らんまる

見たもの、聞いたもの、読んだもの、感じたこと、思ったこと、考えたことを書いてます。

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記事一覧

吃音を活字にするって酷だな 【読書#04】椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

次男(中3)の通う中学校で、今年度(2024年度)から読書タイムなるものが設けられた。 次男は読書の習慣がなかったので、司書&司書教諭の資格をもつ、元司書のわたし(母…

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2週間前
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ファンタジーは不滅です! 【読書 #03】森見登美彦 『四畳半タイムマシンブルース』

学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい!絶賛キャンペーン中。 第3弾は、森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』。 なぜこの本か…というと、次男…

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4週間前
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ただそこに居て歌う 【LIVE】Eve「Culture」@横浜BUNTAI

2024年のライブ初めは、1月5、6日のVaundy@日本ガイシ2daysだった。 今年3本目のライブは、2024年6月9日のEve「Culture」@横浜BUNTAIとなった。チケットぴあでの抽選は外…

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1か月前
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きっと私も貧困だった 【ドラマ #01】WOWOW「東京貧困女子。」

WOWOWオリジナルドラマ。2023年放送。 原作、中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』。主演、趣里。 2024年5月24日の深夜に、全6回一挙再放送があり、録画を…

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1か月前

わからない、でも天才 【美術鑑賞#02】デ・キリコ展@東京都美術館

イタリア人の画家で彫刻家の、ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。 私は、デ・キリコという名前は知っているけれど、彼の作品はよく知らない。 思い浮かべることができ…

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1か月前
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【詩#02】あるいは青天の石として

1  読みかけの本の1ページ。  過去と未来とそして今とがちょうど交差するところで、私は何かを待っていた。過去の未来は非常に確かなもので、物語はもう始まり、終わっ…

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2か月前
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推し活はソフトホラー? 【読書#02】宇佐見りん「推し、燃ゆ」(ネタバレなし)

学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい! 絶賛、キャンペーン中である。 記念すべき1冊目は、宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」だった。 とんとん拍…

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2か月前
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作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)。本展は、日本の美術館で開催される初めての個展とのこと。 ブランクーシの作品を初めて見たのは…

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2か月前
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成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

X(旧Twitter)で本屋大賞に関するいくつかの投稿を見て、これはすぐに本を買わねばなるまい、という使命感にも似た感情が湧き出た。 そして数日後、駅の近くの一番大きな…

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2か月前
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【短編#01】おとぎ話の森

 夏の終わりに美術館を訪れた。  入口から長い廊下を抜けていくと、美術館にしてはめずらしく大きな窓が三枚開かれた、扇形の展示室に出た。窓一面に映る木々は瑞々しく…

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2か月前
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【詩#01】思い出を思い出すための詩 2022.05.15

雨降りな日々が続いて 春が間もなく終わるころ わたしは となりの席の人から 若い整骨師の肖像という名の詩集を借りた ページを開くと古びた本の匂いがして わたしの心は…

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2か月前
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吃音を活字にするって酷だな 【読書#04】椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

吃音を活字にするって酷だな 【読書#04】椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

次男(中3)の通う中学校で、今年度(2024年度)から読書タイムなるものが設けられた。
次男は読書の習慣がなかったので、司書&司書教諭の資格をもつ、元司書のわたし(母)が、次男の読書タイム用の本を選書して用意している。

これまで、4冊の本を次男に手渡した。

次男に本を渡す前に、まずわたしが本を読む。

椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』も、最初は次男に渡すつもりで購入したが、実際に読んでみて、

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ファンタジーは不滅です! 【読書 #03】森見登美彦 『四畳半タイムマシンブルース』

ファンタジーは不滅です! 【読書 #03】森見登美彦 『四畳半タイムマシンブルース』

学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい!絶賛キャンペーン中。
第3弾は、森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』。

なぜこの本か…というと、次男のために『推し、燃ゆ』をメルカリで買おうと思ったら、出品者さんが2冊買ったら1冊50円引きという「まとめ割」をされていたからだ。

せっかくだからもう1冊買おう…と、出品者さんの出品書籍の中から、この本を見つけた。
森見作品といえば『夜

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ただそこに居て歌う 【LIVE】Eve「Culture」@横浜BUNTAI

ただそこに居て歌う 【LIVE】Eve「Culture」@横浜BUNTAI

2024年のライブ初めは、1月5、6日のVaundy@日本ガイシ2daysだった。

今年3本目のライブは、2024年6月9日のEve「Culture」@横浜BUNTAIとなった。チケットぴあでの抽選は外れてしまったので、一般発売での先着販売でチケットを入手。

Eveって、何者?

