哲学とかやってるらしい。何になりたいのかよく分からない人。

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記事一覧

近況報告20240929

 著作の数が少ないとか全部買いそろえても一万円いかないとか、舐めた理由で選んだベルクソンであったが、数年読んでいるうちに身体になじんできて、それでようやく哲学と…

く
10日前
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近況報告。ついでに狂い咲きサンダーロード

 たまに元気なときに本を読み、ダルくて憂鬱な大抵の時間はベッドの上で寝て過ごすという生活をかれこれ1年は続けている。自分がいつ寝ていつ飯を食っているのかよく知ら…

く
1か月前
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ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』を読むために

1.    ベルクソンについて アンリ・ベルクソン(1859~1941)は19世紀末から20世紀半ばにかけて活躍したフランスの哲学者である。実証科学が台頭したこの時代において、…

く
10か月前
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名探偵コナンというヒーロー(僕の読書遍歴2)

 僕が本を読むことが好きなのは、自分の読み聞かせがうまかったからだと、母は言う。このことがどれほど僕の読書人生に影響を及ぼしたのかは分からない。けれども、幼少期…

く
10か月前
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僕ってなに?(僕の読書遍歴1)

 ふと、僕の読書遍歴を振り返ってみようという気になった。普段からたまにSNSなんかで、あのころは何を読んでいて、というようなことを断片的に追憶してみることはしてい…

く
11か月前
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人生敗北主義者宣言

 昔ブルーハーツは「あれもほしい、これもほしい、もっとほしい」と歌った。貪欲で前向きな情動。共感できなくはない。他方で、常識的な人間なら、こう言うだろう「どれを…

く
1年前
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外山合宿とは何か 第30回教養強化合宿体験レポート

はじめに  外山恒一氏の開催する教養強化合宿、通称外山合宿の第30回に僕は参加した。30回というのは並大抵な数ではない。1回の参加者を10~15人とすると40…

く
1年前
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読書の仕方について

2023年7月27日 11時頃  読書の仕方というのはいろいろあるだろうが、おおむね精読と速読の二種類に分けることができると思う。精読というのは一文一文理解しながら読む…

く
1年前
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ゆるやかな自殺とその敵

2023年7月27日  ストラテラというADHD治療薬を僕は飲んでいる。薬を飲んでまで社会に適応しようというつもりもないのだが、本を読むのに十分なだけの集中力すら、薬を頼…

く
1年前
2

小説の好き嫌いについて

 その作品の出来不出来にかかわらず、小説について個人的な好みによる評価というものがあることは疑いえない。サリンジャーは『キャッチャーインザライ』のなかで主人公に…

く
1年前
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日記を書くということについて(2023年7月26日)

 18時頃。数時間前に起きたばかりであり、日記もクソもない。初日であるから、日記を書くということについて、ごく個人的なことを書いておこうと思う。  日記というのは…

く
1年前
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「大正生命主義」から考える生命論

この文章は京都大学哲学研究会における提起に用いたレジュメの全文です。私の意見や思想を論じる論文や批評とは異なり、私の関心に基づいた要約といった主旨で書かれていま…

く
1年前
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深夜徘徊太郎

 午前四時頃の人気のない道を、「僕」が歩いていた。そいつは気怠そうにしながら酒を飲み、時折苛立ったように頭を掻いたりしている。その様子は、散歩というよりも徘徊に…

く
1年前
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九鬼『「いき」の構造』

九鬼周造『「いき」の構造』 「いき」のうちには、二者の性的関係でありながら、互いに完全に対象化しえないようなありかたが含まれている。エロティシズムにとってはこの…

く
1年前
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ベルクソン『二源泉』進歩?

ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』、平山高次訳、岩波文庫、1977年。 p. 328-9 「これらの進歩は同じ方向のなかで生ずるのだろうか。それは進歩であることが是認された以…

く
1年前
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ソレル『暴力論』第五章

ソレル『暴力論』、木下半治訳、岩波文庫、1933年 上巻p. 202 神話において重要なのはその全体だけ。それを用いる革命家が考えたことが完全に間違っていたとしても、社会…

く
1年前
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近況報告20240929

 著作の数が少ないとか全部買いそろえても一万円いかないとか、舐めた理由で選んだベルクソンであったが、数年読んでいるうちに身体になじんできて、それでようやく哲学というものの門前に立ったような気分でいる。
 疲れた。クソ。なんていうか、やっぱり自分が何をしたいのか分からないし、自分の関心というのも分からない。諸々の申請書でようは博論の計画をかかされたわけだが、いまだ修論すらはっきりとした見通しが立って

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近況報告。ついでに狂い咲きサンダーロード

近況報告。ついでに狂い咲きサンダーロード

 たまに元気なときに本を読み、ダルくて憂鬱な大抵の時間はベッドの上で寝て過ごすという生活をかれこれ1年は続けている。自分がいつ寝ていつ飯を食っているのかよく知らない。セルフネグネクトという言葉が頭をよぎらなくもない。僕は鬱病なのではなく、人間として生きることに本源的な不安に向き合っているだけだといつも言っているが、どうだろうか。その不安が何も生み出さず害悪でしかないのであれば、プラグマティストに言

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ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』を読むために

1.    ベルクソンについて アンリ・ベルクソン(1859~1941)は19世紀末から20世紀半ばにかけて活躍したフランスの哲学者である。実証科学が台頭したこの時代において、彼は心理学や生物学などに深くコミットしつつ、実証科学には回収され得ない非物質的なものについての研究を行った。

2. ベルクソンのキー概念①純粋持続(durée pure)(『意識に直接与えられたものについての試論』(188

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名探偵コナンというヒーロー(僕の読書遍歴2)

 僕が本を読むことが好きなのは、自分の読み聞かせがうまかったからだと、母は言う。このことがどれほど僕の読書人生に影響を及ぼしたのかは分からない。けれども、幼少期の経験がその後の人生にしばしば重大な影響をもたらすことを考えればありそうなことだ。とにかく、僕は小学校に入学するころには自ら進んで本を読むようになっていたことは事実である。
 僕が本を読んでいた理由として、はっきりと一つ言えることがある。僕

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僕ってなに?(僕の読書遍歴1)

 ふと、僕の読書遍歴を振り返ってみようという気になった。普段からたまにSNSなんかで、あのころは何を読んでいて、というようなことを断片的に追憶してみることはしていた。そういうことを考えるのは、たいてい僕がどういう人間であるのか、つまりは僕がどんなことに関心を寄せて来て、どんなものに影響を受けたのか、ということが分からなくなったときであったように思う。僕は自分が何が好きなのか分からない、とまで言った

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人生敗北主義者宣言

人生敗北主義者宣言

 昔ブルーハーツは「あれもほしい、これもほしい、もっとほしい」と歌った。貪欲で前向きな情動。共感できなくはない。他方で、常識的な人間なら、こう言うだろう「どれを選ぶか決断しろ」二兎追うものはなんとやらと言う通り、この反論もごもっともである。人生の大事なときには決断を必要とする。いいとこどりというわけにはいかないときもある。
 けれども、僕らはそのどちらも退けて、こう言いたい。「あれも違う! これも

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外山合宿とは何か 第30回教養強化合宿体験レポート

外山合宿とは何か 第30回教養強化合宿体験レポート


はじめに

 外山恒一氏の開催する教養強化合宿、通称外山合宿の第30回に僕は参加した。30回というのは並大抵な数ではない。1回の参加者を10~15人とすると400人程度が参加したことになる。しかも、今この文章を書いているあいだにも第31回合宿が開催されているらしく、今後も合宿出身者は増え続けていくだろう。なぜこれだけの若者が外山合宿に集まるのか。また外山合宿とはどのような役割を果たしているのか。

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読書の仕方について

2023年7月27日 11時頃

 読書の仕方というのはいろいろあるだろうが、おおむね精読と速読の二種類に分けることができると思う。精読というのは一文一文理解しながら読む読み方であり、速読というのは情報をスキャニングするようにして要点だけさらえる読み方だ。実際の読書においてはこの二種類の読み方を組み合わせることになる。つまり、じっくり精読しようと思っても、ある程度読み飛ばす部分はあるだろうし、反対

