を動かすために、論理的に考えてみることは良い訓練になるでしょう。

おわりに

ロジカルシンキングのおすすめの本や身につけるコツをご紹介しました。思考が妥当かどうかを判断するのは、他者になります。一人で学び続けることには難しさや限界があります。本を読む以外に、研修を受講する、他者から学ぶなど他の手段と組み合わせながら、持続的に学び続けることが大事だと思います。


* * *

【公開中note一覧】
◆「人を動かす一人歩きする」資料Before→After
第1回 入門編①図解の基本形「一人で行くバー」をお薦めするスライド
第2回 入門編②2つの比較「ストアカ」をお薦めするスライド
第3回 入門編③図解の基本形「コーチングアプリ」をお薦めするスライド
第4回 基礎編①線グラフの基本 企業の変革を促すスライド
第5回 基礎編②スライド構成と図解 新規事業を提案するスライド
第6回 Before→After OBOG版(前編)~霞が関文学編~
第7回 Before→After OBOG版(後編)~霞が関文学編~
番外編 『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』
     Amazon週間売上ランキングのスライド

◆Rubato講師×note
1.ロジカルな図解のつくりかた(前編)
2.ロジカルな図解のつくりかた(後編)
3.アウトプット→インプットの話
4.Rubato流「オトナのパワポ正月遊び」
5.ターゲットを絞り、刺さる資料をつくるコツ
6.「かっこいい」デザインと「余白」の話
7.添削からわかる、伝わるパワポ資料3つの特徴~添削 of the Year
8.図解でわかる!新型コロナウイルス予防のコツ
9.外資系コンサルはなぜ資料作成にこだわる?
10.知る人ぞ知るPowerPoint効率化スキル
11.テレワークでのコミュニケーションスキルとは
12.【保存版】グラフを自在に操りたい人必見の書籍9選
13.周りに差がつく!情報収集のコツと独断で選ぶ国内外のウェブ9選
14.ビジネス記事のロジカル図解化3ステップ~設計→MECE→表現~
15.オンライン研修から学ぶ、オンライン打合せの生産性を高める3つの小さな工夫

【Rubatoの資料作成講座】

講座一覧はRubatoウェブサイトから

【Rubatoの書籍】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?