Eveは、2009年ごろからニコニコやYouTubeで活動している、アーティストだ。

Eveは顔出しせずに活動し

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きっと私も貧困だった 【ドラマ #01】WOWOW「東京貧困女子。」

きっと私も貧困だった 【ドラマ #01】WOWOW「東京貧困女子。」

WOWOWオリジナルドラマ。2023年放送。
原作、中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』。主演、趣里。

2024年5月24日の深夜に、全6回一挙再放送があり、録画をして、翌日の深夜に一気見した。

貧困の切実さは、貧困を経験したものでなければ理解できないように思う。
ただ、貧困問題は個人の問題ではなく、社会の問題であることは、私も理解している。

私自身は貧困家庭ではなかったが、長

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わからない、でも天才 【美術鑑賞#02】デ・キリコ展@東京都美術館

わからない、でも天才 【美術鑑賞#02】デ・キリコ展@東京都美術館

イタリア人の画家で彫刻家の、ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。

私は、デ・キリコという名前は知っているけれど、彼の作品はよく知らない。
思い浮かべることができるのは、MOMA(ニューヨーク近代美術館)所蔵の《愛の歌》という作品くらいだろうか。

今回の展覧会では、MOMA(ニューヨーク近代美術館)からは《予言者》が来日、展示されている。
展示作品のほとんどが海外からの借用作品。円安ド

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【詩#02】あるいは青天の石として

【詩#02】あるいは青天の石として

1

 読みかけの本の1ページ。
 過去と未来とそして今とがちょうど交差するところで、私は何かを待っていた。過去の未来は非常に確かなもので、物語はもう始まり、終わっている。後は、私の指が丁寧にその一枚一枚を開いてゆけば、それでいい。それだけのことさえ躊躇う指は、気が付くと、驚くほどに冷たくなっていた。

 思い出そうとしているのは、昨日の晩に読んだ顔も知らない男の人生ではない。もちろん、男は私に多

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推し活はソフトホラー? 【読書#02】宇佐見りん「推し、燃ゆ」(ネタバレなし)

推し活はソフトホラー? 【読書#02】宇佐見りん「推し、燃ゆ」(ネタバレなし)

学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい!
絶賛、キャンペーン中である。
記念すべき1冊目は、宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」だった。

とんとん拍子で1冊、2冊ときたが、問題は3冊目。1、2冊目がうまくいっただけに、3冊目が要。ここで転けると、本好きになれない可能性がある…と、私は慎重になった。

手堅くいこうと本屋大賞2位だった、津村記久子「水車小屋のネネ」を読み始めた私だっ

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作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)。本展は、日本の美術館で開催される初めての個展とのこと。

ブランクーシの作品を初めて見たのは、1999年に名古屋美術館と笠間日動美術館で開催された展覧会「エコール・ド・パリとその時代」。
この展覧会ではメナード美術館所蔵の絵画作品1点と、名古屋市美術館、豊田市美術館、横浜美術館それぞれが所蔵する彫刻作品3点の、合わせて4

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成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

X(旧Twitter)で本屋大賞に関するいくつかの投稿を見て、これはすぐに本を買わねばなるまい、という使命感にも似た感情が湧き出た。
そして数日後、駅の近くの一番大きな書店に『成瀬は天下を取りにいく』を買いに行った。

マンガは紙(冊子)で読んでいるが、ここ数年、小説は電子ブックで読んでいるため、書店で小説を買うのは、コロナ禍以降はじめてだった。

本を買う前から、私はこの本を次男(中3)にすすめ

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【短編#01】おとぎ話の森

【短編#01】おとぎ話の森

 夏の終わりに美術館を訪れた。
 入口から長い廊下を抜けていくと、美術館にしてはめずらしく大きな窓が三枚開かれた、扇形の展示室に出た。窓一面に映る木々は瑞々しく、さながら、おとぎ話に出てくる森のようだ。廊下を歩いているあいだに魔法にかかって、おとぎの世界に迷い込んだような気分だ。

 ひんやりとした展示室には、流木か、あるいは廃材で作られたと思われる、ふたつの作品が床に配されていた。おそらく人間の

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【詩#01】思い出を思い出すための詩 2022.05.15

【詩#01】思い出を思い出すための詩 2022.05.15

雨降りな日々が続いて
春が間もなく終わるころ
わたしは となりの席の人から
若い整骨師の肖像という名の詩集を借りた

ページを開くと古びた本の匂いがして
わたしの心は躍った そして
ページをめくるとやさしく見えて難解な詩は
わたしに読まれることを拒んだ

印刷された言葉は美しく
よくわからないけれど
とても静かな時間が流れた

詩は親しき友で
詩を書くことは初恋だった
自分で綴る言葉はわたしを癒や

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