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ゆるやかな自殺とその敵

2023年7月27日

 ストラテラというADHD治療薬を僕は飲んでいる。薬を飲んでまで社会に適応しようというつもりもないのだが、本を読むのに十分なだけの集中力すら、薬を頼らなければ得ることができないのだから仕方がない。文章を書くくらいしかできない僕にとっては、本が読めないのは致命傷なのだ。
 けれども、この薬はなかなか胃に負担の大きい薬らしく、飲み方を間違えるとひどい目に合う。僕の場合もともと胃

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小説の好き嫌いについて

 その作品の出来不出来にかかわらず、小説について個人的な好みによる評価というものがあることは疑いえない。サリンジャーは『キャッチャーインザライ』のなかで主人公に、その人にとってよい小説というのは、作者と友達になりたいと思うかどうかだと語らせていた。ウェルベックも『服従』のなかで似たようなことを述べていたように思う。
 僕がその作者と友人になりたいと思った小説とはなんだったかと考えてみると、それは難

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日記を書くということについて(2023年7月26日)

 18時頃。数時間前に起きたばかりであり、日記もクソもない。初日であるから、日記を書くということについて、ごく個人的なことを書いておこうと思う。

 日記というのは、その日自分が行った行為や考えたことについて書き留めておくものだろうと思う。けれども、それは僕にとって困難なことだ。

 まず、最初の困難は日記というのはフィクションではいけないということだ。たとえば、僕は小説を書いたりすることもあるし

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「大正生命主義」から考える生命論

この文章は京都大学哲学研究会における提起に用いたレジュメの全文です。私の意見や思想を論じる論文や批評とは異なり、私の関心に基づいた要約といった主旨で書かれています。

はじめに 今回の提起において取り上げるのは、「大正生命主義」と呼ばれる大正期前後の思潮にみられる「生命」の概念を重視する傾向についてである。近代化や工業化が進んだ明治大正期においては、自然や人間を機械論的にとらえる科学主義的な価値観

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深夜徘徊太郎

深夜徘徊太郎

 午前四時頃の人気のない道を、「僕」が歩いていた。そいつは気怠そうにしながら酒を飲み、時折苛立ったように頭を掻いたりしている。その様子は、散歩というよりも徘徊に見えた。
 午前四時というのは不思議な時間だ。ある人は夜中だと言うだろう。しかしまた、ある人は早朝だと思っているのである。どんなに日の出が早い日でも、まだ太陽なんて出て来ていないのに。夜中と朝との境界線はどこにあるのだろうか。色んな人が色ん

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九鬼『「いき」の構造』

九鬼周造『「いき」の構造』

「いき」のうちには、二者の性的関係でありながら、互いに完全に対象化しえないようなありかたが含まれている。エロティシズムにとってはこの不連続性は限界だが、いきにとってはここに美意識が働いている。(いきにおける所有の不可能であるとか不連続性と、心中の関係も気になる)

生命であること、ものであることを自在に行き来するような流動性の美? 弛緩と緊張。自由であること、物質的な

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ベルクソン『二源泉』進歩?

ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』、平山高次訳、岩波文庫、1977年。

p. 328-9

「これらの進歩は同じ方向のなかで生ずるのだろうか。それは進歩であることが是認された以上は、方向はもちろん同じだということになろう。その場合、進歩のそれぞれは、実際、一歩前進だと定義されるだろう。しかし、それはひとつの比喩でしかないだろう、そして、ひとつの方向が前もって実際に存在していて、ひとは単にそれに沿う

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ソレル『暴力論』第五章

ソレル『暴力論』、木下半治訳、岩波文庫、1933年

上巻p. 202

神話において重要なのはその全体だけ。それを用いる革命家が考えたことが完全に間違っていたとしても、社会主義の願望を完全に取り入れたものであるなら、それでよい。

→その人が何を語るかよりも、何をするか。言語や知性の使用において間違えていたとしても、その人の行動がちゃんと機能していればよい。ベルクソニスムの片鱗を感じる。(社会が

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